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41・全力ドヤ顔イケメンフェイス

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「そんでスマラクト、今日は何すんの」
「ああ、はい。私の担当は知力、つまり実践よりもどちらかと言えば座学中心の演習になります。魔法学の基礎やスキアの物理構成、基本的な兵法等を頭に入れておいて頂ければ、これからの戦いはぐっと楽になるはずですから」
「勉強かぁー……」

 やだなー。教科書開いてまじめに勉強するなんて、高二の時ぐらいぶりかもしれない。でもまあ、筋トレや木刀振らされるよりはだいぶマシか。少なくとも疲労困憊して立てなくなるってこたないだろう。

「書架を一室貸していただけるよう取り計らってあります。まずは移動しましょうか」
「おー。あ、ちょっと待って」

 移動という単語を聞いてふと思いつく。いつもならこういう場面は、例のワープでひとっ飛びのはずだが。

「あのさ。教室まで行く間、ちょっと話したりできる?」
「話、ですか?」
「うん。あ、別になんか、特別言わなきゃいけないことがあるってわけじゃないんだけどさ。なんつーの、せっかくだから限られた時間を有効に使って、お互い親睦を深めようじゃないの、っつーの?」
「……はあ。まあ、構いませんが」

 うわ、露骨に嫌そうな顔。でもめげない。小さなことからコツコツと、地道に親愛度を上げていくべし。無課金にできる唯一の手段だ。システムへの介入と見なされて運営に消されたらどうしよう、と内心ビクビクしてたけど、城へと続く回廊に踏み入っても、俺の視界に変化は起こらない。よっしゃ!

「しかし、私のような人間と親睦を深めたところで、得られる利益など塵芥の一粒たりとも存在しないと思いますが」
「いやいや、またまた、そんなこと言ってえ」
「事実ですよ」

 落ち込むでもなくえらく淡々と、スマラクトは自虐の言葉を継いでいく。今に始まった話じゃないけど、ほんと、なんなんだこいつ。

「あんたさー、なんでそんないつでもネガティブなんだよ。俺が言えた話じゃないけど、謙遜も過ぎると嫌味だぜー」
「……申し訳ありません」
「いや、謝んなくていいけどさ。でもわっかんねーなー、俺があんただったら常日頃から全力ドヤ顔して生きてくけどなー」
「ド、ドヤ顔?」
「だってさー、そんなキラキラのイケメンでしかも王子付きの騎士サマって、世間的に見れば上澄みも上澄みじゃん? 常にどうよ俺ってツラで世の中渡って許される稀有な存在ですよ。俺みたいな下層民はハンカチ噛んで睨めつけるしかねーですよ」
「は、はあ……」

 ひとり頷きながら歩みを進める俺の横を、スマラクトは微妙な顔をしながらついてくる。やべ、引かれたか。フォローフォロー。

「ま、でも、こういうのは気持ちの問題なんだよな、きっと。あんたもあんたで苦労してんだろ、たぶん」
「……そう、なんでしょうか。しかし私の苦労など、市井の人々と比べて取るに足らないものばかりです」
「なんで比べんだよ。いいんだよそこは主観で、自分の痛いのなんて自分しかわかんねーんだからさぁ」

 お、今俺ちょっといいこと言ったんじゃない? これは親愛度大幅アップあります? だが俺の期待とは裏腹に、スマラクトは眉間のシワをますます深くして息を吐く。

「……複雑です。君にそんなことを言われてしまうとは」
「なんでだよ!」

 反射的に声を上げて突っ込んだ。俺そんな悪いこと言ってないよね? あー、でも確かに考えてみりゃそうか。嫌いな奴にこんな知った風な口叩かれたら、うわなにこいつとも思うか。くそう、親愛度、呪いの数値!
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