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オカルトハンター渚編

第17話 配信中

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 ラブホテルを出て、ふたりは観光ホテルへと引き返していた。
 過去を巡る旅も大体が終わり、手がかりらしい手がかりもなくなってしまった。
 配信のコメントを頼りに続けていたこの過去を巡るという行為だが、これが脱出の糸口になっているという実感はある。
 現に、あれだけ混沌としていた村の様子は見違えるようになっていた。
 建物や霊たちもそうだが、今回一番大きく変わったのはその空だ。
 あの赤く染まっていた夜空に、所々雲の切れ間のような赤く無い部分が出来ている。
 ただの曇った夜空が嬉しいなんて事が過去にあっただろうか。
 その日常を取り戻しつつあるという実感が、ふたりを大いに勇気づけた。
 
 「いよいよ帰れそうですよ、私たち!」

 いつにも増してテンションの高いルカが助手席で喜んでいる。
 それに対して渚は落ち込んだ顔をしており、ルカの声も耳に届いていないようだ。
 そんな渚の様子に、ルカは少し考えて窓の方を見る。
 やはり、ラブホテルでの事に原因があるようだ。

 「ルカ……ごめん、私空気にあてられてたみたいで……」

 思えばラブホテルに入った時から、渚はどこかおかしかった。
 ここを初めてにしよう、なんて恥ずかしいセリフを言うようなキャラじゃなければ、エレベーターで突然豹変するような痴女でも無い。
 普段じゃ絶対に考えられない言動の数々は、絶対にあのラブホテルのせいだ。
 俯いたまま弁解をする渚を見て、ルカはふふっと小さく笑った。

 「仕方ないですよ。 私もヤる気満々で、渚さんに可愛がって貰うんだーって浮かれてたんですから」

 ルカはその原因がわかっている。
 あのラブホテルは、恐らくその存在自体が霊に近い。
 男たちや霊たちの性への執着が形になった場所であり、与えられる淫らな気もただの霊とは比べ物にならない物だったんだろう。
 まさか建物自体が霊とは思わず、ルカのセンサーも役には立たなかった。
 もしあの建物の中で行為へ至っていたなら、きっとそのまま生気を吸われ続けヤりながら死んでいたはずだ。
 
 「あの建物自体、霊みたいなものだったんですよ。 気づかなかったですけど、ヤってたら確実に死んでました」
 「そんな危ない場所だったんだあそこ……」

 ルカの言葉に、ハンドルを握る手に力が入った。
 犯される一歩手前までいったあの時の光景が思い出され、自然と全身に力が入っていく。
 強い力に押さえつけられ、抵抗できないまま襲われるあの感覚。
 あの時の恐怖は渚の脳に深く刻まれ、ルカと同じような男へのトラウマを感じていた。
 
 「まぁ無事に出れたので良しとしましょう。 とりあえずホテルの部屋を拠点にして……次はどうします?」

 にっこりと笑顔を浮かべてルカは聞いた。
 
 「どうしようか? もう辿る過去もほとんど無いし、身を清めるっていうのも良くわからないよね」
 
 自分を見つめ直す。
 身を清める。
 思い出を辿る。
 配信で得たヒントはほとんど達成してしまった。
 
 「……もう一度配信してみましょう。 あの部屋だけ電波が入るのも何かありそうですし」
 「そうだね、そうしよっか」

 ルカの提案で今後の方針が決まり、ふたりは観光ホテルへと辿り着いた。
 観光ホテルも前の姿が嘘のように綺麗になっており、壁の傷や染み、虫に悩まされる事もなさそうだ。
 所々に歩き回る霊が居たものの、霊たちはみな虚ろな顔で徘徊するだけの無害なものになっていた。
 
 「ルカ、これってどういう事?」

 その様子に、渚は当然のように疑問を覚えていた。
 初めて見た霊は女を犯し、体を奪い、中学校の霊には散々触られた。
 憑依された死体やあの子の霊に至っては物理的に犯される寸前で、そんな霊が今更冷静になるとは思えない。

 「たぶん、死を受け入れたんだと思います。 もう蘇ろうって意志がないから、みんなおとなしいんだと思います」

 そう言われ、改めて霊の顔を見る。
 その無気力で寂しそうな顔からは、どこか哀れなものを感じてしまった。
 
 「……いこっか」
 「はい」

 特に何をするでもなく、ふたりは霊の横を通って部屋へと入った。
 
 ルカは部屋の四方にお札を張り、強固な結界を作る。
 この強度ならよほどの事がない限り大丈夫らしく、道中で見た霊や憑依された死体程度なら触れただけで消えてしまうらしい。
 ルカのその言葉に渚はここへ来て初めて心の底からの安心を感じ、どさっとその場に崩れ落ちるようにベッドへと倒れた。
 その横に、ルカも倒れ込む。
 ベッドへと顔を埋めたままふたりはしばし停止し、しばらくして渚が体を起こした。

 「配信、しよっか」
 「はい、あのコメントの人くるといいですね」
 
 身だしなみを整えて、渚はアプリを立ち上げる。
 電波状態は以前より良好で、問題なく配信できそうだ。
 カメラをセッティングしてテーブルに置き、配信開始のボタンを押した。

 「渚です。 今日はゲストを呼んでいます」
 「はーい、ルカです。 見えてます?」

 見えてる
 かわいい
 地雷系?

