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46・個別イベには専用曲を
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一度閉じた目を、勢いつけてかっ開く。不穏な気配を感じてか、スマラクトが初めて怯えた顔を見せた。
大きく息を吸って、吠える。
「復唱!!」
「えっ」
「スマラクト! お前はダメな人間だ! はい復唱!!」
「ス、スマラクト……お前はダメな人間だ……?」
「声が小さあいっ!!!」
俺の脳裏に浮かんでいるのは、過去三日でバックれたクソブラックバイトの光景だ。研修と銘打って駅前で何度も、大声で自分の人格を否定させられたあの地獄絵図。
「私はダメな人間です!! はいもう一度!!」
「わ、私はダメな人間です!」
「私を産んだ世界はダメな世界です!! はい!!」
「私を産んだ世界はダメな世界です!!」
「この世界はダメな世界です!!」
「この世界はダメな世界です!!」
拳を振り上げてヒートアップする俺と、手を後ろに組んで声を張り上げるスマラクト。辛い過去の記憶が蘇っては消えていく。ちくしょう、何が誰にでもできる簡単な販売補助ですぅだよ! 結局やらされんのは客引き(ノルマあり)じゃねえか!
ああ、そうだよ、この世に簡単な仕事なんてないんだよ! そんななんでもかんでもうまいこといくようにできてねえんだよ、世界は!!
「世界はダメだ!!」
「世界はダメだ!!」
「世界がダメだ!!」
「世界がダメだ!!」
「俺は悪くねえ!!」
「わ、私は悪くない!!!」
「チュー太郎くんに優しくします!!」
「チュ……えっ」
「はい、Say fooooo!!」
「ふ、fooooo!!」
ランプの光に舞う埃が、いつの間にか緑のキラメキに変わる。エメラルド色の炎が書架を照らして、どこからともなく音楽が流れ出す。
*+:。.。 Dandelion Green 。.。:+*
歌:スマラクト=ベリリウム
♪透明な雫が 指をすり抜けて消えた
♪冬の終わりの夜
♪冷たい土の上 膝を抱えて泣いた
「ソロ曲だーーー!!」
右手にエアマイクを握りしめ、左手で天を突き上げる。マジかよソロもアリかこのゲーム!! 恋愛イベで音ゲーはやめとけよ!?
♪幸福も生命も 私の手の中なら
♪風に揺れる花のように 強くありたかった
「スマラクト!!」
「はい!!」
爆音で流れるキャラソンに、負けないように声を張り上げる。これそんな大音量で聞く曲調じゃねえだろ! 音量設定ミスってやがんな運営! でもいいや、今のテンションにはピッタリだ!
♪春は来るだろうか
♪こぼれ落ちたものたちが 眠りにつくこの地にも
♪花は咲くだろうか
♪すくい上げた手のひらが 今も空っぽでも
「わかったか、スマラクト!」
「はい!! お、大声なんて、15年ぶりで……っ、なんだかとても、爽快な気分です!!」
「爽快か!! 爽快ならいい!!」
たぶん俺の意図とは違うわかられ方をしてるような気がするが、スッキリしたならそれでヨシ! 俺もスッキリしたからヨシ! っていうか正直俺もよくわかってないから三方ヨシ!!
♪目覚めれば窓の外には 柔らかな陽の光
♪青空を横切るのは ひとひらのDandelion
ボーカルがラストの大サビを迎え、鳴り響いていた音楽がフェードアウトしていく。
入れ替わるように乱雑なノックが聞こえた。返事をするより前に、図書室の扉がガチャリと開く。
「あのさぁ、うっっっさい。何やってんのキミら?」
「……なんでしょうね」
不機嫌丸出し顔のアメティスタの苦情に、慣れない大声で疲弊しきった俺たちは返す言葉もない。
……うん、なにこれ。
大きく息を吸って、吠える。
「復唱!!」
「えっ」
「スマラクト! お前はダメな人間だ! はい復唱!!」
「ス、スマラクト……お前はダメな人間だ……?」
「声が小さあいっ!!!」
俺の脳裏に浮かんでいるのは、過去三日でバックれたクソブラックバイトの光景だ。研修と銘打って駅前で何度も、大声で自分の人格を否定させられたあの地獄絵図。
「私はダメな人間です!! はいもう一度!!」
「わ、私はダメな人間です!」
「私を産んだ世界はダメな世界です!! はい!!」
「私を産んだ世界はダメな世界です!!」
「この世界はダメな世界です!!」
「この世界はダメな世界です!!」
拳を振り上げてヒートアップする俺と、手を後ろに組んで声を張り上げるスマラクト。辛い過去の記憶が蘇っては消えていく。ちくしょう、何が誰にでもできる簡単な販売補助ですぅだよ! 結局やらされんのは客引き(ノルマあり)じゃねえか!
ああ、そうだよ、この世に簡単な仕事なんてないんだよ! そんななんでもかんでもうまいこといくようにできてねえんだよ、世界は!!
「世界はダメだ!!」
「世界はダメだ!!」
「世界がダメだ!!」
「世界がダメだ!!」
「俺は悪くねえ!!」
「わ、私は悪くない!!!」
「チュー太郎くんに優しくします!!」
「チュ……えっ」
「はい、Say fooooo!!」
「ふ、fooooo!!」
ランプの光に舞う埃が、いつの間にか緑のキラメキに変わる。エメラルド色の炎が書架を照らして、どこからともなく音楽が流れ出す。
*+:。.。 Dandelion Green 。.。:+*
歌:スマラクト=ベリリウム
♪透明な雫が 指をすり抜けて消えた
♪冬の終わりの夜
♪冷たい土の上 膝を抱えて泣いた
「ソロ曲だーーー!!」
右手にエアマイクを握りしめ、左手で天を突き上げる。マジかよソロもアリかこのゲーム!! 恋愛イベで音ゲーはやめとけよ!?
♪幸福も生命も 私の手の中なら
♪風に揺れる花のように 強くありたかった
「スマラクト!!」
「はい!!」
爆音で流れるキャラソンに、負けないように声を張り上げる。これそんな大音量で聞く曲調じゃねえだろ! 音量設定ミスってやがんな運営! でもいいや、今のテンションにはピッタリだ!
♪春は来るだろうか
♪こぼれ落ちたものたちが 眠りにつくこの地にも
♪花は咲くだろうか
♪すくい上げた手のひらが 今も空っぽでも
「わかったか、スマラクト!」
「はい!! お、大声なんて、15年ぶりで……っ、なんだかとても、爽快な気分です!!」
「爽快か!! 爽快ならいい!!」
たぶん俺の意図とは違うわかられ方をしてるような気がするが、スッキリしたならそれでヨシ! 俺もスッキリしたからヨシ! っていうか正直俺もよくわかってないから三方ヨシ!!
♪目覚めれば窓の外には 柔らかな陽の光
♪青空を横切るのは ひとひらのDandelion
ボーカルがラストの大サビを迎え、鳴り響いていた音楽がフェードアウトしていく。
入れ替わるように乱雑なノックが聞こえた。返事をするより前に、図書室の扉がガチャリと開く。
「あのさぁ、うっっっさい。何やってんのキミら?」
「……なんでしょうね」
不機嫌丸出し顔のアメティスタの苦情に、慣れない大声で疲弊しきった俺たちは返す言葉もない。
……うん、なにこれ。
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