74 / 86
予知部と迫る恐怖
予知部と弱気な新入生 74
しおりを挟む
心の中に不安を抱えていても、時間は関係なく進んでいった。そんな中でもお腹は減るもので……。時刻はお昼休みになっていた。でも、ご飯を食べる前にやっておきたいことがある。
「とりあえず、話しておかないとな……」
放課後に図書準備室へ行けば、みんな揃っているのだが、できるだけ早くに伝えたい。もし自分のみに何かあっても、伝えておけばどうにかなる。いいや、本当は怖いのだ。誰かに話しておきたいのは、自分を守って欲しいから。分かっていても、不安は私の体を突き動かせる。
来たのは校舎の一階。本当は愛先輩に伝えたかったのだが、残念ながらクラスを知らない。だから、せめて泉ちゃんにだけでも伝えようと思った。
「うーん……どこだろ」
1年3組の教室の前で中の様子を覗いているのだが、泉ちゃんの姿は見つからない。
「あれ? 秋葉? こんなところでどうしたの?」
泉ちゃんは見つからなかったが、代わりに春陽が私のことを見つけたようだ。
「ちょっと、人を探してて……。春陽はどうしたの? 今日は学食じゃないの?」
「今日はお弁当。でも、もう食べちゃった」
昼休みに入ってから食べてしまったというより、三時限目が終わった休み時間にでも食べてしまったのだろう。
「そうだ。秋葉も一緒にどう?」
「一緒にって?」
「ほら、朝の自転車危険運転野郎を探すの」
春陽は今朝のことをまだ根に持っているようだ。私は怪我をしなかったので、そんなことをしなくてもいいと言ったのだが、自分の正義感に嘘はつけなかったようだ。ただ、今は、春陽と一緒に行動することはできない。
「ごめん……私はちょっと……」
「あぁ、そうだったね。人を探してるって言ったっけ」
「うん、だからごめんね」
「謝らなくていいよ。大丈夫。ちなみに、誰を探しているの? ついでだから手伝おうか?」
「ありがとう。立花泉ちゃんっていってね、同じ予知部の友達なの。3組って聞いたんだけど、いなくて……」
「じゃあ、聞いてきてあげるよ」
「あ、ちょっ……」
止めるより先に行ってしまった。
そして、春陽の「立花さんっている?」という声が3組の教室の中から廊下まで聞こえてきた。頼れる友人をもってよかったとは思うのだが、だからといって、いい結果が出てくるとは限らない。
「いないみたいだって」
帰ってきた春陽は残念そうに言った。
「そっか。まあ、昼休みは学食って言ってたもんな」
「じゃあ、学食まで行く?」
「いや、お弁当がまだだからやめておく」
「あ、お昼まだだったんだ。早く言ってくれればいいのに。そしたら誘わなかったんだから」
「ごめんね」
「いいよ。それより、私も学食に行くだろうし、見つけたら秋葉が探していたって伝えておこうか?」
本当に頼りになる友人だ。でも、そこまで甘えるわけには行かない。
「いいよ。大丈夫。どうせ放課後に会うから」
「そっか。じゃあ、お昼、食べておいで。私はまだ犯人探しの途中だから」
「程々にね」
結局、話は放課後までのばすことになった。
「とりあえず、話しておかないとな……」
放課後に図書準備室へ行けば、みんな揃っているのだが、できるだけ早くに伝えたい。もし自分のみに何かあっても、伝えておけばどうにかなる。いいや、本当は怖いのだ。誰かに話しておきたいのは、自分を守って欲しいから。分かっていても、不安は私の体を突き動かせる。
来たのは校舎の一階。本当は愛先輩に伝えたかったのだが、残念ながらクラスを知らない。だから、せめて泉ちゃんにだけでも伝えようと思った。
「うーん……どこだろ」
1年3組の教室の前で中の様子を覗いているのだが、泉ちゃんの姿は見つからない。
「あれ? 秋葉? こんなところでどうしたの?」
泉ちゃんは見つからなかったが、代わりに春陽が私のことを見つけたようだ。
「ちょっと、人を探してて……。春陽はどうしたの? 今日は学食じゃないの?」
「今日はお弁当。でも、もう食べちゃった」
昼休みに入ってから食べてしまったというより、三時限目が終わった休み時間にでも食べてしまったのだろう。
「そうだ。秋葉も一緒にどう?」
「一緒にって?」
「ほら、朝の自転車危険運転野郎を探すの」
春陽は今朝のことをまだ根に持っているようだ。私は怪我をしなかったので、そんなことをしなくてもいいと言ったのだが、自分の正義感に嘘はつけなかったようだ。ただ、今は、春陽と一緒に行動することはできない。
「ごめん……私はちょっと……」
「あぁ、そうだったね。人を探してるって言ったっけ」
「うん、だからごめんね」
「謝らなくていいよ。大丈夫。ちなみに、誰を探しているの? ついでだから手伝おうか?」
「ありがとう。立花泉ちゃんっていってね、同じ予知部の友達なの。3組って聞いたんだけど、いなくて……」
「じゃあ、聞いてきてあげるよ」
「あ、ちょっ……」
止めるより先に行ってしまった。
そして、春陽の「立花さんっている?」という声が3組の教室の中から廊下まで聞こえてきた。頼れる友人をもってよかったとは思うのだが、だからといって、いい結果が出てくるとは限らない。
「いないみたいだって」
帰ってきた春陽は残念そうに言った。
「そっか。まあ、昼休みは学食って言ってたもんな」
「じゃあ、学食まで行く?」
「いや、お弁当がまだだからやめておく」
「あ、お昼まだだったんだ。早く言ってくれればいいのに。そしたら誘わなかったんだから」
「ごめんね」
「いいよ。それより、私も学食に行くだろうし、見つけたら秋葉が探していたって伝えておこうか?」
本当に頼りになる友人だ。でも、そこまで甘えるわけには行かない。
「いいよ。大丈夫。どうせ放課後に会うから」
「そっか。じゃあ、お昼、食べておいで。私はまだ犯人探しの途中だから」
「程々にね」
結局、話は放課後までのばすことになった。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
フリー声劇台本〜モーリスハウスシリーズ〜
摩訶子
キャラ文芸
声劇アプリ「ボイコネ」で公開していた台本の中から、寄宿学校のとある学生寮『モーリスハウス』を舞台にした作品群をこちらにまとめます。
どなたでも自由にご使用OKですが、初めに「シナリオのご使用について」を必ずお読みくださいm(*_ _)m
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話
釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。
文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。
そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。
工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。
むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。
“特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。
工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。
兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。
工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。
スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。
二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。
零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。
かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。
ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
不可触の神に愛されて
鳶丸
キャラ文芸
触らぬ神に祟りなしを地でいく最強の守護神に愛された飛鳥井久仁彦は、今日も師匠と二人で祓魔師として仕事をする。
妖怪? 怨霊? 祟り神? どんなヤツでもかかってこい。
うちの神さまと師匠は強えぞ、コラ!
現代日本に似たどこかを舞台に、無窮なる深淵の神に愛された男の物語である。
*お知らせ*
当分の間、不定期更新とさせていただきます。
続きは考えてあるので、また余裕ができれば更新する予定です。
よろしくお願いします。
*成分表*
一話あたり2000字~3000字程度
シリアス4 ギャグ3 ホラー2 エログロ・暴力描写1
*注意事項*
本作に出てくる人物や団体、宗教やら何やらぜんぶフィクションです。
現実の団体や人物その他とは一切関係ありません。
オカルトマニアの方は笑って見てやってください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる