上 下
186 / 200

184・神引きにはキャラソンを添えて

しおりを挟む
「何、だと……!?」
「おお……っ!!」

 愕然とする翼人たち、そして目を輝かせる俺たちが見守る中で。空中にキラキラと宝石をまき散らしながら、どこからともなく字幕が浮かび上がってくる。来た。来た来た来た! これは宝石騎士におけるお約束、いわゆる勝ち確BGM!!


*+:。.。 Believe 。.。:+*
歌:ジルコン=ラタナキリ


「っしゃあああッ!!」

 拳を突き上げて俺は吠えた。バックに流れる曲は全然そんな雰囲気じゃないけど。壮大な、けれどどこかに切なさも帯びた、胸を打つような弦楽の調べ。哀切でありながらアップテンポなイントロが、相対するふたり、いや、この闘技場の空気すべてを支配していく。


♪冷たい夜の影に 小さな炎が灯った
♪太陽でも月でもない ちっぽけな灯り
♪意味なく価値も知られず ただ在っただけの光は
♪けれど確かに 温かかった


 あからさまに憔悴した様子のフォルコが、やみくもに羽弾を乱打する。だがジルコンは指も動かさず、まとった魔力だけですべてを跳ね返す。

「ぐっ、おいふざけんなッ、アリかよこんなん!?」
「残念ながら、アリなんだよ! 世界システムの正義は我にあり、だ!」

 もはや形勢は、誰の目にも明らかだった。夜の暗闇を裂いて、光の弾丸みたいにジルコンが詰める。


♪何も要らない なんて言わない
♪偽りも真実も この手で掴み取るだけ
♪揺らぎかけても 砕け散っても
♪お前が信じてくれる


「くっそ、出鱈目だ、畜生ッ……ぐぁっ!」
「こ……こんな、こんなこと……ッ! あり得ない、人間如きにフォルコが負けるなど……間違っているッ!!」

 誰の目にも崖っぷちの様相を呈し始めたフォルコのありさまに、翼人たちが動揺にざわめく。もはや俺たちに敵意を向ける余裕すらないようだ。

「へっへーん! 間違ってようが間違ってなかろうが、結果は結果! ガチャはこの世界における絶対なんだよコノヤロー!」
「それ、よりによってお前が言う?」

 ここぞとばかりにエイグルを煽り倒す俺に、ミマが呆れたようにツッコミを入れる。いやわかってるけど! 単発で推しのSSR引くなんて生まれて初めてなんだ、自慢させてくれよ!
 なんて言ってるうちに曲はサビにさしかかる。苦しげな顔で空中に跳ね上がろうとしたフォルコの爪を、ジルコンがピンポイントで弾き飛ばした。空を奪われた翼人はよろめきながら地に足を着く。


♪いつか
♪たったひとつだけ キセキを願えるのならば
♪輝きもきらめきも すべて捧げてもいい
♪だから選んでくれ お前が求めてくれ どうか
♪たったひとりの 俺を


「くそ、くそッくそッ!! 畜生ッ!!」
「終わりだ!!」
「ぐっ、ああああっ!!」

 剣がきらめく軌跡を描き、フォルコの翼をざっくりと斬りつける。追い打ちでかけた足払いに、フォルコの長身はぐるんと反転した。

「ジルコンッ!!」
「殿下っ!!」

 騎士サマたちが一斉に上げた叫びは、明らかな歓喜の色に満ちていた。

 一瞬の間を置いて、俺たちの目に映ったのは。
 フォルコの翼を踏みつけ、喉元に剣先を突きつけるジルコンの姿だった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

風紀“副”委員長はギリギリモブです

柚実
BL
名家の子息ばかりが集まる全寮制の男子校、鳳凰学園。 俺、佐倉伊織はその学園で風紀“副”委員長をしている。 そう、“副”だ。あくまでも“副”。 だから、ここが王道学園だろうがなんだろうが俺はモブでしかない────はずなのに! BL王道学園に入ってしまった男子高校生がモブであろうとしているのに、主要キャラ達から逃げられない話。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

転生したら、ラスボス様が俺の婚約者だった!!

