炎と風の反逆者

小森 輝

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苦悩する疾風の担い手

炎と風の反逆者 39

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「おい、誘。聞こえていなかったのか?」
 命の言葉で、現実に引き戻された。
「つい、見とれてしまった」
「み……」
 一瞬照れて動揺したが、咳払いをしてすぐに顔を背けた。照れ隠しのつもりなのだろう。
「褒めてくれるのは嬉しいのだが、誘に使ってもらわなければ意味がないのだぞ」
「そうだったな。すまない」
 改めて火柱を見た。命は集中を欠いているのに、その火力は衰えることはない。流石と言うよりは、制御できていないと言った方が正しいのだろう。あれは命の支配下にはない別の意志を持たない生き物なのだろう。
「こんなじゃじゃ馬、俺に扱いきれるのかよ……」
 思わず苦笑いが出てしまう。
「誘にならできる。私を信じろ」
 自分がすることじゃないから、簡単に言ってくれる。だが、やらなければならない。
 問題はこれをどうするのかと言うことだ。
 実践あるのみと命は言っていたし、とりあえず、技でも使ってみるか。
「キーンガスト」
 俺は叫び、渾身の力で腕を薙ぎ払った。
 風を刃のように鋭く飛ばすこの技は、俺が使える最も殺傷能力が高い攻撃技だ。この技ならば、あるいはあの炎を断ち切れるのではないのか。
 そう思っていたのだが、現実はあっさりと消し飛ばされてしまった。
 現象としては、俺の放った風が炎の奔流を揺らすことすらなく飲み込まれたというものだ。もう、本当に虚しいほど影響を与えなかった。
「ほ、本気だったんだけどな……」
 思わず、顔が引きつる。
「私には助力することは出来ても、助言することは出来ない。自分の能力も制御できない私には、誘が成功してくれることを祈るぐらいしかできないからな」
 命は俺から目を逸らし、顔を伏せている。
「一緒に居てくれるだけでも、俺にはすごい励みになるよ」
「そうか。ありがとう」
「まだ、お礼を言われるのは早いって」
「そうだな」
 命は顔を上げ、微笑みを見せてくれた。
「さて、気を取り直して、やってやろうじゃないか」
 気合を入れなおして、技を放った。
 風を塊にしてぶつけてみたり、突風を広範囲に起こしてみたり、竜巻を押し付けてみたり、できることは何でもやった。
 結果は、惨敗。
 炎を揺らすことや威力を微量ながら強めたことはあったが、炎の軌道を変えることは出来なかった。
「全然、だめだぁ~」
 俺は地面に仰向けで倒れ込んだ。
 空は変わることなく、青いままだ。いっその事、あの遠い世界に逃避してしまいたい気分になる。
「何がいけないのだろうな」
 命が困った顔で、俺の隣に腰を下ろした。高そうなスーツなのに、土が付くのを気にする素振りすら見せない。
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