死が二人を分かたない世界

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魔界編:第13章

障る

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 気付けば周りの木々はオレンジ色に照らされている様相で、本当に夕方になったみたいだった。

「すごい、綺麗……これも夕方っぽく見せてるだけなの?」
「あぁ、見せてるだけだな」
 縁側に座ったユキの膝を枕にして、横になりながらその景色を眺めていた。
「ここに居ると、魔界に居るってこと忘れちゃいそう」
 頬にあたるユキの素肌の太ももが気持ち良くて、思わず頬擦りした。すべすべで気持ちいい……!

 ユキにたくさん愛されて、僕がバテてしまったので今は少し休憩中だ。
 僕もユキも、軽く浴衣のようなものを羽織っている。素面のまま裸の状態でいるのは恥ずかしくて、僕からユキにお願いした。
 それでもユキは肩から羽織っているだけだから、ほぼ着てないに等しくて……時々目のやり場に困ったりする。

「実は、この休みの間にユキと現世に行きたいなって、そんなことも考えたんだ」
「現世か……」
「でもね、分かったんだ……ユキは現世があまり好きじゃないよね」
 ユキの膝の上で上を向くと、綺麗な顔が少し困ったように微笑んでいた。
「なんで、そう思った?」
「ユキを見てたらなんとなく、現世に居ちゃいけないって感じてるのかなって」

 自分が生まれた世界では異質な能力、それ故に異質だった周囲の環境。二度と戻りたくないと思ってもおかしくない……。
「少し前までは好きだったぞ、真里がいたからな」
 優しく頭を撫でられて、思わず目を瞑った。

 そういえば、生きてる時の僕に会いに来てくれてたんだよね……。
 ユキはどんな顔で、どんな感情で僕のことを見ていたんだろう。近くに居たのに、気付けなかった事が本当に悔しい。

 体を起こしてユキの後ろに回り込んで、その背中を抱きしめた。
 夢の中で会っていた時はそう変わらなかった背中の大きさは、当たり前だけど大人の広さになっていて……。
 いつもは頼れてカッコいいって思うけど、今日みたいに甘やかしたい時は、自分の小ささを痛感させられる。
 それでも立っている時より顔が近い。ユキはスタイルがいいから足が長いし、座っている時の方が身長差を感じない。

「どうせなら前から抱き合わないか?」
「まだダメ、前からだとユキにいたずらされちゃうから」
 ユキはなにかとすぐ膝の上に乗せたがるから、前から抱き合ったらそれだけじゃ済まなくなってしまう。

 まだまだ今日は長いから、あまり早くバテるわけにはいかない。夜もユキと一緒に過ごすために、適度に休憩しないと……でもユキはもっとしたそうだから。
「俺は抱きしめる方が好きなんだが」
「たまには甘えてよ」
 ユキのきれいなうなじにキスすると、小さく笑う声が聞こえた。
 黒髪から見える白い肌は魅惑的だ。ここに赤い印を残したいと思ってしまう……誘惑される。
 うなじにキスして吸い付くと、ユキの声が微かに漏れた。口を離すと僕の独占欲の印が残っていて、嬉しくて思わずそこにもう一度キスした。

「誘ってるよな?」
 ユキが振り返って僕を前に抱き寄せようとしてくるけど、ユキの背中にしがみついてそれを阻止した。
「中はまだ待って欲しいから、僕がする」
「まだお預けかぁ」
 ユキが残念そうに笑ったところで、前に回していた手でユキの感度の高い首筋の傷跡に触れた。
 ピクっと反応したユキは、僕が触れやすいように首を傾けてくれる。

 他の肌と感触の違うその跡に、羽毛で撫でるような感覚で触れると、少しユキの体が震えるのがわかった。
 膝立ちして首元にキスしてその場所を舐めると、明らかに熱くて甘い吐息が漏れる。
 着物の下のそこが反応してるのもわかっていたから、右手でその場所に布の上から触れた。

「直で触って」
 布の上から触っていた手を中に誘導されて、熱く硬くなっているそこを手で包んだ。
 上下に愛撫すれば、ユキの呼吸が次第に早くなっていくのを感じて愛しい。
 下を愛しながら、首の傷跡を舐めたらユキから艶かしい声が漏れる。

「……はっ、ぁ……真里、まだ駄目か?」
「もう少し待って」
 ユキがしたそうにしてるのは分かってるし、もちろん応えたいんだけど……。今は一方的にユキを触っている状況で、僕はそれを楽しみたいと思ってしまっている。
 ユキの気持ちいいところを同時に愛撫しながら、今度は後ろからユキの小さな乳首に触れると、フフッと今度は笑い声が漏れる。

「そこは笑ってしまう」
「そのうち気持ち良くなるよ、本当は舐めたいんだけど」
「じゃあ、前に来ればいいだろ」
 その誘いに乗ると、間違いなく捕まって簡単に組み敷かれてしまうのは目に見えてる。
「俺は真里の顔が見たい」
 こっちを振り向いたユキは少し照れるような顔をしていて、可愛くて思わずその唇にキスした。

「ユキ、ちょっと恥ずかしい?」
「まぁ……」
 気のないような返事をしながら、ユキが僕に体重を預けてきて、好きにしていいって許可を貰った気がした。
「でも、真里に触られるのは好きだ」
 そう言ったユキは前を向いてしまったけど、うなじが真っ赤に染まっていて……可愛くてたまらない!