 などなど、配信が開始されるなり様々なコメントが飛び交った。

 「前回に引き続き幽世村から出方を探してるだけど、何か知ってる人居ない?」
 「もう何日も閉じ込められてて食料も尽きそうなんです!」

 まじかよ
 前の放送の空、ガチだったぞ
 神回じゃん

 コメントは加速するものの有益なものは無く、無意味な感想が流れていく。
 期待出来なさそうだとふたりが感じ始めた頃、カメラに異変が起き始めた。
 存在しないはずの第ニカメラの映像が現れ、そちらへ視点が切り替わったのだ。
 画角からして、取り付けられているのはこの部屋の角。
 斜めの角度からベッドを見下ろすあの場所だ。

 「え? なんでカメラが?」
 「まずいです、なんか寒気が……」 
 
 異変を察知し慌てるふたりを差し置いて、コメントは加速する。

 心霊現象きた!
 ってかホテルなのか
 女ふたりでホテルってエロくない?
 カップルなのかな?

 ベッドを中心とした画角とホテルというシチュエーションから、コメントに卑猥な物が増えていく。
 
 渚ちゃん、胸大きいな
 ルカちゃんもパーカーから出てる足がエロい
 サービスしてくれたら何か思いつくかも?
 パンツくらい見れないかな
 
 「ちょっと何エロい事書き込んでるんですか! 今は緊急事態なんだからもう少しまともな事を……」

 ルカちゃん声かわいい
 黒マスクってエロいよな
 今ブラチラしなかった?
 パーカーの下何も着てないとかエロ過ぎだろ

 突然切り替わった画角はルカを見下ろすようなもので、コメントの通りパーカーの隙間からルカの下着が映り込んでいた。
 渚の部屋で着替えた水色の下着だ。
 突然のハプニングに視聴者は盛り上がり、視聴者数とコメントがどんどん増えていく。

 これくらいがちょうどいいな
 怒ってるのかわいい
 せっかくベッド映ってるんだからいちゃいちゃしてよ
 キスくらいならBANされないぞ
 喘いだら一発アウトだろ
 運営にバレる前に早く!

 エロい内容がどんどんと増えていき、歯止めが効かなくなっていく。
 もう配信を終了させようと渚の方を見ると、渚は虚ろな目でルカの真後ろへと迫って来ていた。

 「渚さ……んんっ♡」

 そのまま後ろから抱きしめられ、服の上から胸を揉まれる。
 突然の出来事に、ルカはつい甘い声を出してしまった。

 エッロ
 まじの喘ぎ声じゃん
 BANか?
 いいからもっと見せてくれ!
 消される前にお金払っとこ

 その直接的な映像に視聴者数とコメントはさらに増え、ついには有料の応援機能まで使われだした。
 僅かな間に視聴者数は500人を超え、応援金額も1万円を突破している。
 それに合わせて、性的なコメントもより具体的に変わっていった。

 直接揉んだら?
 ルカちゃん気持ちよさそう
 渚ちゃんがタチ?
 濃厚な百合チャンネルと聞いて
 もう有料配信レベルだろ

 両手でルカを抱きしめる渚には画面が見えていないはずなのだが、渚はコメントに書かれた事を実現していく。
 ルカのパーカーに手を潜り込ませて、直接その胸へと触れていた。

 「あっ♡ ダメです……配信を切っ、てぇ……♡」

 ルカの体は与えられる刺激を全て従順に受け止めて快感を伝えてくる。
 カメラの前だというのにその快感は一向に抑えられず、ルカをどんどんと高めていく。

 ルカちゃん、もうエロい顔してる
 めちゃくちゃ感じやすいじゃん
 たってきた
 今日はこれでいいや

 男たちの欲望をそのままぶつけたようなコメントが増え、ルカを責める渚の手も加速していく。
 
 「ほんとに……ダメっ♡ 力、抜けて……♡」

 足がくがくしてる
 もうイくだろ
 イキ顔アップで撮って欲しい
 渚さんは脱がないの?
 どうせならふたりとも裸でヤって欲しい

 そのコメントの通り、渚はルカをベッドへと引き込むと服を脱ぎ捨て裸になった。
 その手はルカの下着へも伸び、慣れた手つきで脱がしていく。
 そうして裸の美女ふたりが画角に収まると、コメントは最高潮を迎えていた。
 
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