アイリス未来探偵事務所

小森 輝

文字の大きさ
上 下
9 / 21

9

しおりを挟む
 意気込みを十分に身につけて、資料へと立ち向かった。
「えーっと……なになにぃ……」
 所要時間は10分。資料は20枚強。つまり、1枚あたり使える時間は30秒。全てを頭に入れることは諦めよう。とにかく、話に付いていけるように、要所を押さえる。分からないことがあってもすぐに調べることが出来る程度には頭に入れ込む。そのためには、できる限り集中しなければならない。
 「警察は殺人と断定」「背後から首筋を一突き」「被害者は女性」「仕事を無断欠勤」「自宅で発見」「鍵は開いていた」「荒らされてない」「強盗ではない」「暴れた様子はない」「自宅で凶器発見」「司法解剖」「角度から身長175cm以上」「椅子を使った可能性」「男性の可能性」「知人は多い」「目撃証言なし」「監視カメラなし」「聞き込み」
「おい! 新人!」
「ほへっ!」
 そう声をかけられ、一瞬にして現実に戻された。ついでに変な声も出てしまった。
「行くぞ」
 私に声をかけたのは鐘ヶ江先輩だった。
「えっ……もう10分経ったんですか?」
 まだ資料を最後まで読めていない。けれど、私の間隔では、まだ10分は経っていないような気がする。かなりいいペースで読み進めていたし、この調子なら2週できるんじゃないかと思っていたぐらいだ。
「10分? んなもん、計ってるわけないだろ」
「そんなぁ……」
 これは絶対に10分経っていない。そもそも、タバコを吸うだけの時間なのだから10分も必要なかっただろう。
 迂闊だったと自分を責めかけたが、そもそも10分でも厳しいのに、それをさらに短くされては資料を把握することなんて出来るわけがない。
「というか、まだ外に出る準備が出来てないのか? これ以上待つ気はないぞ」
 さらに外出の準備までしておけなんて、それは流石に人智を超越している。
 ただ、今の私は、机の整理をして、渡された資料を必死になって見ていただけなので、自分の鞄から物を出したりしていない。なので、すぐにでも外出する事ができる。
「大丈夫です! すぐに行きます!」
 自分のバッグと必死に要所を押さえようとした資料、そして、ついでにパソコンも持って鐘ヶ江先輩の後を追った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ファクト ~真実~

華ノ月
ミステリー
 主人公、水無月 奏(みなづき かなで)はひょんな事件から警察の特殊捜査官に任命される。  そして、同じ特殊捜査班である、透(とおる)、紅蓮(ぐれん)、槙(しん)、そして、室長の冴子(さえこ)と共に、事件の「真実」を暴き出す。  その事件がなぜ起こったのか?  本当の「悪」は誰なのか?  そして、その事件と別で最終章に繋がるある真実……。  こちらは全部で第七章で構成されています。第七章が最終章となりますので、どうぞ、最後までお読みいただけると嬉しいです!  よろしくお願いいたしますm(__)m

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

悪い冗談

鷲野ユキ
ミステリー
「いい加減目を覚ませ。お前だってわかってるんだろう?」

リアル

ミステリー
俺たちが戦うものは何なのか

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

クオリアの呪い

鷲野ユキ
ミステリー
「この世で最も強い呪い?そんなの、お前が一番良く知ってるじゃないか」

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

顔の見えない探偵・霜降

秋雨千尋(あきさめ ちひろ)
ミステリー
【第2回ホラー・ミステリー小説大賞】エントリー作品。 先天性の脳障害で、顔を見る事が出来ない霜降探偵(鎖骨フェチ)。美しい助手に支えられながら、様々な事件の見えない顔に挑む。

処理中です...