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オトンのヤキモチ
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◇◇◇◇◇
2週間前やねんけど。
オトンから、届いたLINEの内容が…
「もう、ワシ帰らんかも…比奈、オカンの事頼むわな」
という、良くわからん自分勝手な内容やった。
(気が重いわ。こんな事、旦那に相談出来ひんし…)
オカンには、話さなアカンと思いつつ
オトンが、もしかしたら気が変わって
帰ってくるかもしれないので、しばらくは
黙っておこうと勝手に決めて
オトンからのLINEは、削除してしまった。
出来ればこのまま、オカンに
話さん内に…オトンが帰って来てくれたらと
思ってたんやけど、帰ってくる気配すら無かった。
それにや、
最近…オカンに恋した様子で
通って来てる『黒猫』のマスターと
それを満更でも無い様子で、相手してる
オカンの事も、どうしたものかと頭が痛かった。
「オカンは、マスターの事を本当の所はどう思ってるの?」
私では、聞けないことを
面と向かって聞いてくれたんは、
やっぱり亞夜子ママやった。
「正直言うとな、自分でも浮かれてるなぁって
反省はしてるけど…顔見るとなんかホッとするというか
癒やされるんよ。落ち着いて話も出来る人やし…
共通の好きなもんの話が出来るって、楽しいしな♪」
オカンは、がんもを見つめながら
亞夜子ママの質問に、笑って正直に答えていた。
「もしやで? マスターがオトンと別れて一緒に
なってくれって言うたら…オカンはどうするん?」
私は思い切って
そのままオカンに聞いてみた。
「アハハハ、そんなことは、まず無いわ~(笑)
前田さんが、そんな事を絶対言う訳ない思うで!」
オカンらしい答えやった。
別に恋とか、そういうもんじゃないんやろな。
オトンが、帰って来んのが悪いし、今は
マスターみたいな人が、オカンの支えに
なってくれてるんやろうし。
やっぱり一番の問題はオトンやな。
困ったもんやで…(溜息)
私が、色々と考え事をしながら
洗い物を片付けていると、美花ちゃんが
私の横へ来て、エプロンのポケットに
手紙を入れて座敷へ戻って行った。
手紙の内容は簡単やった。
『最近、比奈ちゃん元気無いみたいやねんけど
オカンの事で悩んでる? 手があいたら座敷へおいでって
みんな言うてるよ。1人で悩んだらアカンで!』
なんとも嬉しい内容だった。
こんなん、LINEでもええのに
わざわざ手紙て、余計に嬉しいわ。
そして、店の戸が開いて
入って来たのは『黒猫』のマスターやった。
クマちゃんも、もちろん一緒で
がんもが起き上がって"ニャ~ンニャ~ン"と
嬉しそうに出迎えていた。
いつの間にか、お揃いの首輪までしてるし。
「おかえり~♪ がんもは、クマちゃんを待ってたんやなぁ~(笑)」
オカンは、カウンターに座ったマスターに
お絞りを渡しながら、2匹を見て嬉しそうに笑っていた。
「クマも、店を閉めてこの時間が近づくと
店の裏口の前で、待ってるんです。がんもちゃんに
会いに来るのが、クマの日課になりつつ有りますね。フフッ」
タバコに火を付けながら
マスターも、目を細めて笑っていた。
この2人の頭の中は、どうも
自分達の猫の事でいっぱいのようやった。
私は誤解していたのかもしれない。
オカンもマスターも、がんもとクマちゃんが
可愛くて仕方がないだけなんや。
恋なんてもんじゃないんや。
「これ片付いたら、私も座敷で、絵美里とご飯食べて来ても良い?」
私がオカンに聞くと、オカンは
うんうんと頷いて、ゆっくり絵美里と
ご飯食べたらええって、言うてくれた。
片付けを済ませて、夜定食を用意して
座敷へ運ぼうとしていたら、絵美里を
見ててくれたこうちゃんが来て、私と
絵美里の夜定食を、一緒に座敷まで運んでくれた。
「ありがとう~♪ なんか、いつも絵美里の子守り
ばっかりさせてしまって悪いな~。麻由美ちゃんも
妊婦さんやのに、手伝ってもらってほんまゴメンやで!」
私が頭をペコペコ下げながら
笑って座敷へ座ったら、絵美里が
