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第3章
備えよ常に。
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出発の朝。
教授とブルームが玄関の前で待っていた。
「お世話になりました。またお礼に伺います」
「フン。別にもう来なくていいし」
相変わらずしょっぱい対応だが
徐に何か手渡してきた。
「はい。どうぞ」
「これは....なんですか?」
その小包には1日分の食料が入っていた。
どれも健康に良さそうなものばかりだ。
「教授が心配だからって自分で用意したんですよ」
「ブルー!余計なことは言わないっ!」
ブルームがクスクス笑いながらバラした。
完全に遊ばれているな、この人。
「ではウェザー...いえ、もうカレンでしたね」
「二人ともお気をつけて.....ん...はい?」
教授がブルームの耳元で何かゴニョゴニョ話す。
「え、はい。私は何度もウェザーだと言いましたが」
「なぁんと!!ウェザーだったのかね!?」
目を見開いてカレンの方を見る教授。
信じられないといったリアクションをとると
彼女の両手を掴んで上下にブンブンと振った。
「まさか!まさかまさかまさかそのまさかだ!」
「君、早速フレンド登録をしたまえ」
なぜか上から口調で登録をせがまれる俺。
どうやら女神級精霊の “ウェザー” だということに
今更ながら気付いたらしい。
「お願いしたい事は山程あるんだから!」
「いつ来てくれるんだい?次はいつだい?」
先程「来なくていい」と言い放った男とは大違いだ。
薬草学に関連する事になると性格が変わるらしい。
ブルームの言っていた通りだ。
「それと、これは私からカレンに」
彼女に手渡されたのは部屋にあった標本画集だ。
俺がその本をずっと夢中で読んでいたから
名前の参考にしたと勘付いたのだろう。
とても嬉しかった。
それを知らないカレンはただ絵本を読むように
綺麗な花のページを見つけては俺に見せる。
それでいい。なんだか気恥ずかしいし。
この後、俺達は研究所を後にして
麓の村へと向かった。
まだ残っていた臨時のシャトル馬車に揺られて
夕方頃には街へ戻る事が出来るだろう。
ガタンゴトン...ガタンゴトン...
(心配しているだろうな...)
(きっと怒られるんだろうな...)
真っ直ぐに帰りたい気持ちと
気まずくて帰りたくない気持ちで複雑だ。
今回の事態はイレギュラーとはいえ
装備不足等は俺の見通しの甘さなワケだし...
一人憂鬱な気分に浸る中
カレンはこの揺れの中でも爆睡している。
(.......俺も少し寝ていたのだろうか?)
気がついた時にはもう見馴れた街に到着していた。
馬車を降りると、迎えに来た伯父が大きく手を振る。
フィオの姿は見当たらないが...
「あぁ、フィオはまぁ...ちょっとね。うん...」
珍しくテンションが低めだ。
フィオは未熟な俺を行かせた事に責任を感じていて
部屋から一歩も出てこないらしい。
伯父の車に乗せてもらい屋敷へ着くと
門の外で彼女が待っていた。
“ただいま”と言ったらポロポロと涙を流して
俺の胸にもたれかかる。
先に伯父とカレンには屋敷に入ってもらい
俺はフィオと少し話をした。
色々話した。
怖かった事。悔しかった事。悲しかった事。
すごくすごく自分を責めた事
でも危険なんて冒険に出たら日常茶飯事だ。
だから後悔しないように常に備える必要があるんだ。
後ろを向いていたって仕方がない。
もっと強くなると、必ず次の時も帰ると約束した。
“絶対に破らないで”と彼女は言った。
手を繋いで屋敷までの路を歩く
その温もりに、俺は無事に帰れたことを実感した。
教授とブルームが玄関の前で待っていた。
「お世話になりました。またお礼に伺います」
「フン。別にもう来なくていいし」
相変わらずしょっぱい対応だが
徐に何か手渡してきた。
「はい。どうぞ」
「これは....なんですか?」
その小包には1日分の食料が入っていた。
どれも健康に良さそうなものばかりだ。
「教授が心配だからって自分で用意したんですよ」
「ブルー!余計なことは言わないっ!」
ブルームがクスクス笑いながらバラした。
完全に遊ばれているな、この人。
「ではウェザー...いえ、もうカレンでしたね」
「二人ともお気をつけて.....ん...はい?」
教授がブルームの耳元で何かゴニョゴニョ話す。
「え、はい。私は何度もウェザーだと言いましたが」
「なぁんと!!ウェザーだったのかね!?」
目を見開いてカレンの方を見る教授。
信じられないといったリアクションをとると
彼女の両手を掴んで上下にブンブンと振った。
「まさか!まさかまさかまさかそのまさかだ!」
「君、早速フレンド登録をしたまえ」
なぜか上から口調で登録をせがまれる俺。
どうやら女神級精霊の “ウェザー” だということに
今更ながら気付いたらしい。
「お願いしたい事は山程あるんだから!」
「いつ来てくれるんだい?次はいつだい?」
先程「来なくていい」と言い放った男とは大違いだ。
薬草学に関連する事になると性格が変わるらしい。
ブルームの言っていた通りだ。
「それと、これは私からカレンに」
彼女に手渡されたのは部屋にあった標本画集だ。
俺がその本をずっと夢中で読んでいたから
名前の参考にしたと勘付いたのだろう。
とても嬉しかった。
それを知らないカレンはただ絵本を読むように
綺麗な花のページを見つけては俺に見せる。
それでいい。なんだか気恥ずかしいし。
この後、俺達は研究所を後にして
麓の村へと向かった。
まだ残っていた臨時のシャトル馬車に揺られて
夕方頃には街へ戻る事が出来るだろう。
ガタンゴトン...ガタンゴトン...
(心配しているだろうな...)
(きっと怒られるんだろうな...)
真っ直ぐに帰りたい気持ちと
気まずくて帰りたくない気持ちで複雑だ。
今回の事態はイレギュラーとはいえ
装備不足等は俺の見通しの甘さなワケだし...
一人憂鬱な気分に浸る中
カレンはこの揺れの中でも爆睡している。
(.......俺も少し寝ていたのだろうか?)
気がついた時にはもう見馴れた街に到着していた。
馬車を降りると、迎えに来た伯父が大きく手を振る。
フィオの姿は見当たらないが...
「あぁ、フィオはまぁ...ちょっとね。うん...」
珍しくテンションが低めだ。
フィオは未熟な俺を行かせた事に責任を感じていて
部屋から一歩も出てこないらしい。
伯父の車に乗せてもらい屋敷へ着くと
門の外で彼女が待っていた。
“ただいま”と言ったらポロポロと涙を流して
俺の胸にもたれかかる。
先に伯父とカレンには屋敷に入ってもらい
俺はフィオと少し話をした。
色々話した。
怖かった事。悔しかった事。悲しかった事。
すごくすごく自分を責めた事
でも危険なんて冒険に出たら日常茶飯事だ。
だから後悔しないように常に備える必要があるんだ。
後ろを向いていたって仕方がない。
もっと強くなると、必ず次の時も帰ると約束した。
“絶対に破らないで”と彼女は言った。
手を繋いで屋敷までの路を歩く
その温もりに、俺は無事に帰れたことを実感した。
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