まさか魔王が異世界で

小森 輝

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5 魔王、戦う

まさか魔王が異世界で 23

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 攻撃が効くかどうかは分からない。だが、今までのように群に阻まれて戦えないなんていう状況よりかは可能性がある。
「ふん。主が自らとどめを差しにくるとはな。いい心がけだ。だが、それが慢心だと言うことを命と引き替えに教えてやろう!」
 剣を構え、意気込みは十分なのだが、群の下等な魔物とは違い猪突猛進に攻撃してくることはない。間合いを計り、攻撃するタイミングを見計らっている。
「憑依影装は下等な魔物以外はダメなんでしょ? あれはこの森を支配している魔物。戦っちゃダメだよ! 今すぐ逃げて! 私は、勇者が死ぬ姿を二度も見たくない……」
「ふん。子供の体だからと言って、この俺、アペルピシアをなめすぎだ、小娘」
 あの程度の魔物に破られる憑依影装ではない。
 俺はそれを理解しているのだが、憑依影装の限界を知らないミラはこの状況に絶望しているのだろう。だが、俺はこの名にかけて絶望などしない。必ず、生き残る活路を見いだしてやる。
「来るなら来い! この俺の全霊をもって叩き潰してやる!」
 俺の気迫、そして、後ろにいる戦意のないミラの姿を見て、敵ではないと思ったのだろう。群の主は何か特別な攻撃をしてくるわけでもなく、取り巻きと同じように突進攻撃を仕掛けてきた。
「その攻撃はもう見切っている!」
 何度、イノシシ型魔物の突進攻撃を受けてきていると思っているんだ。タイミングは問題ない。後は、攻撃の威力だけ……。
「俺の全ての力をこの一撃に込めよう」
 全身の力を剣をもつ腕に集めていく。
「パワースラッシュ!」
 今まで取り巻きの雑魚にすら傷一つつけることが出来なかったこのスキルなのだが、囲まれて今まで何度もスキルを使い剣を振ってきた。今ここで剣のレベルが上がり、パワースラッシュの威力が上がっていてもおかしくはない。俺はその可能性に賭ける。
「うおおおお!」
 剣がパワースラッシュの赤いオーラを纏い、そして、群の主も迫ってきている。
 スキルを発動するタイミングは完璧。突進が憑依影装に跳ね返される前にパワースラッシュが起動する。スキルによる剣を振り下ろす力に自分の力も乗せて、今の自分が出せる最大の力で剣を振り下ろす。
 多くは望まない。倒せなくてもいい。ただ、少しでいいのでダメージを与えれることが出来ればそれでいい。奴は俺たちに攻撃手段がないと思いこんでいる。そこに、ダメージを与えることが出来れば、危険を感じて引いてくれるかもしれない。神頼みはしない。ただ俺に出来ることを全力でやるだけだ。



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