アイリス未来探偵事務所

小森 輝

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 昼食を終えた私は、鐘ヶ江さんに言われた通り社長室へとやってきた。
 一度は来ているのだが、他とは違うこの扉の前に立つと、やっぱり緊張が胸を這い回る。
 いつかは慣れなければならないと思いながら、扉をノックした。
「どうぞ」
 今朝と同じように入室を許可する声が聞こえたので、私はすかさず扉を開けた。
「失礼します!」
 中へ入ると、虹釜社長は何かの資料を読んでいた。どうやら、お仕事中のようだ。
「あら? 山本さん。どうかしたの? 鐘くんと一緒じゃなかったっけ?」
「いえ、今はお昼休憩でして……」
 お仕事の邪魔をしてはいけないので、世間話はせず、すぐに話の本題へと入った。
「あの、午後の私の仕事なんですけど……」
「午後の? 鐘くんと何かトラブルでもあったの?」
「いえ、そう言うわけではなくて……」
 無駄に勘ぐらせてしまったようだ。お仕事の邪魔をしてはいけないので、早く話してしまおう。
「鐘ヶ江さんは午後から民事のサポートに行くみたいなんで、私の午後からの仕事がないみたいなんです」
「鐘くんが民事の? 鐘くんって今日は刑事事件じゃなかった? 山本さんと一緒にって話だったよね?」
「そうです」
「そっちはどうなったの?」
「警察からの報告待ちみたいで……」
「もう解決したんだ! 流石、鐘くん」
 一応、まだ警察が捜査しているので解決したわけではないのだが、そう言わせるだけの信頼と実績が鐘ヶ江さんにはあるのだろう。
 あんな人だが鐘ヶ江さんはすごい人だと再認識するが、今は自分のことを考えなければ。
「それで、私は午後から何をしたら……」
「そうね……。今から他の人に付くのも大変だろうし、そのまま鐘くんのとこに付いてていいんじゃない?」
「え……? でも、鐘ヶ江さん、午後からはフリーだって」
「こういう空いた時間でどういうことをしているのか見ておくのも大事じゃない?」
「それなら……分かりました」
「頑張ってね。期待してるから」
「……はい!」
 期待というたった一言に乗せられる私は少々チョロイのかもしれないが、これ以上、社長が仕事をしているのを邪魔してはいけないので、私は社長室から退室した。
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