まさか魔王が異世界で

６ アペルピシアという魔王

まさか魔王が異世界で ２６

「さて、今日もレベルアップに勤しむか」
　イノシシ型の魔物の主を倒した次の日も同じ森へとやってきていた。
「今日ぐらいお休みにしたらいいのに……お買い物したりとかさ……」
「そんんあ時間はない！」
　主を倒したことにより大金を手に入れて安心してはいけない。こんな端金で満足するような俺ではない。そもそも、金なんて正直どうでもいい。俺の目的は、あの爪を立ててきたこの世界の魔王に真の魔王が誰であるか知らしめてやることだ。そのためには宿でゴロゴロしているわけにはいかない。この子供の体を鍛えるためにも休んでいる暇はない。
「それより、よく普通に歩けるな」
「え？　何が？」
　昨日、あれだけの料理を残さず胃袋に納めたのに、平然とした顔で歩いている。というか、あの量の料理をいったい体のどこにしまったというのだろうか。胃袋が異次元にでも繋がっているのではないのだろうか。
「それより、大丈夫かな……」
「何の心配だ？」
「ほら、あの森の主を倒しちゃったから、群が散り散りになって近くの村に危害を加えていないかなって……」
「それは一大事だな。さっさと矯正する必要がありそうだ」
「矯正って……確かに魔物をペットにするテイマーっていう人もいるけど……アペ君、そんな能力があるの？」
「魔物といっても魔族だぞ。それを使い魔のようにするやつがいるか」
　よく人間は自身の能力よりも低い能力を持つ人間を奴隷として隷属させるが、それは人間の愚かな行動だ。人間は魔族が消費するもの。人間が人間を消費するなど、あり得ない。
「でも、それならどうやって矯正するの？　矯正っていうんだから倒さないんでしょ？」
「もちろん、刃向かうものは叩き潰す」
「叩き潰すって……矯正……」
「まあ、行けば分かる」
　説明するよりも実際に見た方が早いだろう。ミラの腹の具合も良さそうなので先を急ごう。