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120・揚げたてプリプリエーデル大エビのフライ

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 そしてまた、(感覚だけどたぶん)数日が経過した。

 これだけ時間が経つと、いい加減恐怖よりも退屈が勝るようになってきた。クッションの中に呪符でも仕込まれているのか、ここでは魔法も使えない。やることがない俺は相変わらず、グラスを見つめるかジュエぷりの歌を歌うかの二択で時間を潰している。アメティスタはそんな俺を、何が面白いのか檻の外からずっと観察し続けていた。もちろん執務の時間にはいなくなるし、時には本を読んだりして俺から目を離すこともある。あと俺が歌い出すと顔をしかめて外に出ていく、これは確実。でも基本的にはずっと、アメティスタは俺を眺めて過ごしている。

 当たり前だが居心地は悪い。動物園のカビパラにでもなった気分だ。でも人間ってのは不思議なもんで、二日もすればその視線自体には慣れた。慣れないのはむしろ食事の方だ。おそらく屋台か何かの持ち帰りの、肉野菜入りの焼き物やらパンを添えたシチューやらがほとんどで、決して不味いわけではないのだが、ジルコンの手料理に慣れきった舌には色々と物足りない。この世界に来る前の俺なら、三食コンビニ弁当で生きてくのも楽勝だったのに。贅沢になったもんだ。ああ、ジルコンの作るエビフライが食いたい、粗めのパン粉でサクッと揚げて、ゆで卵と玉ねぎたっぷりのタルタルがついたやつ。

 脱出の糸口を見つけるために──もちろん、単なる暇つぶしも兼ねてはいるけれど──俺からアメティスタに会話を仕掛けることもある。答えの半分くらいは何言ってんだかよくわかんねーけど、前よりは意思の疎通も取れるようになってきた……と思う。
 一度、率直な疑問をぶつけてみたこともある。

「なあ、アメティスタ。なんでお前ずっとそこにいんの? 監視?」
「えぇー、監視なんかじゃないよぉ。逃げらんないだろうし、逃げたとこでどうすんの?」
「それはそうだけど……じゃ、なんでよ」
「だって面白いじゃん? 見てるの」
「なんだそりゃ……ひょっとしてアレか、お前もおもしれー男だなとか言い出しちゃうつもり?」
「おもしれー男ぉ? それはわかんない」

 椅子から立ち上がったアメティスタが、檻に向かって近寄ってくる。反対に俺は一歩引く。まるで自分の方が閉じ込められている側にいるみたいに、格子を両手で握って彼は笑う。

「人が生きてるとこ見るのって、面白いじゃん? 死んでるとこはそんなに面白くないけどぉ」
「ええ……アリの巣の観察してんじゃねーんだぞ」
「あぁ、あれも面白いよねぇ。でも人間は、何やってるかとか何言ってるかとかわかりやすいからぁ。見た目はアリの方がかわいいけど、行動は人間の方が面白いよぉ」
「……要するに俺は、人語を解するアリとしてこの檻に入れられてるってわけ?」
「んー、でもさぁ、そのためだけに人を連れてくるのはあんまよくないじゃん? だから人助け込みで。趣味と実益。それならいっかなって」
「いいわけあるかよ……」

 ぼそりと毒づく俺に、アメティスタは意にも介さない笑みを向けてまた椅子に戻った。駄目だこいつ。対話の余地がない。ただ──人を見ているのが楽しい、というその感情自体は、今の俺が否定できないところでもある。グラス越しに覗き見る騎士サマたちの行動が、ここでの数少ない娯楽なのは確かだからだ。
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