3 / 7
誰よりもVIVIDに 3
しおりを挟む
それは、私の隣の席。
そこには、まさにバラの花が似合いそうな美男子が座っている。
校内一……かどうかは分からないけど、クラス内で一番のイケメンだということは間違いない。
そんなイケメン男子生徒と隣の席だというだけでも、この学校にいる女子生徒の中では運がいいのかもしれない。けれど、私の幸運はそれだけで終わらなかった。
クラスの女子生徒が羨むような出来事が、数学の授業でよく起きる。
「……しまった」
隣の席にいる私じゃないと聞き逃してしまうような小さな呟きの後、突然、立ち上がった。
授業中ということもあって、一気に注目の的になる。もちろん、私も。
でも、驚くようなことはない。見慣れた光景だ。だから、次に彼が叫ぶ言葉を誰もが分かった。
「すみません! 教科書間違えてしまいました!」
私の隣では、イケメンが深々と頭を下げていた。
「また一色か……。仕方ない。隣の人に見せてもらいなさい」
隣の席。右隣は廊下。彼の隣は私しかいない。つまり……。
「ごめんね。教科書、一緒に見せてくれない?」
「も、もちろん、です」
同じクラスの同級生だというのに「です」なんて敬語を使ってしまった。もう何度も同じ経験をしているというのに、未だに緊張している。
「本当に、何度も何度も、ごめんね、藤井さん」
教科書を共有するために机も引っ付けると、一色君と肩が触れそうな距離まで近づいた。
たぶん、クラスの女子からはすごい目を向けられているだろうが、緊張でそんなことを気にしている余裕はない。
イケメンな上に、うっかりしたところもある。緑色の数学1とオレンジ色の数学Aを間違えるなんて、かなりうっかり屋さんなのだろう。
でも、見所はそれだけじゃない。
隣の机を見れば、ノートは綺麗な字で書かれている。それも内容は今日の授業のもの。彼はちゃんと予習して授業を受けている。それを裏付けるように、成績もいい。その成績の良さは入学式で新入生代表を勤めたほどだ。
顔もよくて勉強もできる。まさに、才色兼備(女性ではない)なのだが、彼には致命的な欠点がある。
「ごめん、藤井さん。あそこ、2番の問題、Xの前にある数字、教えてくれない?」
「えっと……5みたい」
「5か……。ごめんね、いつもいつも聞いちゃって」
「い、いや、これぐらい別に……。いつでも聞いてくれていいから」
こうやって黒板に書かれている文字を聞かれるのは、机を引っ付けているときだけじゃない。小さな文字を書かれたときや画数が多い漢字を書かれたときはいつも聞いてくる。
視力が悪いのだろうが、おそらく、それだけではない。
彼は教室の中だというのにサングラスをかけている。
それがおしゃれではないことぐらい、誰でも分かる。
彼はただ視力が悪いだけでないのだろう。
そこには、まさにバラの花が似合いそうな美男子が座っている。
校内一……かどうかは分からないけど、クラス内で一番のイケメンだということは間違いない。
そんなイケメン男子生徒と隣の席だというだけでも、この学校にいる女子生徒の中では運がいいのかもしれない。けれど、私の幸運はそれだけで終わらなかった。
クラスの女子生徒が羨むような出来事が、数学の授業でよく起きる。
「……しまった」
隣の席にいる私じゃないと聞き逃してしまうような小さな呟きの後、突然、立ち上がった。
授業中ということもあって、一気に注目の的になる。もちろん、私も。
でも、驚くようなことはない。見慣れた光景だ。だから、次に彼が叫ぶ言葉を誰もが分かった。
「すみません! 教科書間違えてしまいました!」
私の隣では、イケメンが深々と頭を下げていた。
「また一色か……。仕方ない。隣の人に見せてもらいなさい」
隣の席。右隣は廊下。彼の隣は私しかいない。つまり……。
「ごめんね。教科書、一緒に見せてくれない?」
「も、もちろん、です」
同じクラスの同級生だというのに「です」なんて敬語を使ってしまった。もう何度も同じ経験をしているというのに、未だに緊張している。
「本当に、何度も何度も、ごめんね、藤井さん」
教科書を共有するために机も引っ付けると、一色君と肩が触れそうな距離まで近づいた。
たぶん、クラスの女子からはすごい目を向けられているだろうが、緊張でそんなことを気にしている余裕はない。
イケメンな上に、うっかりしたところもある。緑色の数学1とオレンジ色の数学Aを間違えるなんて、かなりうっかり屋さんなのだろう。
でも、見所はそれだけじゃない。
隣の机を見れば、ノートは綺麗な字で書かれている。それも内容は今日の授業のもの。彼はちゃんと予習して授業を受けている。それを裏付けるように、成績もいい。その成績の良さは入学式で新入生代表を勤めたほどだ。
顔もよくて勉強もできる。まさに、才色兼備(女性ではない)なのだが、彼には致命的な欠点がある。
「ごめん、藤井さん。あそこ、2番の問題、Xの前にある数字、教えてくれない?」
「えっと……5みたい」
「5か……。ごめんね、いつもいつも聞いちゃって」
「い、いや、これぐらい別に……。いつでも聞いてくれていいから」
こうやって黒板に書かれている文字を聞かれるのは、机を引っ付けているときだけじゃない。小さな文字を書かれたときや画数が多い漢字を書かれたときはいつも聞いてくる。
視力が悪いのだろうが、おそらく、それだけではない。
彼は教室の中だというのにサングラスをかけている。
それがおしゃれではないことぐらい、誰でも分かる。
彼はただ視力が悪いだけでないのだろう。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
幼なじみはギャルになったけど、僕らは何も変わらない(はず)
菜っぱ
ライト文芸
ガリ勉チビメガネの、夕日(ゆうちゃん)
見た目元気系、中身ちょっぴりセンチメンタルギャル、咲(さきちゃん)
二人はどう見ても正反対なのに、高校生になってもなぜか仲の良い幼なじみを続けられている。
夕日はずっと子供みたいに仲良く親友でいたいと思っているけど、咲はそうは思っていないみたいでーーーー?
恋愛知能指数が低いチビメガネを、ギャルがどうにかこうにかしようと奮闘するお話。
基本ほのぼのですが、シリアス入ったりギャグ入ったりします。
R 15は保険です。痛い表現が入ることがあります。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ペンキとメイドと少年執事
海老嶋昭夫
ライト文芸
両親が当てた宝くじで急に豪邸で暮らすことになった内山夏希。 一人で住むには寂しい限りの夏希は使用人の募集をかけ応募したのは二人、無表情の美人と可愛らしい少年はメイドと執事として夏希と共に暮らすこととなった。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
百合を食(は)む
転生新語
ライト文芸
とある南の地方の女子校である、中学校が舞台。ヒロインの家はお金持ち。今年(二〇二二年)、中学三年生。ヒロインが小学生だった頃から、今年の六月までの出来事を語っていきます。
好きなものは食べてみたい。ちょっとだけ倫理から外(はず)れたお話です。なおアルファポリス掲載に際し、感染病に関する記載を一部、変更しています。
この作品はカクヨム、小説家になろうにも投稿しています。二〇二二年六月に完結済みです。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる