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私は、独り、流される

なかま

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ヴィーが集めた仲間は全部で6人。ゲームの中だと、1周目で集められる最大人数は10人だって言っていた。半数以上集めると、ハッピーエンドへの道が開かれるらしい。今にして思えば、この、“1周目”という言葉の意味をきちんと考えるべきだったのではないだろうか。

一緒に魔物退治をして仲良くなった拳闘家のレーシア。
不安に過ごす人々の為に立ち上がったシスターのエミリー。
手柄を立てたいとついてきた騎士見習いのファル。
ヴィーに興味が湧いたと協力を申し出たエルフのジャヴィ。
魔王の財宝を盗む為に仲間になった盗賊のトール。
ヴィーを殺す為に来たのにいつの間にかヴィーを主としていた暗殺者のNo.6。

それぞれみんな個性的で、でも優しくて。魔王を倒した後、ジャヴィさんが言うようにヴィーは魔法で彼等を移転させた。どうしてそんな事したのか分からなかったけど、全て終わった今なら分かる。

ヴィーは、彼等に見せたくなかったのだ。世界の為に犠牲になる瞬間を。怯え震える姿を。彼等の前ではいつも強くて凛としたヴィーだったから。

どんなに理不尽でも、どれほど傷付けられようとも、それでもヴィーはこの世界が大好きだと、そう言って笑う。その顔はいつもよりずっと子供みたいで、でもキラキラしていて。この世界より平和な世界を知っていてなお、ヴィーはこの世界を愛していた。

姉の様に私を慈しんでくれたヴィー。

母の様に私の成長を喜んでくれていたヴィー。

いつだって私の前を歩いて、導いてくれたヴィーが旅をした事で初めて私に見せた弱さ。何度も泣いて、何度も吐いて、何度も帰りたいと魘された。けれど、旅の仲間には絶対に見せなかった姿。

最後に私を残してくれたのはヴィーの甘えだと、思っていいのだろうか。

ヴィーの最後の声は震えていた。怖かっただろう。闇に囚われると知っていたのだから。恐ろしかっただろう。その後どうなるかを知らなかったのだから。

この世界の魔王は、約300年に1度世に現れるという。

ヴィーは知っていた。勇者が次の魔王に選ばれる事を。ヴィーは知らなかった。囚われた勇者がまた世に現れるまでの間どうなるのかを。

魔王を倒せば300年平和が続くと知っていたから、ヴィーは勇者になった。勇者が魔王になるまでの過程を知らなかったからヴィーは勇者でいられた。

優しいヴィヴィ。私達の為に、犠牲になった。

賢いヴィオレ。自分1人の犠牲で世界が救えるなんて安いものだと思ったのだろう。

馬鹿なヴィオ。私や皆がそれで喜ぶと、本気で思っていたの?

勇者ヴィオレット。折れない心を持っていたからこそ、最後までやり遂げた。

ヴィー。

ねぇ、ヴィー。

私にとって、村のみんなにとって、アシェルにとって、ヴィーはただの村の一員で、愛しい女の子で、幸せになってほしい人だったんだよ。

沢山のヴィオレットに彩られた大きくて豪華なお墓を前に、私は泣く事も出来ずぼんやりとそんなことを思った。
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