雲は遠くて

おとぐろ・いっぺい

文字の大きさ
上 下
15 / 57

154章 フランシスコ教皇の核廃絶のメッセージ

しおりを挟む
♪ お知らせ ♪
ぼくの、YouTubeでの、カバー曲の、ギターの弾き語りですが、
順調でして、25曲ほどになりました。   いっぺい(乙黒一平)
◇ My YouTube
https://www.youtube.com/channel/UCOyJXTmB1z6CdzuawVE9oOg
ーーー

154章 フランシスコ教皇の核廃絶のメッセージ

 11月25日、午後六時過ぎ。

 川口信也は、先日、書き上げた詞に、メロディをつけ終わったばかりだった。
 この歌作りは、期日のある仕事であるので、いまは、ほっとして、のんびりと、
ひとり、部屋で、カフェオレを飲みながら、信也は、テレビを眺めている。

 NHKの生放送番組の『これでわかった!世界のいま』をやっている。

 ローマ・カトリック教会の、フランシスコ教皇(きょうこう)が、
23日から来日していて、被爆地の長崎と広島で、
核廃絶のメッセージを発信したりしている。

「へーえ。やっぱり、こんな世の中でも、世の中を良くしていく、
力となるものは、やっぱり、個人だし、人間なんだよなあ。
フランシスコさんのような、私心のない、心のきれいな人が、キリスト教の指導者ならば、
キリスト教を批判していた、あの、ニーチェさんも、きっと、驚嘆し、感激したんだろうな。
こんな改革を実行する教皇とならば、歓喜して、仲良くなったんじゃないだろうか。
なにしろ、ニーチェは、
『わたしが神を信じるなら、踊ることを知っている神だけを信じるだろう。』
とか、って言っていて、
宗教は、大嫌いってわけじゃないんだろうけど、
まず、それよりも、個人の尊厳とか、本当の人間らしい生き方を、考える人で、
自由や美や芸術を愛する人だからなあ、ニーチェは・・・」

 フリードリヒ・ニーチェは、『アンチクリスト』(『反キリスト者』)という、
腐敗が目立つ、キリスト教を批判する書を、1888年の晩年に書いている。
作曲することもあった、芸術好きの、ニーチェの本は、よく読むほうの信也だ。
特に、アンソロジーのような『座右のニーチェ』(斎藤孝・著)は読み返すほうだ。
その中の、次の言葉などを、信也は好きだ。

『一度も舞踏しなかった日は、失われた日と思うがよい。
そして、哄笑(こうしょう)を引き起こさなかったような日は真理は、
すべて贋(にせ)ものと呼ばれるがいい。』

『芸術は生を可能にする。生へ誘惑する偉大な女であり、
生への刺激剤である。』

『歌う鳥たちのもとへ行くがよい、
あなたがかれらから、歌うことを学びおぼえるために。』

『君たちは君たちの感覚でつかんだものを究極まで考え抜くべきだ。
君たちが世界と名づけたもの、
それはまず君たちによって創造されねばならぬ。』

『君たちはただ創造するためにのみ学ぶべきだ。』

『行動者だけが学ぶことができるのだ。』

『おまえ、偉大な天体よ。おまえの幸福もなんであろう。
もしおまえがおまえの光を注ぎ与える相手もいなかったならば。』

『まことに、人間は不潔な河流である。
われわれは思いきってまず大河にならねばならぬ。
汚れることなしに不潔な河流を飲みこむことができるために。』

 さて、6年前、フランシスコ教皇は、6年前、教皇に就任して、82才。
教会の歴史は長く、2000年間も続く、その266代。
約13億人の信者の、全世界のカトリック教徒の精神的指導者。

 フランシスコ教皇は、カトリック教会の改革者としても知られる。

 改革の中でも、核兵器の廃絶について、フランシスコ教皇は、
「核兵器を持つこと自体を、断固として許されない!」という、強い姿勢を示した。

 これまでの、カトリック教会は、核兵器については、相手の攻撃を防ぐためには、
核兵器を持つことは、ある程度は、否定していなかった。

 どうして、教皇は、ここまで、核兵器廃絶に、強い思いを持っているのかというと、
一枚の写真に、教皇は、心を動かされた。

 それは、原爆が投下された直後の長崎で撮影された、
死んだ弟を背負っているとされている少年の、一枚の写真。

「この写真を見たとき、胸を垂打たれました。千の言葉よりも、人の心を動かします」

 と語る、教皇。去年の1月に、教皇は、核兵器の悲惨さを知ってもらおうと、
いろんな人に、自(みずか)ら、この写真を配った。

 フランシスコ教皇は、カトリック教会の改革者だ。

 改革のその1つは、腐敗の防止。これまで、カトリック教会の中心地バチカンの教会では、
マフィアとの関係もあるといった指摘もあった。
そこで、外部の企業を使って、怪しいやり取りなどの、
お金の流れをチェックするなどの改革をしている。

