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第7章
類は友を呼ぶ。
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♢翌朝 / ホテルの一階
引きずっていないと言っていたけれど
イトは臨時休暇を取っていた。
まあ、しばらくは安静が必要だと思う。
ダンジョンへのお誘いに関しては
あの後フィオにメールで事情を説明したところ
意外にも二つ返事で許可をくれた。
“そろそろ実戦も必要かと思っていました”
“頑張ってきてくださいね”
少し認めてもらえた気がして嬉しい。
日々練習を積んだ甲斐があったというものだ。
そして今日は優雅にレストランで朝食を。
冷たいスープとローストホリボリのサンドは
シンプルな塩味だけど朝には丁度いい。
「ごちそうさまでしたぁ~」
「美味しかったね。じゃあ行こうか」
♢一夜明けたロビー
食後の散歩がてら館内を彷徨っていたら
昨日の彼女がロビーで俺達を待っていてくれた。
「あ、おはようございます」
「おはよう。返事はもう決まった?」
ぜひ一緒にと彼女に伝えた。
ダンジョンへ出れば上級の敵が待っているから
強い人達と一緒に行けるのは心強い。
初心者向けイベントとは格が違うのだ。
「自己紹介がまだだったわね。クリスよ」
「このオジさんがウォルター。あとリンツね」
俺達も軽く自己紹介をさせてもらって
さっそくフレンドとパーティー登録を済ませた。
「お父さんなのかと思ったよー」
「おいおい...そんなに年じゃないんだぜ?」
クリスが堪えきれず声を出して笑っている。
カレンはウォルターの見た目年齢からか
彼女の父親だと思っていたらしい。
とりあえず代わりに平謝りする。
「あーおもしろっ。オッサン老けてるもんなっ!」
バーベキューの時にいた次男のニト。
いつの間にかソファーに足を組んで座っていた。
なんでここにいるのだろう...
「何故って明日の打ち合わせに決まってるだろ?」
「彼にコーディネーターをお願いしたの」
ちょっと心配になった。
この男には色々と問題があるからだ。
イトの双子の弟だけあって見た目はイケメン。
獣の血は身体に出ていないようだけれど
オオカミのような獣の瞳をしていて
ニカッと笑うたび鋭い牙が覗く。
でも性格とか考え方がちょっとアレだ。
食事の時に少し家族の話を聞いたのだけれど...
コテージをニトに継がせる予定が断固拒否。
「ダルいわ。ミトがやったらいんじゃね?」
極度のガチャ狂だけど貯金なしニート。
「必要になればバイトするっしょ!」
家族経営なのに手伝うつもりがなくて
気が向いた時だけ飯炊きする程度らしい。
明るくて誰とでも壁を作らずに接するのはいいが
たびたび失言するし態度もデカイ。
“みんな真面目に働き過ぎだなっ!ハハハッ”
“オレは自由人だから働かなくてもいいんだよっ”
真面目に働く兄とは大違い。
俺だってガチャ禁するし多少の預金はあるのに...
行く末が不安な問題児次男だ。
「報酬は前借りでおっけ?駄目かぁ...まあいいし」
「とりあえずオレにまかせとけ!」
本人談ではあるが兄弟の中で一番強いらしく
本気を出せば父様以上だと豪語する。
勇者ナメんな。
「ここからこーいって、ここ渡るのが近道な?」
「崖のように見えるけど...大丈夫かしら」
「そんな高さねーし。冒険者なら平気だろ」
地図を広げて明日のルートを予習したが
なんだかとっても不安になった。
♢ホテルの部屋に戻る
ミーティングも終わったから
そろそろ明日の準備をしなくては.....いるし。
「オレこっちのソファーでいいからな」
なんなんだろうコイツ。
俺も自腹で泊まっていないから強く言えないが
明日も早いからとかなんとか理由をつけて
結局一緒に泊まることになった。
「なあ、お前ガチャ好きだろ?」
「ホテルのWi-Fiって来やすいらしいぞっ(笑顔)」
言葉巧みにガチャを引かせようとするニト。
俺はガチャ禁中だというのになんてヒドイ奴だ。
断ると目の前で自分の召喚陣を広げた。
“Grand Challenge System Assign”
ブウォン...
シャキーン...ジャキーン...グワァン...