ミクリ21
BL
前世で、プレイしたことのあるRPGによく似た世界に転生したジオルド。 ゲームだったとしたら、ジオルドは所謂モブである。 ジオルドの婚約者は、このゲームのラスボスのシルビアだ。 笑顔で迫るヤンデレラスボスに、いろんな意味でドキドキしているよ。 「ジオルド、浮気したら………相手を拷問してから殺しちゃうぞ☆」

悪役令嬢の兄です、ヒロインはそちらです!こっちに来ないで下さい

たなぱ
BL
生前、社畜だったおれの部屋に入り浸り、男のおれに乙女ゲームの素晴らしさを延々と語り、仮眠をしたいおれに見せ続けてきた妹がいた 人間、毎日毎日見せられたら嫌でも内容もキャラクターも覚えるんだよ そう、例えば…今、おれの目の前にいる赤い髪の美少女…この子がこのゲームの悪役令嬢となる存在…その幼少期の姿だ そしておれは…文字としてチラッと出た悪役令嬢の行いの果に一家諸共断罪された兄 ナレーションに 『悪役令嬢の兄もまた死に絶えました』 その一言で説明を片付けられ、それしか登場しない存在…そんな悪役令嬢の兄に転生してしまったのだ 社畜に優しくない転生先でおれはどう生きていくのだろう 腹黒?攻略対象×悪役令嬢の兄 暫くはほのぼのします 最終的には固定カプになります

【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます

猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」 「いや、するわけないだろ!」 相川優也(25) 主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。 碧スバル(21) 指名ナンバーワンの美形ホスト。博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。 「僕の方がぜってー綺麗なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ」 「スバル、お前なにいってんの……?」 冗談? 本気? 二人の結末は? 美形病みホスと平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。

俺は成人してるんだが!?~長命種たちが赤子扱いしてくるが本当に勘弁してほしい~

アイミノ
BL
ブラック企業に務める社畜である鹿野は、ある日突然異世界転移してしまう。転移した先は森のなか、食べる物もなく空腹で途方に暮れているところをエルフの青年に助けられる。 これは長命種ばかりの異世界で、主人公が行く先々「まだ赤子じゃないか!」と言われるのがお決まりになる、少し変わった異世界物語です。 ※BLですがR指定のエッチなシーンはありません、ただ主人公が過剰なくらい可愛がられ、尚且つ主人公や他の登場人物にもカップリングが含まれるため、念の為R15としました。 初投稿ですので至らぬ点が多かったら申し訳ないです。 投稿頻度は亀並です。

モブに転生したはずが、推しに熱烈に愛されています

奈織
BL
腐男子だった僕は、大好きだったBLゲームの世界に転生した。 生まれ変わったのは『王子ルートの悪役令嬢の取り巻き、の婚約者』 ゲームでは名前すら登場しない、明らかなモブである。 顔も地味な僕が主人公たちに関わることはないだろうと思ってたのに、なぜか推しだった公爵子息から熱烈に愛されてしまって…? 自分は地味モブだと思い込んでる上品お色気お兄さん(攻)×クーデレで隠れМな武闘派後輩(受)のお話。 ※エロは後半です ※ムーンライトノベルにも掲載しています

百色学園高等部

shine
BL
やっほー 俺、唯利。 フランス語と英語と日本語が話せる、 チャラ男だよっ。 ま、演技に近いんだけどね~ だってさ、皆と仲良くしたいじゃん。元気に振る舞った方が、印象良いじゃん?いじめられるのとか怖くてやだしー そんでもって、ユイリーンって何故か女の子っぽい名前でよばれちゃってるけどぉ~ 俺はいじられてるの?ま、いっか。あだ名つけてもらったってことにしよ。 うんうん。あだ名つけるのは仲良くなった証拠だっていうしねー 俺は実は病気なの?? 変なこというと皆に避けられそうだから、隠しとこー ってな感じで~ 物語スタート~!! 更新は不定期まじごめ。ストーリーのストックがなくなっちゃって…………涙。暫く書きだめたら、公開するね。これは質のいいストーリーを皆に提供するためなんよ!!ゆるしてぇ~R15は保険だ。 病弱、無自覚、トリリンガル、美少年が、総受けって話にしたかったんだけど、キャラが暴走しだしたから……どうやら、……うん。切ない系とかがはいりそうだなぁ……

処理中です...