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人間たるもの誠意を見せるべし…
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まぁお二人が幸せに仲睦まじく過ごすお姿を見るまでわたくし閉じ込められたりしませんわよ!!!
おほほ、わたくしったらちょっと乙女チックになっておりましたわ。お恥ずかしい。忘れてくださいまし。
権力者に疑われるかもしれないという恐怖は、心を弱くするものですわね。自分で決めた道ですのに、不甲斐ないですわ…。
さて、反省はここまでにして、今回の事の顛末ですけれど、まず呼び出し事件の後にある物語の山場がこのメリル誘拐事件なんですの。前にも申しました通り漫画で描かれた内容は必ず起こります。どれだけ対策を練って防ごうとしたところで結果は同じ。物語通りに帰結するのです。だからわたくしはわざとその場面を作らせ、安全な状況下にて実行してもらった、という訳でございます。
本来であれば誘拐犯もわたくしが手配したかったんですけれど、こんな危ない役をお願い出来る役者の知り合いはおりませんし、かといって誘拐犯に伝もございませんでしたのでどうすることも出来ませんでしたの。ならばと場をコントロール出来るよう伏線を張り、なるべく迅速にメリルを救出する方向で進めさせていただきました。誘拐犯からわたくしの名前が出たことは、原作通りにとそう仕向けたところはございますが、そこはまぁあってもなくても、といったところでございました。ちなみにファウスト様がつきとめられたのですが、真犯人はあの御三方の中の一人、伯爵家の子だったようです。そういえば漫画でも手配を任せていた気がします。
あとは、そうですわね、匿名の通報はわたくしが行いましたわ。明らかに令嬢であると分かる口調で通報することでイタズラではないこと、緊急性が高いことが伝わればと思いまして。もちろん、傍には護衛を付けておりましたが、あれほど叱られることになるとは夢にも思っておりませんでしたので、本当にわたくしの認識が甘かったようです。きちんと改めなくてはいけないですわね。
ところで皆様、何故わたくしがつらつらとこのように説明するのかと疑問に思った方もいらっしゃるのではないでしょうか?
その疑問は尤もでございます。答えは単純明快。
「現実逃避ですわ…。」
「ティアナ様?」
溜息をつけば、疑問符が届けられました。心配そうなその声の主は豪華なテーブルを挟んで目の前にいる、メリル。
外傷はほとんど無く、手首の包帯の白だけが、彼女を被害者であると告げておりました。
「なんでもございません。」
「そうですか?あ、このクッキー美味しい!ティアナ様もどうぞ。」
「…ありがとう。」
勧められるままに手に取ろうとすれば後ろから伸びてくる手が無言でクッキーを掴みわたくしの口へと運びます。わたくしはもう無の境地で口を開きました。咀嚼すると確かに美味しゅうございます。
「抵抗は諦めたのか。」
お部屋に入ってこられた殿下の第一声に、わたくしは歯を食いしばることしか出来ませんでした。
だって仕方ありませんでしょう!今回はわたくしが悪いんですもの!
「うん。誠意を示してくれるんだって。」
「なるほど!ティアナ様が大人しく抱っこされてるのはそういうことだったんですね。」
「…随分心配をおかけしてしまったみたいですので。」
はい。わたくしの現在地は殿下のセーフティハウスの応接室のファウスト様の片膝の上にございます。
あぁ、わたくしはメリルのお見舞いに行きたかっただけですのに、どうしてこんなことに…。
おほほ、わたくしったらちょっと乙女チックになっておりましたわ。お恥ずかしい。忘れてくださいまし。
権力者に疑われるかもしれないという恐怖は、心を弱くするものですわね。自分で決めた道ですのに、不甲斐ないですわ…。
さて、反省はここまでにして、今回の事の顛末ですけれど、まず呼び出し事件の後にある物語の山場がこのメリル誘拐事件なんですの。前にも申しました通り漫画で描かれた内容は必ず起こります。どれだけ対策を練って防ごうとしたところで結果は同じ。物語通りに帰結するのです。だからわたくしはわざとその場面を作らせ、安全な状況下にて実行してもらった、という訳でございます。
本来であれば誘拐犯もわたくしが手配したかったんですけれど、こんな危ない役をお願い出来る役者の知り合いはおりませんし、かといって誘拐犯に伝もございませんでしたのでどうすることも出来ませんでしたの。ならばと場をコントロール出来るよう伏線を張り、なるべく迅速にメリルを救出する方向で進めさせていただきました。誘拐犯からわたくしの名前が出たことは、原作通りにとそう仕向けたところはございますが、そこはまぁあってもなくても、といったところでございました。ちなみにファウスト様がつきとめられたのですが、真犯人はあの御三方の中の一人、伯爵家の子だったようです。そういえば漫画でも手配を任せていた気がします。
あとは、そうですわね、匿名の通報はわたくしが行いましたわ。明らかに令嬢であると分かる口調で通報することでイタズラではないこと、緊急性が高いことが伝わればと思いまして。もちろん、傍には護衛を付けておりましたが、あれほど叱られることになるとは夢にも思っておりませんでしたので、本当にわたくしの認識が甘かったようです。きちんと改めなくてはいけないですわね。
ところで皆様、何故わたくしがつらつらとこのように説明するのかと疑問に思った方もいらっしゃるのではないでしょうか?
その疑問は尤もでございます。答えは単純明快。
「現実逃避ですわ…。」
「ティアナ様?」
溜息をつけば、疑問符が届けられました。心配そうなその声の主は豪華なテーブルを挟んで目の前にいる、メリル。
外傷はほとんど無く、手首の包帯の白だけが、彼女を被害者であると告げておりました。
「なんでもございません。」
「そうですか?あ、このクッキー美味しい!ティアナ様もどうぞ。」
「…ありがとう。」
勧められるままに手に取ろうとすれば後ろから伸びてくる手が無言でクッキーを掴みわたくしの口へと運びます。わたくしはもう無の境地で口を開きました。咀嚼すると確かに美味しゅうございます。
「抵抗は諦めたのか。」
お部屋に入ってこられた殿下の第一声に、わたくしは歯を食いしばることしか出来ませんでした。
だって仕方ありませんでしょう!今回はわたくしが悪いんですもの!
「うん。誠意を示してくれるんだって。」
「なるほど!ティアナ様が大人しく抱っこされてるのはそういうことだったんですね。」
「…随分心配をおかけしてしまったみたいですので。」
はい。わたくしの現在地は殿下のセーフティハウスの応接室のファウスト様の片膝の上にございます。
あぁ、わたくしはメリルのお見舞いに行きたかっただけですのに、どうしてこんなことに…。
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