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37・暗い海に映る星
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「さあ、どうする」
俺を見下す位置から、ジルコンがこちらに向けて手を差し伸べる。腹立つ顔しやがって。俺が拒否する可能性なんて微塵も考えてないツラだ。無意味に断ってもろとも死んでやろうか、なんてねじくれた考えが頭をよぎる。
でも、ここで俺が突っぱねたところで、こいつにとっては大したダメージにもならないだろう。代わりの手はいくらだってある。逆に俺は、ここで乗らなきゃこの後の人生ダンゴムシ確定だ。
窓の向こう、ジルコンの背後には、暗い海と満天の星空が広がっている。宝石箱をぶちまけたみたいなキラキラの夜空だ。現代日本の町中じゃ絶対見れない、手を伸ばしたら届きそうな大粒の星。
大きく息を吸って、吐く。覚悟は決めた。ベッドの上からびょんっと下りて、ちょこちょことジルコンの元へ歩いていく。
「とりあえず、この縄ほどけよ」
「あ?」
「ほどいてくれなきゃ手も取れねえだろ、バーカバーカ」
「ほう。……いい度胸だ」
にやりと笑ったジルコンが、腰に帯びた剣に手をかけた。
「ちょっと待ってそれで斬んの!?」
「動くなよ。手元が狂ったら中身ごとバラバラだ」
「やめてぇ!? 斬らないでよ!? 俺まで斬らないでよ!?」
「ああ、煩い」
ヒュッと空を切る音がして、閃光の筋が俺の回りを走る。重そうな剣が鞘に収まると同時に、俺を縛っていた荒縄がばらりと地に落ちた。唖然としてジルコンを見上げる。握りしめて汗ばんだ俺の拳を、ジルコンがひょいと持ち上げる。
「契約成立、だな」
「……んっの、クソ王子……」
「そうだが、何か?」
涼しい顔でジルコンはうそぶく、いやもう、なんなのこいつ。歪んでるわ、ダイヤのくせに。ジュエぷりのダイアちゃんを見習えよ、ちょっと世間知らずだけど正義感が強くて素直でまっすぐなダイアちゃんをよ。そういうキャラであるべきだろ、ダイヤモンドってのは。
「マジでさあ、なんでこのゲームこんな性格のキャラばっかなの? バランスおかしくない?」
「お前、オタクを自称してる割に意外と物を知らないな」
「あ?」
「昨今は素直な美形より、多少癖のあるキャラの方が受けると相場が決まってるんだよ。キラキラ光らせときゃ喜んでくれるのはカラスと男子小学生までだ」
「なんでよ……いいじゃんキラキラ、思い出せよキラカードで喜んでた頃の純粋な気持ちをよー」
ぶちぶちと文句を垂れながら、藁クズの散らばったベッドに腰を下ろす。ていうか嫌なんですけど、こんな自分でターゲッティングとか意識してるソシャゲキャラ。
「で? 協力するっつっても、俺はどうすりゃいいの」
「さっき言っただろうが。俺はイベントフラグと必要なパラメーターを弄るから、お前は指定された日に指定された場所に行け。もちろん変動するのはあくまで数値のみで、お前自身の身に変化が起こるわけじゃない。が、イベントを起こすだけならそれで十分だ」
「……どうせなら俺にも百万ジュエネルくらいちょうだいよ」
「それは電子計算機使用詐欺罪にあたるから駄目だ」
日本の法律適用されんのかよ。じゃあこいつセクハラとパワハラで訴えられろよ。
俺を見下す位置から、ジルコンがこちらに向けて手を差し伸べる。腹立つ顔しやがって。俺が拒否する可能性なんて微塵も考えてないツラだ。無意味に断ってもろとも死んでやろうか、なんてねじくれた考えが頭をよぎる。
でも、ここで俺が突っぱねたところで、こいつにとっては大したダメージにもならないだろう。代わりの手はいくらだってある。逆に俺は、ここで乗らなきゃこの後の人生ダンゴムシ確定だ。
窓の向こう、ジルコンの背後には、暗い海と満天の星空が広がっている。宝石箱をぶちまけたみたいなキラキラの夜空だ。現代日本の町中じゃ絶対見れない、手を伸ばしたら届きそうな大粒の星。
大きく息を吸って、吐く。覚悟は決めた。ベッドの上からびょんっと下りて、ちょこちょことジルコンの元へ歩いていく。
「とりあえず、この縄ほどけよ」
「あ?」
「ほどいてくれなきゃ手も取れねえだろ、バーカバーカ」
「ほう。……いい度胸だ」
にやりと笑ったジルコンが、腰に帯びた剣に手をかけた。
「ちょっと待ってそれで斬んの!?」
「動くなよ。手元が狂ったら中身ごとバラバラだ」
「やめてぇ!? 斬らないでよ!? 俺まで斬らないでよ!?」
「ああ、煩い」
ヒュッと空を切る音がして、閃光の筋が俺の回りを走る。重そうな剣が鞘に収まると同時に、俺を縛っていた荒縄がばらりと地に落ちた。唖然としてジルコンを見上げる。握りしめて汗ばんだ俺の拳を、ジルコンがひょいと持ち上げる。
「契約成立、だな」
「……んっの、クソ王子……」
「そうだが、何か?」
涼しい顔でジルコンはうそぶく、いやもう、なんなのこいつ。歪んでるわ、ダイヤのくせに。ジュエぷりのダイアちゃんを見習えよ、ちょっと世間知らずだけど正義感が強くて素直でまっすぐなダイアちゃんをよ。そういうキャラであるべきだろ、ダイヤモンドってのは。
「マジでさあ、なんでこのゲームこんな性格のキャラばっかなの? バランスおかしくない?」
「お前、オタクを自称してる割に意外と物を知らないな」
「あ?」
「昨今は素直な美形より、多少癖のあるキャラの方が受けると相場が決まってるんだよ。キラキラ光らせときゃ喜んでくれるのはカラスと男子小学生までだ」
「なんでよ……いいじゃんキラキラ、思い出せよキラカードで喜んでた頃の純粋な気持ちをよー」
ぶちぶちと文句を垂れながら、藁クズの散らばったベッドに腰を下ろす。ていうか嫌なんですけど、こんな自分でターゲッティングとか意識してるソシャゲキャラ。
「で? 協力するっつっても、俺はどうすりゃいいの」
「さっき言っただろうが。俺はイベントフラグと必要なパラメーターを弄るから、お前は指定された日に指定された場所に行け。もちろん変動するのはあくまで数値のみで、お前自身の身に変化が起こるわけじゃない。が、イベントを起こすだけならそれで十分だ」
「……どうせなら俺にも百万ジュエネルくらいちょうだいよ」
「それは電子計算機使用詐欺罪にあたるから駄目だ」
日本の法律適用されんのかよ。じゃあこいつセクハラとパワハラで訴えられろよ。
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