65 / 86
予知部と二人の初任務
予知部と弱気な新入生 65
しおりを挟む
「あぁ。ちゃちゃ丸さん、これが欲しかったんですね」
愛先輩から貰っていた猫缶をポケットから取り出して、ちゃちