予知部と弱気な新入生

小森 輝

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予知部と迫る恐怖

予知部と弱気な新入生 74

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 心の中に不安を抱えていても、時間は関係なく進んでいった。そんな中でもお腹は減るもので……。時刻はお昼休みになっていた。でも、ご飯を食べる前にやっておきたいことがある。
「とりあえず、話しておかないとな……」
 放課後に図書準備室へ行けば、みんな揃っているのだが、できるだけ早くに伝えたい。もし自分のみに何かあっても、伝えておけばどうにかなる。いいや、本当は怖いのだ。誰かに話しておきたいのは、自分を守って欲しいから。分かっていても、不安は私の体を突き動かせる。
 来たのは校舎の一階。本当は愛先輩に伝えたかったのだが、残念ながらクラスを知らない。だから、せめて泉ちゃんにだけでも伝えようと思った。
「うーん……どこだろ」
 1年3組の教室の前で中の様子を覗いているのだが、泉ちゃんの姿は見つからない。
「あれ? 秋葉? こんなところでどうしたの?」
 泉ちゃんは見つからなかったが、代わりに春陽が私のことを見つけたようだ。
「ちょっと、人を探してて……。春陽はどうしたの? 今日は学食じゃないの?」
「今日はお弁当。でも、もう食べちゃった」
 昼休みに入ってから食べてしまったというより、三時限目が終わった休み時間にでも食べてしまったのだろう。
「そうだ。秋葉も一緒にどう?」
「一緒にって?」
「ほら、朝の自転車危険運転野郎を探すの」
 春陽は今朝のことをまだ根に持っているようだ。私は怪我をしなかったので、そんなことをしなくてもいいと言ったのだが、自分の正義感に嘘はつけなかったようだ。ただ、今は、春陽と一緒に行動することはできない。
「ごめん……私はちょっと……」
「あぁ、そうだったね。人を探してるって言ったっけ」
「うん、だからごめんね」
「謝らなくていいよ。大丈夫。ちなみに、誰を探しているの? ついでだから手伝おうか?」
「ありがとう。立花泉ちゃんっていってね、同じ予知部の友達なの。3組って聞いたんだけど、いなくて……」
「じゃあ、聞いてきてあげるよ」
「あ、ちょっ……」
 止めるより先に行ってしまった。
 そして、春陽の「立花さんっている?」という声が3組の教室の中から廊下まで聞こえてきた。頼れる友人をもってよかったとは思うのだが、だからといって、いい結果が出てくるとは限らない。
「いないみたいだって」
 帰ってきた春陽は残念そうに言った。
「そっか。まあ、昼休みは学食って言ってたもんな」
「じゃあ、学食まで行く?」
「いや、お弁当がまだだからやめておく」
「あ、お昼まだだったんだ。早く言ってくれればいいのに。そしたら誘わなかったんだから」
「ごめんね」
「いいよ。それより、私も学食に行くだろうし、見つけたら秋葉が探していたって伝えておこうか?」
 本当に頼りになる友人だ。でも、そこまで甘えるわけには行かない。
「いいよ。大丈夫。どうせ放課後に会うから」
「そっか。じゃあ、お昼、食べておいで。私はまだ犯人探しの途中だから」
「程々にね」
 結局、話は放課後までのばすことになった。
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