立ち上がって、すぐに抱きついてきた。
「やっぱりママがええんやなぁ~(笑)でも、大丈夫や。
絵美里ちゃんは、そんなに愚図ったりもせんから
子守りも楽やわ。それに、予行演習やと思ってるしね♪」
麻由美ちゃんが、少し大きくなった
お腹をさすりながら、大丈夫やと笑ってくれていた。
私と絵美里がご飯を食べ終わって、
少し落ち着いたので、話の本題に入る事にした。
「実はな。2週間前に、オトンから…もう帰らんかもって
LINEが来ててん。理由は、全然わからんし…気が変わって
帰って来るかもしれへんから、オカンには言うてないんよ」
私は、声を出きるだけ低くして
オカンには、気づかれんように話した。
「やっぱり…悩んでたんや。最近、比奈ちゃん…
洗い物しながら、考え事してるみたいやったから
オカンとマスターの事で、悩んでるかな~って
みんなで心配しててん。…まさか、オトンの事やったとは
思わんかってんけど…」
美花ちゃんは、私の話を聞いて
驚いて声を上げそうになったけど
慌てて口を抑えて、小声で話してくれていた。
「あっ、そう言えば。ちょうど、2週間位前やねんけど、
僕…駅前で、オトン見たんやけど…家に帰ってなかったんや」
私の話を聞いて、宗ちゃんが
思い出したように話してくれた。
「話したわけでは、無いけど…あれは、確かに
オトンやった。そう言えば、なんか元気無かったかも…」
宗ちゃんの話を聞いて、みんなは顔を見合わせた。
「『黒猫』のマスターが、ここへ来るようになったのが…
多分、1ヶ月位前からで…オトンが、駅まで帰って来てるにも
関わらず、家に帰らずに、比奈ちゃんに帰らんってLINEしてる」
私と宗ちゃんの話を、照らし合わせて
美花ちゃんと麻由美ちゃんが、冷静に
オトンのことを分析していた。
するとこうちゃんは、何かに
気付いたように、声は上げずに横に居た
宗ちゃんの背中をバシバシ叩いていた。
「もしかして…オトン! オカンとマスターが一緒に
居るとこ見て、誤解したんかもしれへんで?」
こうちゃんが、真面目な顔をして声を少し落として言った。
「宗ちゃん…オトンを見た日…思い出せる?」
美花ちゃんが、少し不安げに
宗ちゃんに聞くと、宗ちゃんが少し考えて
カバンから手帳を出して、思い出そうとしてくれていた。
「10月の第一金曜日やったと思う。9月の末では
無いはずやし…僕の記憶では10月の始め頃やわ…ちょうど
マスターが、ここに通い始めて2週間位で。オカンも
仕込み前に『黒猫』へ行くようになった頃やわ」
宗ちゃんは、オカンとマスターをチラッと見て確信していた。
確かに、10月の始めの金曜日
オカンは、仕込み前に『黒猫』に行ってたはず…。
「見たんかもなぁ。オトンも良く商店街をうろうろしてから、
家に帰って来るから。たまたま『黒猫』で、仲睦まじくしてる
オカンとマスターを見たんかもしれへんわ…あくまでも
想像やけどな。オトンなら、ありえる気がする」
「オトンに確認しよか? 俺、電話して聞いてみるわ。
こういうのは、男同士のほうがええかもしれへんしな!」
私が溜め息を吐いてると
こうちゃんが、オトンに真相を
確認してくれると言ってくれていた。
「あの2人を見たら、確かに疑うかもなぁ。それに、
普段からオカンを放ってるオトンにしたら、後ろめたい
言うか…自信ないんちゃうか?」
皆が思ってても、口に出して言わんかったことを
さらりと言ったのは、大人な健ちゃんやった。
「いつから居ったん? びっくりした~!!」
「オカンとマスターが、ええ感じやし…なんか
比奈ちゃん達のほうが、面白そうやったからこっそり
こっちへ移って来たったんや♪(笑)」
美花ちゃんが、本気で驚いて
健ちゃんの背中をバシバシ叩くと、
健ちゃんは、ケラケラと笑っていた。
そうこう話をしてる間に
こうちゃんが、裏口から出て外で
オトンに電話をしてくれていた。
オトンは、こうちゃんになら話してくれるやろか。
私は、落ち着かへんから
片付けをしながら、こうちゃんが
戻ってくるのを待っていた。
楽しそうに、がんもとクマちゃんの
話をしているオカンとマスターを見て
初めて気付いたんやけど、二人とも
お揃いのミサンガをしてる…!?
