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恋人たるもの心を寄せ合うべし

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「そもそも、僕の卒業までは待つつもりだったんだよ?なのにティアったら入学するなり知らない人のこと気にし出すんだもん。」
「あの、」
「僕はティアとずっと一緒に居たいなって思ってたんだけど、でもそれがどういう感情から去来するものかっていうのは深く考えてなかったから、良い機会だったと言えば良い機会だったのかもしれないけど。」
「いえ、その、」
「まぁどっちにしろ逃がすつもりは無かったから、結果は変わらないか。僕の隣はティアしか考えられないし。」
「ファウスト様、」
「お義父様がティアの意思が大事だって言うから、ティアからの言葉を待ってたんだけど、ティアは自分から言う子じゃないもんね。」
「ファウスト様!!」
「なぁにティア。」

上機嫌のファウスト様の胸元を叩けば、漸く腕を緩めてこちらを見てくださいました。
別に嬉しそうなファウスト様を見られるのは構わないんですけれども、その、膝の上は、ちょっと恥ずかしいといいますか…!重いでしょうし…!落ち着きませんわ!!!

「降ろしてくださいまし!!!」
「え、どうして?」
「っどうしても何も、わたくし子供ではございませんの!」
「うん、そうだね。もう17だもんね。」
「そうですのよ。今回はわたくし何も悪いことはしておりませんし。ですから、」
「んー、ヤダ。」
「ファウスト様!」
「だってやっとティアを捕まえられたんだよ?離したくない。」
「そんな顔されましても…ではこうしましょう!わたくし、隣に座りますわ。」
「うんうん。それで?」
「ええと、ケ、ケーキを食べさせて差し上げます!」
「それさっきもやったし、結構いつものことだよね。ヒューゴにもやることだから却下。」

わたくしの決死の提案はあえなく却下されました…。
確かに、その通りではございますが、その、先程と今ではやはり違うと思うのです…!

「それよりこうして一段落ついたんだし。未来の話をしよう。ティアがこれ以上何もしなくてもあの二人は問題ないよ。ティアが望むならあの子を養子に迎えてもいい。」
「…気付いていらっしゃったのですね。」
「最初は分からなかったけど、ティアを見てたら何となくね。色々手伝ってあげたでしょ?これで心配事は無くなった?」
「えぇ、まぁ。」
「じゃあもう悩むのはおしまい。」
「それとこれとは話が別ですわ。わたくしはわたくしの存在意義について一度鑑みなければ。」
「それなら話は簡単。僕をずっと愛して。」
「ファウスト様?」
「ティアの存在意義。僕や家族に愛されて、僕と家族を愛すこと。」
「愛されて、愛す、こと。」

それは普通の事なのではないかとただオウム返しをしたわたくしに、ファウスト様は目を細められました。

「ティアは難しく考えすぎ。いいんだよ、別に。誰かのためにとか、何をしなくちゃいけないとか。」
「ですが、」
「ティアの人生はティアのものだよ。産まれた時からずっと。どうせ全てが決められているのだというのなら、好き勝手に生きたって変わらない。」

全てを決められているのなら。
いいのでしょうか?
本当に?
わたくしは、わたくしの好きなように…。

「だから、ティアはこれから僕のことだけ考えてね。僕だけを見て、僕のことで頭をいっぱいにして。」
「いえわたくし、卒業まであと一年ありますから、それは無理ですわ。」
「…ティアってそういうところあるよね。」
「?」
「ティアが可愛いって話。好きだよ、ティア。君の憂いが無くなったら、僕のお嫁さんになってね。」
「はい。わたくしは、ファウスト様のものですわ。小さい頃から、ずっと。」
「うん。言質は取ったからね。」
「前言撤回は、致しません。」
「ふふ、うん。しないで。ティア。僕のティア。」

そう言ったファウスト様の表情が、声が、眼差しがあの頃よりも優しくて。
あぁ、やっぱりわたくしはこの人が好きなのだと、心からそう思いました。
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