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私は、独り、流される

あめはやまない

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このところ、肌に張り付くような湿気と雨が続いている。そのせいなのか、最近夢見が悪い。

今日もまた私はあの夢をみて飛び起きる。

全力疾走した後のように動悸が激しい。自分の意思に関係なく流れる涙が鬱陶しくて、乱暴に目を擦る。

落ち着きたくて、ベッドサイドテーブルに置いてある水差しに手を伸ばすも、震えて取り落としてしまった。

夜の静寂にガラスの割れた音が響く。失敗してしまった。溜め息をつくのと同時にノックの音が聞こえ、こうなっては仕方ないと返事をする。

「マリーゴールド様、どうされましたか。」

「水を飲もうとして水差しを落としてしまいました。怪我はありません。大丈夫です。」

「…失礼します。」

ドアが開かれ、侍女さんが部屋に入ってくる。本当に、何時寝ているのだろうか。いつもと変わらない様子の侍女さんを見上げる。なんだか頭が回らない。身体を動かすのも億劫だ。中途半端に起きてしまったからだろうか。

とりあえず割れたガラスをどうにかしないととベッドからおりようとするも、やんわりと止められる。

「?あの、すぐ片付けますので。」

「いいえ、マリーゴールド様はそのままでお待ちくださいませ。ガラスの破片が散らばっており、危ないですから。」

「…すみません。」

テキパキと掃除する侍女さんを見ていると申し訳なさが込み上げてきて、謝罪が口から飛び出す。それを聞いて、侍女さんが首を振る。

「私はマリーゴールド様の護衛ですから。」

「これは、護衛の仕事ではないような…。」

「マリーゴールド様、私は侍女でもあるのですよ。身の回りのお世話はお任せくださいませ。」

困った様子の侍女さんに、また謝罪が零れる。あぁ、どうしてだろう。感情のコントロールが上手くいかない。思考が霞がかったようにぼやける。

「…マリーゴールド様。」

「はい。」

「私の立場から言わせていただきますと、もっと寄りかかっていただけると嬉しいのですが。」

「寄りかかる?」

「私はマリーゴールド様をお守りするためにおります。味方、とまではいかなくても、信頼してほしいのです。この1年を省みると難しいとは思います。けれど、このままではマリーゴールド様の身が持ちません。」

いつもよりも優しいその声が、私を心配しているように感じて、苦しい。嬉しいと思ってしまう自分が心底嫌いだ。

「…だって、」

「マリーゴールド様?」

「ヴィーがいないのに。」

驚いた表情の侍女さんが、手を伸ばしてくるのを最後に、私の意識は遠のいていった。
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