いつから?
「オカン…そのミサンガどうしたん? マスターとお揃い?」
少し不自然やったかもしれんけど。
どうしても気になったので
私は、オカンに単刀直入に聞いてみた。
「あ~~!これ?『黒猫』の常連さんの手作りやねん。
ええやろ? 1つもらってん♪ 願掛けになるんやて(笑)
マスターとお揃いやけどな~♪(笑)」
オカンは、悪びれることもなく
ケラケラと笑って答えていた。
片付けも終わって、座敷へ行くと
絵美里も眠くなったのか、ウトウトしていた。
しばらくしてこうちゃんが
裏口から頭を掻きながら帰って来た。
「アタリやったわ…見てしもたんやって…マスターが
オカンの手を握ってたって…オトンは言うねんけど…俺は
見間違いか何かの勘違いやって言うといた」
こうちゃんは、苦笑いして
オカンとマスターを見て溜め息を吐いた。
「ミサンガかもしれん。『黒猫』のお客さんに貰ったって
言うてたから。貰った時に、マスターに結んでもらってたんを
オトンが、たまたま見てしまったんちゃう?」
私が少し声を上げて言うと、慌てて
横に居た麻由美ちゃんが、私の口を抑えていた。
「オトンな…駅前のマンションに住んでる弦さんって
言う、オトンの昔馴染みのとこに居るみたいやわ。帰らんって
言うたものの…気になってたんやろな~」
それを聞いた私は、オトンは
こうちゃんには、正直に話せるんやと思って
少し安心した。ちょっと、寂しい気もするけどね。
それにしても
オトンは、そんなに自信が無いんかな。
確かにずっとオカンを放ったらかしで、
あっちこっち好き勝手に旅してるんは
オトンやしなぁ~
オカンに愛想付かされても、
仕方の無い立場やて、誰だって言うわな(苦笑)
まあ、こんな感じで私はこうちゃん達と
話し合って、オカンにオトンの事を話すことにした。
閉店の時間になって、マスターが
帰った後で、店の掃除をしながら
何気なく、オカンにオトンの事を話すと
オカンは笑ってこう言った。
「知ってるわ。オトン…ずっと、私のストーカーしてるし(笑)」
「マジで? ずっと? この2週間? 気付いてたん?」
私とこうちゃんが、驚いてるとオカンは
うんうんと頷いて、声を出して笑っていた。
「面白いから放ってあるねん。その内飽きて帰って来るやろし(笑)」
オカンは嬉しそうに
こんな事はそうそう無いし、
面白いやろ?と言って笑ってる。
「そやけど…そろそろ勘弁したげたら?オトンも可哀想やけど
マスターに迷惑かかったりしたらアカンし。こじれん内に
教えたらなアカンのとちゃう?」
「そやな~。明日にでも、弦さんとこへ迎えに行ってくるわ!」
本気で心配してくれてる
こうちゃんに悪いと思ったんかな?
