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4章 チート×幼女

30、テストプレイって大事ですよね

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 きゅぃぃぃぃん! ちゅどぉぉぉぉん! ぱりぃぃぃぃん
 
 広々とした空間に響き渡る、耳をつんざくような激しい轟音。 空中に出現した魔法陣から放たれた一撃によって、私達の目の前にいた緑色の巨体:<巨竜べヒモス>は他の雑魚敵よりも一段階ほど派手なエフェクトを周囲にまき散らしながら爆発四散した。

「……ご主人様、この層の敵弱すぎないかしら? 1個前の62層の方が手応えがあったわよ」

 右手に持っていた黒い拳銃――外見がガバメントっていう名前の銃にそっくりな奴――をくるくるくるっ と人差し指で器用に回し、フリル付き黒スカートの中に隠しているレッグホルスターにしまった緋色ツインテールの幼女(ロリ)ティアラは、少し不機嫌な表情を見せた。 

「うーん……全部の層で敵が強すぎると逆に攻略して貰えなくなるような気がするのよ。 『あのダンジョンの攻略無理ゲーww』 なんてツイートがバズった日にはもう終わりなのよね……」
「ご主人様はこのダンジョンをどうやって使おうと思ってるの?」
「観光地みたいな存在の……いろんな人が入れる場所?」
「観光地ねぇ……。 登録の申請方法は分かるの?」
「申請……? こういうのって勝手に作っちゃダメなの?」

 更新(アップデート)後のこの世界には、日本国憲法に代わる新しい憲法(ルール)が存在する……らしい。 見たことが無いのでどんな内容なのかは一切分からないが

 ラノベやゲームみたいなファンタジーな要素が導入されたため、建物を作るのもめちゃくちゃ容易になってしまったのは確か。 

 人工的に作られた個人の所有物である家とかの建物とは異なり、ゲームとかで作られるダンジョンっていわゆる自然で生成されたもの……要は公共の物だから、自分の物って言えないのだ。

 なので個人で作ったダンジョンを一般の冒険者さん達に開放するには、専門のギルドみたいなところに登録する必要がある……

 と、30分ほどあったティアラちゃんの説明(6割くらいは茶番)をざっくりとまとめた私は、ティアラに確認の視線を向ける

「そうね。 大体はそんな感じよ……一部私の主観が入ってたけど」
 
 うんうんと頷くティアラ。 私はこういう系の話は超大好物なので理解するのも早いのである。

「まあ、詳しいことはニーナ様と話すとして……先に進むわよ」
「うん」

 私達はその場を後にした。


 ダンジョンを進んでいくこと数時間、ティアラのサポートのおかげで85層のボス部屋の扉に たどり着いた私は、そこに刻まれた絵を見ながら少しばかりの違和感を覚えた。

 私がここの部屋に設定したボスは黒いドラゴンで、
普通ならこの扉に刻まれているのも黒いドラゴンの絵だと思うが、なぜか巨大な蛇の絵が刻まれていたのだ。

 バグ……なのかなこれは? とりあえず運営に報告しないと……あ、私がその運営だったwww

「ご主人様、一体どうしたの? 何か変なことあったの?」

 このバグ? をティアラに報告するべきか一瞬迷ってしまった。 が、色々面倒くさいので報告しないことにした。

 私は某ファストフード店の店員みたいなスマイルでティアラに応える。 

「大丈夫よ、問題ないわ」

 数日前にもこのネタを使ったような気がするが、細かいことは気にしないのが私のやり方

 そしてそれ系のネタにツッコまないのが私の仲間である

 というわけで私たちはボス攻略を始めることにした。

 ギィィィィと音を立てて開いた扉の先には……黒く巨大な蛇がいた。 体に固そうな鱗をまとっており、見た目だけだとボスと言われても違和感がない仕上がりで、耐久力が高そうだ。

「鑑定っ!」
 
 私の目の前に鑑定結果を示すウィンドウが出てくる
=====
固有名:捕食蛇(プレデタースネーク)ヴェルディ・アナコンダ
HP:???
固有能力:【竜召喚・D】自身のHPを25%消費しドラゴン系のキャラを召喚する
=====

「こいつが……ここのボス? やっぱり設定したやつと違うんですが……」

 私はボソッと呟いた。 が、ティアラは特に気にしていない様子だ

 というわけで初撃を一発ぶっ込んでみようと思い、某電気ネズミ使いみたいな口調で攻撃宣言をした

「行きなさいティアラっ! 衛星兵器級魔術砲撃(さてらいとまじっくきゃのん)っ!」

 目にも留まらぬ速さで左右の太股ふともものレッグホルスターからそれぞれ白銀と漆黒のガバメントを抜いたティアラは、両手の引き金トリガーに手を掛ける
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