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第1章

レアアイテムは重複する。

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休みの朝は決まって例の伯父が来る。

「レオナルド!レア召喚は出来たのかい!?」
勝ち組の嫌味か天然なのか。
その爽やかな笑顔をグッと睨み返す。

「まあね、次頑張ろうよ」
「援助してあげたいんだけど駄目だからねぇ...」

嘘くさく涙ぐむ伯父。
システム上、石や多額のコイン譲渡は厳禁なのだ。
まあ金持ちは給料とかで色々ズルもしているが
俺のような庶民はコツコツやるしかない。

「で、速報聞きたい?」

伯父は情報通で有益な情報から噂話まで
色々と仕入れてくる。
(例の召喚でレアが出やすい時間帯とか)


「冗談半分として聞いておくよ」
「そうかいそうかい...ってちゃんと聞いてよぉ」
「Ha-hhahahahaha!!!!」

何が面白いのか。
この人はいつも笑っている。

「ヒィヒィ...悪い、取り乱したよ。ふふっ」
「それで情報ってなに」

昨日の今日で機嫌が悪い。

「そうそう、今日なんだけど午後に石配布あるって」

配布っ!しかも石だ。
今の俺には願ったり叶ったり。

時々“配布”というものがあり
指定された上級の討伐や記念日などには
アイテムや魔石などが配られる。
中でも“石”は他と比べて配布が少ないのだ。

(これで俺にもまだ女神を引くチャンスが...)

「それで昨日はどうだったのさ~?」

喜んでいるところに水を差す人だ。
でも勝ち組だけあって召喚経験も多い。
わからないアイテムや使い方に関しては
とても役に立つ。

「そうだね、中級に魔石に女神の雫かぁ」
「あとピッピィ!好きだね君ピッピィ」

クスクスと笑われる。
(別に好んで出しているわけじゃねーよ)

「あ、ポッケだ。しかもふたつ」

例の二つ出たレアアイテム“ポッケ”は
見た目も色も地味な腰袋だ。

「それ何なんですか」
「これは凄いよ!亜空間に引き出しを作れるんだ」
「一つ持っておけば一生は困らないんじゃないの?」

「つまりは2つも要らないって事?」
「そう。しかも2連で出るとか...ふふっ」
「しかも結構レアなんだぜ...ふふふっ」

ひどい話だ。
まさかのレア被りで使い道無し。

「一応捨てない方がいいよ?」
「パーティー組んだら使うかもしれないし」

パーティー間のアイテムは貸し借り可能なのだ。
解散時も元の持ち主に返してからなら失われない。
とりあえず取っておく事にした。

「じゃ、また午後に来るからっ」
「来なくていいから」

バタンとドアを閉める。

俺は早く旅に出たい。
前の世界だったら今頃ダンジョンにも降りて
討伐にも参加していただろう。

こんなところで終わるわけにはいかない。
レアなアイテムを集めて
召喚獣や精霊も引き連れて
有名なパーティーに入って独立して
勇者になるんだ。

だから今度こそ負けられない。
負けられないのだ!!!

顔を洗って歯を磨き、髭を剃る。
一杯の水を飲んでから着替えをした。
持っている中で一番の装備と
精神を研ぎ澄ますためのアロマオイル。
出来る限りの完璧な準備をして午後を待った。
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