私、事務ですけど？

自動車業界、これが現状

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　その年の暮れ、会社内で例年の歳末挨拶が始まった今年最後の営業日。
　私だけが部署内に永久の別れを告げた。
　握らされたのは十数万円の退職金と、組合委員長を務める社員の名刺だ。
　もし会社の経営が持ち直して再就職の意思があるならば、掛け合ってくれるとのことだった。
　ありがたい話だったけど、多分ここに戻ることは二度とないと思っていた。

　そうして年明けと同時に私は会社員としての身分を失った。
　総務の人から丁寧に教わった通り、二週間ほどで雇用保険と再就職支援の手続き書類が送られてきた。
　既に私は民間の転職サイトを複数活用して転職活動を始めていた。
　最初の頃は再就職先などすぐに見つかるだろうと高をくくっていたのが本音だ。
　転職サイトには毎週水曜日と金曜日に数百もの求人情報がアップロードされ、まだ二十代の若さのためか、自分から探さなくても人材紹介サービスの会社の方から次々と案件が提示されていた。
　それに前の会社を五年務めたという実績から、自分だけはすぐに辞めるような剽軽者という色眼鏡で見られることなどあるまいと、楽観的になっていた。
　そうしているうちに、最初の一ヶ月が過ぎ去った。
　私の再就職先はまだ、決まっていない。