翌日になって、
オカンは、弦さんの所へオトンを
迎えに行って、オトンは嬉しそうに家に帰って来た。
ほんま、お騒がせなオトンやわ。
2週間前やねんけど。
オトンから、届いたLINEの内容が…
「もう、ワシ帰らんかも…比奈、オカンの事頼むわな」
という、良くわからん自分勝手な内容やった。
(気が重いわ。こんな事、旦那に相談出来ひんし…)
オカンには、話さなアカンと思いつつ
オトンが、もしかしたら気が変わって
帰ってくるかもしれないので、しばらくは
黙っておこうと勝手に決めて
オトンからのLINEは、削除してしまった。
出来ればこのまま、オカンに
話さん内に…オトンが帰って来てくれたらと
思ってたんやけど、帰ってくる気配すら無かった。
それにや、
最近…オカンに恋した様子で
通って来てる『黒猫』のマスターと
それを満更でも無い様子で、相手してる
オカンの事も、どうしたものかと頭が痛かった。
「オカンは、マスターの事を本当の所はどう思ってるの?」
私では、聞けないことを
面と向かって聞いてくれたんは、
やっぱり亞夜子ママやった。
「正直言うとな、自分でも浮かれてるなぁって
反省はしてるけど…顔見るとなんかホッとするというか
癒やされるんよ。落ち着いて話も出来る人やし…
共通の好きなもんの話が出来るって、楽しいしな♪」
オカンは、がんもを見つめながら
亞夜子ママの質問に、笑って正直に答えていた。
「もしやで? マスターがオトンと別れて一緒に
なってくれって言うたら…オカンはどうするん?」
私は思い切って
そのままオカンに聞いてみた。
「アハハハ、そんなことは、まず無いわ~(笑)
前田さんが、そんな事を絶対言う訳ない思うで!」
オカンらしい答えやった。
別に恋とか、そういうもんじゃないんやろな。
オトンが、帰って来んのが悪いし、今は
マスターみたいな人が、オカンの支えに
なってくれてるんやろうし。
やっぱり一番の問題はオトンやな。
困ったもんやで…(溜息)
私が、色々と考え事をしながら
洗い物を片付けていると、美花ちゃんが
私の横へ来て、エプロンのポケットに
手紙を入れて座敷へ戻って行った。
手紙の内容は簡単やった。
『最近、比奈ちゃん元気無いみたいやねんけど
オカンの事で悩んでる? 手があいたら座敷へおいでって
みんな言うてるよ。1人で悩んだらアカンで!』
なんとも嬉しい内容だった。
こんなん、LINEでもええのに
わざわざ手紙て、余計に嬉しいわ。
そして、店の戸が開いて
入って来たのは『黒猫』のマスターやった。
クマちゃんも、もちろん一緒で
がんもが起き上がって"ニャ~ンニャ~ン"と
嬉しそうに出迎えていた。
いつの間にか、お揃いの首輪までしてるし。
「おかえり~♪ がんもは、クマちゃんを待ってたんやなぁ~(笑)」
オカンは、カウンターに座ったマスターに
お絞りを渡しながら、2匹を見て嬉しそうに笑っていた。
「クマも、店を閉めてこの時間が近づくと
店の裏口の前で、待ってるんです。がんもちゃんに
会いに来るのが、クマの日課になりつつ有りますね。フフッ」
タバコに火を付けながら
マスターも、目を細めて笑っていた。
この2人の頭の中は、どうも
自分達の猫の事でいっぱいのようやった。
私は誤解していたのかもしれない。
オカンもマスターも、がんもとクマちゃんが
可愛くて仕方がないだけなんや。
恋なんてもんじゃないんや。
「これ片付いたら、私も座敷で、絵美里とご飯食べて来ても良い?」
私がオカンに聞くと、オカンは
うんうんと頷いて、ゆっくり絵美里と
ご飯食べたらええって、言うてくれた。
片付けを済ませて、夜定食を用意して
座敷へ運ぼうとしていたら、絵美里を
見ててくれたこうちゃんが来て、私と
絵美里の夜定食を、一緒に座敷まで運んでくれた。
「ありがとう~♪ なんか、いつも絵美里の子守り
ばっかりさせてしまって悪いな~。麻由美ちゃんも
妊婦さんやのに、手伝ってもらってほんまゴメンやで!」
私が頭をペコペコ下げながら
笑って座敷へ座ったら、絵美里が
立ち上がって、すぐに抱きついてきた。
「やっぱりママがええんやなぁ~(笑)でも、大丈夫や。