 そのうなじにキスして、首筋を舐めれば、気持ちよさそうな反応が返ってくる。
 僕が握る手の上に手を重ねてきて、強く握って動きが激しくなる。
 えっ、そんなに強くして大丈夫!? なんてびっくりしてしまう……自分だったら間違いなく強すぎる刺激だ。

「真里、抱きたい」
 荒い息づかいでおねだりされて、グッときてしまう……! でも、今この状況を手放すのは勿体無い!
 ユキに一方的に愛撫できる状況で、ユキがそれを許してくれているのは本当に珍しい。

 だから、この機会に少しでも変化が欲しかった。
 いつでもこうやって僕がユキを可愛がる状況を、ユキが受け入れてくれるようにしたくて……。

「ユキ……お願い、触らせて」
 ユキのを握っていない左手で、その白い内腿を付け根に向かって撫でた。
「――はっ!?」
 ビクンと過剰に反応するのは、気持ちいいからじゃなくて怖いからだって分かってる。
「中は触らないから、触れるだけ……前みたいに『確認する』なんて名目なしに、ユキに触りたい」

「……っ、ぁ……」
 ユキは悩んでいるのか、肯定も拒絶も取れずに言葉に詰まる。
「怖い……よね? ユキが怖がってるのが他の男のせいだと思うと、すごく悔しいし……嫉妬する」
「嫉妬か……終わったら抱かせてくれるか?」
「うん、手加減なしで抱いてほしい」
 ユキの首元に甘えるようにしたら、喉が鳴ったのがわかった。今、何をしようか考えたのかな……。

「触るだけなら……いい」
 今度はユキが甘えるように、僕の肩に頭を乗せてきて、でも恥ずかしいのか目を逸らして言うから……! 可愛くて可愛くて、その頬にキスした。
「ユキ可愛い、大好き」
「ん……」
 照れたように素っ気ない返事をするのも、いつもとは違う反応で可愛さを増幅させている!

「大好き、ユキ……好きだよ」
 握っている右手の動きを再開させつつ、左手で手触りの良い内腿を何度も撫でた。
 ユキもよく僕の太ももを撫でるけど、好きな人の太ももってずっと撫でていられる。撫でられると気持ちいいのも知ってるし、期待しちゃうのも知ってる。ましてやその指が付け根にきた時には……。

 グッと付け根に指を食い込ませると、ユキの体がビクンと跳ねた。
「怖い? 触るだけだよ」
「うっ……真里」
 少し声が震えていて、でもその声には恐怖だけじゃなくて甘えるような声も孕んでて……心臓がビックリするくらいドキドキした。
「ここ、離さないでくれ」
 そう言いながら僕の右手から離れたユキの手は、僕を探すみたいに後ろに回ってきて、その手に頬を当てた。
 するとユキは、安心するみたいにはぁ……と息を吐いて、僕の顔を撫でていく。

「真里……」
「ユキ、愛してる……可愛い、もっと甘えて」
 ユキの手のひらにキスをして、できる限りの優しい声で愛を伝えて、安心させてあげたかった。
 触れ合うことに怖いことなんてない、僕はユキに怖いことなんてしない、身を任せてほしい……そんな気持ちを込めて。

「俺も……真里、ぁ――ッ!」
 付け根に置いていた指を移動させた、ゆっくり濡らしながら……呼吸は出来るだけ整えて、高揚感に任せたら怖がらせてしまう!
「触るね」
「うっ……」
 指先が触れた……ユキのキュッと固く閉ざしたそこに……!
「ユキ、触ってるのは僕だよ……分かる? 怖くない?」
「……っくない、けど……恥ずかし……い」
 ユキは恥ずかしさを誤魔化すように首を前に落として、うなじがまたあらわになった。
 そこにキスして、ずっと好きだよ、愛してるって言いながら、ユキのそこに何度も指を往復させた。

 初めは中心に触れるたびにビクンッと跳ねていたけど、しばらくすると落ち着いてきて、次第に呼吸が短くなっていく。
 そんなユキの様子に、欲が出た。触るだけなんて約束しなければよかったと思った……前よりもっと奥まで、ユキに触れたい……!
 ユキの首や頬にキスして、その気にならないかって期待した。
「まだ恥ずかしい?」
「恥ずかしいだろ、こんなの……!」

 自分はいつも僕にしてるのにって、思わず口元がニヤける。
「もっと触りたい」
「――ッ!!」
 ユキは自分から望んでいないから、僕が触りやすいような体勢をしてくれてはいない。
 地面に出来るだけ近くして、奥まで触られないようにしようとしている節さえあった。

「ユキの奥……ダメ?」
 もっと恥ずかしがるかもしれない……そう分かってはいたけど、右手をユキの膝の裏に差し込んで、グッと引き寄せた。
 こんな格好、絶対恥ずかしいよね……でも、これを受け入れてくれたら……! そんな自分勝手な欲望で、ユキのそこに触れた。
「あっ!? ……っあ」
 その声を聞いた瞬間、僕の血の気は引いた。

 恐怖。
 強い、拒絶と恐怖の感情が流れ込んでくるみたいだった。

 顔を見れば真っ青で、震える体からはさっきまでの熱は消えていた。
「い……やだ!」
「ごめん! ユキごめん!! もうしない!」
 慌てて両腕で抱きしめて、必死で謝った。
 許してくれないんじゃないかと思うほど、強いユキからの拒絶を感じ取ってしまった……!

 ユキの体の震えは治らなくて、謝るくらいじゃ足りないと思った。
 多分ユキのトラウマに触れてしまった……どうしよう、もう許してもらえないかもしれない。
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