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ようやく一歩

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「凄いですね。こんなプログラム作っちゃうなんて」
 ある日の昼休み、私は例のプトグラムの一部モジュールを完成した功績を褒められていた。
 作ってくれたのはほとんど、寺内君だったけど。
 そう言えば彼は、どうして未だにアルバイトなんだろう。
 寺内君と数日話しただけで、彼がプログラミングだけでなく電子工作にも通じた才能があることはよくわかった。
 限定された事務作業しかできない私より、一から物が作れてしまう彼の方が能力的には上なのに、どうして正社員にならないのだろう。
「ねえ、寺内君のことで聞きたいんだけど」
「寺内君?」
「彼って、学生?」
「ううん、えっとフリーターってやつかな。確か大学は工学部を出ているとか」
「じゃあ、何で今もアルバイトなの?」
「何でだろう? 彼自身、あまり人とかうちの会社と関わろうとしないから。そういう人って、正社員に向いていないじゃない?」
 違う。本当に向いていないのは何もできないくせに出来ると言って彼に迷惑をかけた自分自身だ。
「そう、なんだ・・・・・・」
 彼を正社員にするべきだなどと、新参者の私に言えるはずがない。
 かといって、今後も彼の力を借りなければプログラムを完成するのは難しい。
 私は、どうすればいい?
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