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「お、やっと見えてきた。そうかそうか、君の顔はそんな端整な顔をしていたのか。それじゃあ、私の体をよく見てもらおうか! ハッハッハ!」
 ボディービルダーのようなポーズをとり、自信の体を見せつけてくる不審者は、あろう事か、全裸だった。
「それでは、改めて。はぁーじめましてぇ! 欲望にまみれた我が信徒よ! 契約に基づき、この世界を、君の世界を変えて、共に性欲の限りを尽くそうではないか!」
 とても爽やかな笑顔を向けてくるのだが、全裸であることに変わりはない。依然として、不審者であることに変わりはない。
「な、何が目的なんだよ! っていうか、なんで服着てないんだよ!」
「なぜ服を着ていないかだって? 服というものは人間が着るものだろ? この私に服なんてものは必要ない! 私には、この肉体美がある! 着飾る必要なんてないし、むしろ、この肉体美を隠してしまう服なんて邪魔なだけさ!」
 混乱しているせいなのか、言っていることが全く理解できない。いや、理解しようとしていないが正しいのかもしれない。もう目の前の状況だけで手一杯なので、話など聞いていられない。
「それよりも、まさかあんな何も見えないような状況で、的確に私の急所を握るなんて、正直、ぞくぞくしたよ! 君が私の契約者となったのは、もはや運命といっても過言ではない!」
「な、なんのことを……急所……?」
 この全裸不審者は、いったいどこのことを言っているのだろうか。
 本当はどこか分かっているのだが、それを認めたくはない。
 だが、残念ながら、僕が握ったのは、思っていたとおりの逸物だった。
「そう、急所。男の急所と言ったら、一つしかないだろ? ペニス、そう、おちんちんのことさ!」
 この不審者、何の躊躇いもなく大声で言った。男だってその名前を大声で口に出したりはしない。男同士であれば構わないが、女性には決して聞かれたくはない言葉だ。
 やはり、この男は不審者で間違いない。早く110番して警察を呼ばなくては。
「で、電話……」
 家の固定電話はリビングにある。それにはこの部屋から出る必要があるのだが、開いた扉の前には不審者が全裸で仁王立ちしている。だが、電話できるのはそれだけではない。
「ス、スマホは……」
 僕には、まだ人類の叡智、スマートフォンがある。確か、机に置いていたはずだ。スマホで110番さえしたら警察が来て助けてくれるはず。
 そう考えた僕は、すぐさま行動に移した。
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