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嵐の前触れ
ゲームのキャラに恋するのは規約違反ですか? 55
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「それならいいんだけど。話したくなったら、いつでも話は聞くから」
よく人を見ているというか、何というか。
あまり、不安な顔は出さないようにしよう。そのためにも、コルテがゲームの世界に戻るか戻らないかも考えないようにするべきだ。コルテが帰りたいと思ったとき、このことを話そう。だから、今はまだ、この話は保留だ。
「私のことはいいの。それよりも、ちゃんと操作を覚えてよね」
「分かてるけど、まだ24時間もやってないんだからさ……」
「弱音は言わないの。私のコルテはそんなヘタレじゃないでしょ」
「コルテの名に恥じないようにってのは分かってるけどさ……」
まだまだ操作には慣れないようだ。だからといって、甘やかすつもりはない。私が育て上げ、人間関係を築き上げたのだから、コルテにだって出来るはずだ。
実際、初めてにしては、高レベルのコルテをよく操作できている。親の心子知らずとよく言うが、コルテはよくやっている。
ただ、私が見ていると、少し無茶な動きをしたり、些細なミスをしてしまうようだ。
「あ、ほら、何かが鳴っているぞ」
インターホンが鳴っている。宅配の注文もしていないし、誰かから物が送られて来るという話も聞いていない。どうせ何かの勧誘だろうから、いつも無視しているのだが、私が近くにいると集中できないみたいだから、少し席を外そう。
「じゃあ、私が出るから。コルテはゲームをしてていいからね」
「あぁ。これからみんなと次のボスに行く予定だ」
「そう。頑張ってね」
ゲームはコルテに任せて、音が鳴っているリビングへと向かった。
勧誘にしては長く鳴らすなと思いながら、インターホンのカメラ映像を見てみると、そこには見覚えのある顔があった。
「あ、浅井さん!? どうしたの?」
待たせるのも悪いので、慌てて通話ボタンを押して話しかけた。
浅井さんに起こった様子はなく、むしろ申し訳なさそうだった。
「ごめん。気になって来ちゃった。何回かメールしたんだけど、全然返事こなくてさ」
「あっ……」
そういえば、今日はコルテとゲーム三昧で携帯電話を見る機会がなかった。
「今日、あんまり携帯見なくて……ごめんね」
「いやいや、急に押し掛けた私が言えたことじゃないからさ」
別に咎めに来たわけではないようだ。自宅に突撃するほど激昂しているわけではなくてよかった。
「それでさ、インターホンで立ち話もあれだし、入れて欲しいんだけど」
「あぁ……えっと……それは……」
今、部屋にはコルテがいて、それを見られると確実に誤解を生んでしまう。
「……ははぁん」
そんな私の懸念を浅井さんはすぐに読みとった。こういう勘だけは無駄に鋭いのだ。
「さて、このオートロックのドアを開けて欲しいんだけど」
「いや……それはちょっと……」
「そっか……ちなみになんだけどね、私、元彼が昔ここに住んでてさ、合い鍵、作ってもらったんだよね。それ、持ってるんだけど、今も開くかな……」
「分かった。分かったから、その鍵は大家さんに返して上げて」
「ありがとう」
みすみす浅井さんをマンション内に入れてしまった。だが、まだ対策はある。浅井さんを玄関で止め、コルテを寝室に押し込めておけば、どうにか出来るかもしれない。
「コルテ! 今から人が来るかもしれないから」
話の途中で、今度は玄関のインターホンが鳴った。浅井さんだろうが、エレベーターを使っては間に合わない早さで到着していた。
「そのままゲームしてていいから!」
返事を聞かないまま、玄関へと向かった。
よく人を見ているというか、何というか。
あまり、不安な顔は出さないようにしよう。そのためにも、コルテがゲームの世界に戻るか戻らないかも考えないようにするべきだ。コルテが帰りたいと思ったとき、このことを話そう。だから、今はまだ、この話は保留だ。
「私のことはいいの。それよりも、ちゃんと操作を覚えてよね」
「分かてるけど、まだ24時間もやってないんだからさ……」
「弱音は言わないの。私のコルテはそんなヘタレじゃないでしょ」
「コルテの名に恥じないようにってのは分かってるけどさ……」
まだまだ操作には慣れないようだ。だからといって、甘やかすつもりはない。私が育て上げ、人間関係を築き上げたのだから、コルテにだって出来るはずだ。
実際、初めてにしては、高レベルのコルテをよく操作できている。親の心子知らずとよく言うが、コルテはよくやっている。
ただ、私が見ていると、少し無茶な動きをしたり、些細なミスをしてしまうようだ。
「あ、ほら、何かが鳴っているぞ」
インターホンが鳴っている。宅配の注文もしていないし、誰かから物が送られて来るという話も聞いていない。どうせ何かの勧誘だろうから、いつも無視しているのだが、私が近くにいると集中できないみたいだから、少し席を外そう。
「じゃあ、私が出るから。コルテはゲームをしてていいからね」
「あぁ。これからみんなと次のボスに行く予定だ」
「そう。頑張ってね」
ゲームはコルテに任せて、音が鳴っているリビングへと向かった。
勧誘にしては長く鳴らすなと思いながら、インターホンのカメラ映像を見てみると、そこには見覚えのある顔があった。
「あ、浅井さん!? どうしたの?」
待たせるのも悪いので、慌てて通話ボタンを押して話しかけた。
浅井さんに起こった様子はなく、むしろ申し訳なさそうだった。
「ごめん。気になって来ちゃった。何回かメールしたんだけど、全然返事こなくてさ」
「あっ……」
そういえば、今日はコルテとゲーム三昧で携帯電話を見る機会がなかった。
「今日、あんまり携帯見なくて……ごめんね」
「いやいや、急に押し掛けた私が言えたことじゃないからさ」
別に咎めに来たわけではないようだ。自宅に突撃するほど激昂しているわけではなくてよかった。
「それでさ、インターホンで立ち話もあれだし、入れて欲しいんだけど」
「あぁ……えっと……それは……」
今、部屋にはコルテがいて、それを見られると確実に誤解を生んでしまう。
「……ははぁん」
そんな私の懸念を浅井さんはすぐに読みとった。こういう勘だけは無駄に鋭いのだ。
「さて、このオートロックのドアを開けて欲しいんだけど」
「いや……それはちょっと……」
「そっか……ちなみになんだけどね、私、元彼が昔ここに住んでてさ、合い鍵、作ってもらったんだよね。それ、持ってるんだけど、今も開くかな……」
「分かった。分かったから、その鍵は大家さんに返して上げて」
「ありがとう」
みすみす浅井さんをマンション内に入れてしまった。だが、まだ対策はある。浅井さんを玄関で止め、コルテを寝室に押し込めておけば、どうにか出来るかもしれない。
「コルテ! 今から人が来るかもしれないから」
話の途中で、今度は玄関のインターホンが鳴った。浅井さんだろうが、エレベーターを使っては間に合わない早さで到着していた。
「そのままゲームしてていいから!」
返事を聞かないまま、玄関へと向かった。
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