絵美里ちゃんは、そんなに愚図ったりもせんから
子守りも楽やわ。それに、予行演習やと思ってるしね♪」
麻由美ちゃんが、少し大きくなった
お腹をさすりながら、大丈夫やと笑ってくれていた。
私と絵美里がご飯を食べ終わって、
少し落ち着いたので、話の本題に入る事にした。
「実はな。2週間前に、オトンから…もう帰らんかもって
LINEが来ててん。理由は、全然わからんし…気が変わって
帰って来るかもしれへんから、オカンには言うてないんよ」
私は、声を出きるだけ低くして
オカンには、気づかれんように話した。
「やっぱり…悩んでたんや。最近、比奈ちゃん…
洗い物しながら、考え事してるみたいやったから
オカンとマスターの事で、悩んでるかな~って
みんなで心配しててん。…まさか、オトンの事やったとは
思わんかってんけど…」
美花ちゃんは、私の話を聞いて
驚いて声を上げそうになったけど
慌てて口を抑えて、小声で話してくれていた。
「あっ、そう言えば。ちょうど、2週間位前やねんけど、
僕…駅前で、オトン見たんやけど…家に帰ってなかったんや」
私の話を聞いて、宗ちゃんが
思い出したように話してくれた。
「話したわけでは、無いけど…あれは、確かに
オトンやった。そう言えば、なんか元気無かったかも…」
宗ちゃんの話を聞いて、みんなは顔を見合わせた。
「『黒猫』のマスターが、ここへ来るようになったのが…
多分、1ヶ月位前からで…オトンが、駅まで帰って来てるにも
関わらず、家に帰らずに、比奈ちゃんに帰らんってLINEしてる」
私と宗ちゃんの話を、照らし合わせて
美花ちゃんと麻由美ちゃんが、冷静に
オトンのことを分析していた。
するとこうちゃんは、何かに
気付いたように、声は上げずに横に居た
宗ちゃんの背中をバシバシ叩いていた。
「もしかして…オトン! オカンとマスターが一緒に
居るとこ見て、誤解したんかもしれへんで?」
こうちゃんが、真面目な顔をして声を少し落として言った。
「宗ちゃん…オトンを見た日…思い出せる?」
美花ちゃんが、少し不安げに
宗ちゃんに聞くと、宗ちゃんが少し考えて
カバンから手帳を出して、思い出そうとしてくれていた。
「10月の第一金曜日やったと思う。9月の末では
無いはずやし…僕の記憶では10月の始め頃やわ…ちょうど
マスターが、ここに通い始めて2週間位で。オカンも
仕込み前に『黒猫』へ行くようになった頃やわ」
宗ちゃんは、オカンとマスターをチラッと見て確信していた。
確かに、10月の始めの金曜日
オカンは、仕込み前に『黒猫』に行ってたはず…。
「見たんかもなぁ。オトンも良く商店街をうろうろしてから、
家に帰って来るから。たまたま『黒猫』で、仲睦まじくしてる
オカンとマスターを見たんかもしれへんわ…あくまでも
想像やけどな。オトンなら、ありえる気がする」
「オトンに確認しよか? 俺、電話して聞いてみるわ。
こういうのは、男同士のほうがええかもしれへんしな!」
私が溜め息を吐いてると
こうちゃんが、オトンに真相を
確認してくれると言ってくれていた。
「あの2人を見たら、確かに疑うかもなぁ。それに、
普段からオカンを放ってるオトンにしたら、後ろめたい
言うか…自信ないんちゃうか?」
皆が思ってても、口に出して言わんかったことを
さらりと言ったのは、大人な健ちゃんやった。
「いつから居ったん? びっくりした~!!」
「オカンとマスターが、ええ感じやし…なんか
比奈ちゃん達のほうが、面白そうやったからこっそり
こっちへ移って来たったんや♪(笑)」
美花ちゃんが、本気で驚いて
健ちゃんの背中をバシバシ叩くと、
健ちゃんは、ケラケラと笑っていた。
そうこう話をしてる間に
こうちゃんが、裏口から出て外で
オトンに電話をしてくれていた。
オトンは、こうちゃんになら話してくれるやろか。
私は、落ち着かへんから
片付けをしながら、こうちゃんが
戻ってくるのを待っていた。
楽しそうに、がんもとクマちゃんの
話をしているオカンとマスターを見て
初めて気付いたんやけど、二人とも
お揃いのミサンガをしてる…!?
いつから?
「オカン…そのミサンガどうしたん? マスターとお揃い?」
少し不自然やったかもしれんけど。
どうしても気になったので
私は、オカンに単刀直入に聞いてみた。
「あ~~!これ?『黒猫』の常連さんの手作りやねん。
ええやろ? 1つもらってん♪ 願掛けになるんやて(笑)
マスターとお揃いやけどな~♪(笑)」
オカンは、悪びれることもなく
ケラケラと笑って答えていた。
片付けも終わって、座敷へ行くと
絵美里も眠くなったのか、ウトウトしていた。
しばらくしてこうちゃんが
裏口から頭を掻きながら帰って来た。
「アタリやったわ…見てしもたんやって…マスターが
オカンの手を握ってたって…オトンは言うねんけど…俺は
見間違いか何かの勘違いやって言うといた」
こうちゃんは、苦笑いして
オカンとマスターを見て溜め息を吐いた。
「ミサンガかもしれん。『黒猫』のお客さんに貰ったって
言うてたから。貰った時に、マスターに結んでもらってたんを
オトンが、たまたま見てしまったんちゃう?」
私が少し声を上げて言うと、慌てて
横に居た麻由美ちゃんが、私の口を抑えていた。
「オトンな…駅前のマンションに住んでる弦さんって
言う、オトンの昔馴染みのとこに居るみたいやわ。帰らんって
言うたものの…気になってたんやろな~」
それを聞いた私は、オトンは
こうちゃんには、正直に話せるんやと思って
少し安心した。ちょっと、寂しい気もするけどね。
それにしても
オトンは、そんなに自信が無いんかな。
確かにずっとオカンを放ったらかしで、
あっちこっち好き勝手に旅してるんは
オトンやしなぁ~
オカンに愛想付かされても、
仕方の無い立場やて、誰だって言うわな(苦笑)
まあ、こんな感じで私はこうちゃん達と
話し合って、オカンにオトンの事を話すことにした。
閉店の時間になって、マスターが
帰った後で、店の掃除をしながら
何気なく、オカンにオトンの事を話すと
オカンは笑ってこう言った。
「知ってるわ。オトン…ずっと、私のストーカーしてるし(笑)」
「マジで? ずっと? この2週間? 気付いてたん?」
私とこうちゃんが、驚いてるとオカンは
うんうんと頷いて、声を出して笑っていた。
「面白いから放ってあるねん。その内飽きて帰って来るやろし(笑)」
オカンは嬉しそうに
こんな事はそうそう無いし、
面白いやろ?と言って笑ってる。
「そやけど…そろそろ勘弁したげたら?オトンも可哀想やけど
マスターに迷惑かかったりしたらアカンし。こじれん内に
教えたらなアカンのとちゃう?」
「そやな~。明日にでも、弦さんとこへ迎えに行ってくるわ!」
本気で心配してくれてる
こうちゃんに悪いと思ったんかな?
翌日になって、
オカンは、弦さんの所へオトンを
迎えに行って、オトンは嬉しそうに家に帰って来た。
ほんま、お騒がせなオトンやわ。
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