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9・乗ってなんぼの車と調子

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 ま、需要不明のサービスシーンはともかく。なんのかんの言っても、初めてにしてはかなりいい感じでやれたんじゃない、俺? やっぱ音ゲーの経験が生きてた説あるな。現代ゲームスキルで異世界無双も夢じゃない、ってか? やー、これから俺の人生楽しくなりそう!

「ふふふ~ふきーせきを、僕に~ふふふ~ん、っと……」

 うっかり鼻歌なんかも飛び出てしまう。辺りを見回せば視界の隅に、みんなから少し外れた位置に立っているミマが見えた。なんだなんだ、今度はそっちが壁の花か~? 俺ばっかいいとこ持ってっちゃった~? うふふ。
 しょうがねえ、今度は俺が手を差し伸べてやるとするか。ミマには色々教えてもらった恩もあるしな。軽く手を上げながら歩み寄る。

「よっ、見てたー? どうだった俺? なかなかだったっしょ?」
「見てたよ。すごいね、初めてなのに、前半はともかく後半はしっかりついていけてた」
「でっしょー!? 騎士サマ方も優しくしてくれたし、このゲーム案外チョロいんじゃね? なんつって舐めたこと言ってみたりして!!」
「……そうだね。騎士の皆様はお優しいから」
「いやーでも、思いのほか悪くないもんだね! BLゲームってのもね! このままハーレム? 逆ハー? 目指しちゃおっかなーなんつって! なははははは!」
「……」

 調子に乗りまくって胸を張る俺とは対照的に、ミマはあからさまに口数が少ない。伏せた長いまつ毛の下で、淡いクリーム色の瞳が揺れている。

「あれーミマ、もしかして不安なってる? だいじょーぶだいじょーぶ、これからは俺がサポートしてやっから!」
「……そうだね。次は僕の演習だから、不安と言えば不安なのかもね」
「あ、そっか、ミマもやるんだっけ? 頑張ってこいよ! 最初だしどんどんミスってけ!」
「……うん、ありがとう。ねえ、チュー君、ひとつお願いがあるんだけど」
「うん?」
「僕の演習、あんまり見ないで欲しいんだ。チュー君にダメなとこ見られるの、恥ずかしいから」
「えー? まあでも、そうね、わかったよ」

 そんなん気にしなくていいのに、と言いかけたけどやめておく。最初はみんな下手で当たり前だけど、失敗を直視されるのもそれはそれで辛いもんだ。特に俺くらいの、そこそこできちゃう人が相手だと、余計にな。

「じゃあ俺、そのへんウロウロしてっから。終わるころにまた戻ってくるわ」
「うん。それじゃ、またあとで」

 手を振るミマに別れを告げ、回廊の方へと歩き出す。勝手にうろついたらまずいだろうか。でも中庭を出るなとは言われてないし、見える範囲をぶらつくぐらいはいいだろう。ヒマだし。
 中庭の周辺に沿うように、あてもなくうろつき始める。刈り込まれた生垣に阻まれて、ミマたちの様子は見えない。時折剣や魔法っぽい音と、騎士サマたちの声がうっすらと聞こえる。ミマもさっきの俺みたいに優しくされてんのかな。いいなー。

「しかし……改めて見るとなんか、豪華絢爛な大宮殿、って感じではないんだな」

 誰もいないのをいいことに、失礼な感想をひとりごちる。謁見の広間の豪華さとは裏腹に、中庭から見渡す城の様子は、正直な話そこまできらびやかには感じられない。石造りの城にはもちろんそれなりの風格はあるけれど、宝石で飾り立てられているわけでも、見上げるばかりの大きさってわけでもない。どちらかと言えば堅牢そうな、実用に徹したつくりのようにすら見える。そう言えばオープニングで百年戦争がどうとか言ってたっけ。今は終結してるはずだけど、そのへんの歴史が関係してるのかもしれない。
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