「おっしゃ!レア確定だこれ」
“ワイルドダガー”
小さくて投げても使える短剣のダガー。
波打つ鋭利な刃はまさにワイルドで
持ち手には魔石も付いているから魔剣の一種か。
「中々いい流れが来てるけどいいのか?」
「い...いっかいだけ引こうかな」
悪魔の誘いに乗ってしまった気がしたが
それに乗って正解だった。
“クリスタルソード”
透明な厚い魔石を削り出して作られた刃。
重たいけど凄く強そうな魔剣だ。
「ありがとう。ニトのおかげだよ」
「いやいや、お前の引きも良かったんだって」
ガチャで打ち解けた俺達二人のことを
風呂から上がったカレンが不思議そうに見ていた。
フローリア繋がりでイトとも仲良くなれたから
類は友を呼ぶという事だろうか。
引きずっていないと言っていたけれど
イトは臨時休暇を取っていた。
まあ、しばらくは安静が必要だと思う。
ダンジョンへのお誘いに関しては
あの後フィオにメールで事情を説明したところ
意外にも二つ返事で許可をくれた。
“そろそろ実戦も必要かと思っていました”
“頑張ってきてくださいね”
少し認めてもらえた気がして嬉しい。
日々練習を積んだ甲斐があったというものだ。
そして今日は優雅にレストランで朝食を。
冷たいスープとローストホリボリのサンドは
シンプルな塩味だけど朝には丁度いい。
「ごちそうさまでしたぁ~」
「美味しかったね。じゃあ行こうか」
♢一夜明けたロビー
食後の散歩がてら館内を彷徨っていたら
昨日の彼女がロビーで俺達を待っていてくれた。
「あ、おはようございます」
「おはよう。返事はもう決まった?」
ぜひ一緒にと彼女に伝えた。
ダンジョンへ出れば上級の敵が待っているから
強い人達と一緒に行けるのは心強い。
初心者向けイベントとは格が違うのだ。
「自己紹介がまだだったわね。クリスよ」
「このオジさんがウォルター。あとリンツね」
俺達も軽く自己紹介をさせてもらって
さっそくフレンドとパーティー登録を済ませた。
「お父さんなのかと思ったよー」
「おいおい...そんなに年じゃないんだぜ?」
クリスが堪えきれず声を出して笑っている。
カレンはウォルターの見た目年齢からか
彼女の父親だと思っていたらしい。
とりあえず代わりに平謝りする。
「あーおもしろっ。オッサン老けてるもんなっ!」
バーベキューの時にいた次男のニト。
いつの間にかソファーに足を組んで座っていた。
なんでここにいるのだろう...
「何故って明日の打ち合わせに決まってるだろ?」
「彼にコーディネーターをお願いしたの」
ちょっと心配になった。
この男には色々と問題があるからだ。
イトの双子の弟だけあって見た目はイケメン。
獣の血は身体に出ていないようだけれど
オオカミのような獣の瞳をしていて
ニカッと笑うたび鋭い牙が覗く。
でも性格とか考え方がちょっとアレだ。
食事の時に少し家族の話を聞いたのだけれど...
コテージをニトに継がせる予定が断固拒否。
「ダルいわ。ミトがやったらいんじゃね?」
極度のガチャ狂だけど貯金なしニート。
「必要になればバイトするっしょ!」
家族経営なのに手伝うつもりがなくて
気が向いた時だけ飯炊きする程度らしい。
明るくて誰とでも壁を作らずに接するのはいいが
たびたび失言するし態度もデカイ。
“みんな真面目に働き過ぎだなっ!ハハハッ”
“オレは自由人だから働かなくてもいいんだよっ”
真面目に働く兄とは大違い。
俺だってガチャ禁するし多少の預金はあるのに...
行く末が不安な問題児次男だ。
「報酬は前借りでおっけ?駄目かぁ...まあいいし」
「とりあえずオレにまかせとけ!」
本人談ではあるが兄弟の中で一番強いらしく
本気を出せば父様以上だと豪語する。
勇者ナメんな。
「ここからこーいって、ここ渡るのが近道な?」
「崖のように見えるけど...大丈夫かしら」
「そんな高さねーし。冒険者なら平気だろ」
地図を広げて明日のルートを予習したが
なんだかとっても不安になった。
♢ホテルの部屋に戻る
ミーティングも終わったから
そろそろ明日の準備をしなくては.....いるし。
「オレこっちのソファーでいいからな」
なんなんだろうコイツ。
俺も自腹で泊まっていないから強く言えないが
明日も早いからとかなんとか理由をつけて
結局一緒に泊まることになった。
「なあ、お前ガチャ好きだろ?」
「ホテルのWi-Fiって来やすいらしいぞっ(笑顔)」
言葉巧みにガチャを引かせようとするニト。
俺はガチャ禁中だというのになんてヒドイ奴だ。
断ると目の前で自分の召喚陣を広げた。
“Grand Challenge System Assign”
ブウォン...
シャキーン...ジャキーン...グワァン...
「おっしゃ!レア確定だこれ」
“ワイルドダガー”
小さくて投げても使える短剣のダガー。
波打つ鋭利な刃はまさにワイルドで
持ち手には魔石も付いているから魔剣の一種か。
「中々いい流れが来てるけどいいのか?」
「い...いっかいだけ引こうかな」
悪魔の誘いに乗ってしまった気がしたが
それに乗って正解だった。
“クリスタルソード”
透明な厚い魔石を削り出して作られた刃。
重たいけど凄く強そうな魔剣だ。
「ありがとう。ニトのおかげだよ」
「いやいや、お前の引きも良かったんだって」
ガチャで打ち解けた俺達二人のことを
風呂から上がったカレンが不思議そうに見ていた。
フローリア繋がりでイトとも仲良くなれたから
類は友を呼ぶという事だろうか。
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