 改革の2つ目。カトリック教会では、聖職者による性的虐待が大きな問題となっている。
しかし、聖職者は罰を受けることなく、それを隠そうとする疑いすらあった。
虐待に気づいた場合など、すぐに連絡を求めるなど、厳しい対応を打ち出した。

 3つ目。今月の11月17日。教皇は、この日を、『貧しい人のための日』に定めた。
バチカンで、苦しい生活をしている人たち、1500人を招いて、食事会を行った。
これまで教皇は、雲の上の存在で、そのことが権威に繋(つな)がってきた。
しかし、フランシスコ教皇は、人々に寄り添う存在に、大きく変えようとしている。

 このように、教皇は、教会の姿勢を次々と変えようとしている。
同性愛や人工中絶を認めない立場を維持してきた教会。
しかし、教皇は、個別のこれまでの問題について、
教会のこれまでの姿勢をも、変える改革を、次々と打ち出している。
教皇は、同性愛や人工中絶など、そうした人たちを、
排除するのではなく、
困っている人がいれば、手を差し伸べるべきだという方針を打ち出した。

「協会が扉を閉ざしてしまったら、その使命を果たせません。
懸け橋になるのではなく、障害になってしまうでしょう。」

 教皇は、そんなスピーチをしている。

 一定の条件のもとでは、認めていた死刑についても、
教会の教えそのものを改めてた。どんな条件でも一切認めず、
全世界で廃止されるように取り組むとした。

 これまで禁じてきた、既婚男性の司祭も、  
一部の地域では認めるのではないかと言われている。

 40年以上も、バチカンを取材してきたジャーナリストのマルオ・ポリティさんは、
カトリック教会を現代の価値観に順応させたと指摘する。

「これらは、すべて新しい。これまでになかった改革です。
教皇は、これまで、カトリック教会にあった、性にいての、
こだわりを取り除きました。避妊薬や離婚、結婚せずに同棲する若者たち、
こんな問題に対する説教は無くなりました。
非常に重要な変化です」と語る、マルオ・ポリティさん。

 次々と打ち出す大きな改革に、教会内では、反対勢力の反発も根強いと指摘する一方、
それでも、教皇は改革を進めていくだろうと、マルオ・ポリティさんは言う。

☆参考文献☆ 

1.『座右のニーチェ』 (斎藤孝・著) 光文社新書
2.NHK 『これでわかった!世界のいま』 (2019年11月24日放送)

≪つづく≫ --- 154章 おわり ---
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

【新作】読切超短編集 1分で読める!!!

Grisly
現代文学
⭐︎登録お願いします。 1分で読める!読切超短編小説 新作短編小説は全てこちらに投稿。 ⭐︎登録忘れずに!コメントお待ちしております。

季節の織り糸

春秋花壇
現代文学
季節の織り糸 季節の織り糸 さわさわ、風が草原を撫で ぽつぽつ、雨が地を染める ひらひら、木の葉が舞い落ちて ざわざわ、森が秋を囁く ぱちぱち、焚火が燃える音 とくとく、湯が温かさを誘う さらさら、川が冬の息吹を運び きらきら、星が夜空に瞬く ふわふわ、春の息吹が包み込み ぴちぴち、草の芽が顔を出す ぽかぽか、陽が心を溶かし ゆらゆら、花が夢を揺らす はらはら、夏の夜の蝉の声 ちりちり、砂浜が光を浴び さらさら、波が優しく寄せて とんとん、足音が新たな一歩を刻む 季節の織り糸は、ささやかに、 そして確かに、わたしを包み込む

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

Last Recrudescence

睡眠者
現代文学
1998年、核兵器への対処法が発明された以来、その故に起こった第三次世界大戦は既に5年も渡った。庶民から大富豪まで、素人か玄人であっても誰もが皆苦しめている中、各国が戦争進行に。平和を自分の手で掴めて届けようとする理想家である村山誠志郎は、辿り着くためのチャンスを得たり失ったりその後、ある事件の仮面をつけた「奇跡」に訪れられた。同時に災厄も生まれ、その以来化け物達と怪獣達が人類を強襲し始めた。それに対して、誠志郎を含めて、「英雄」達が生れて人々を守っている。犠牲が急増しているその惨劇の戦いは人間に「災慝(さいとく)」と呼ばれている。

処理中です...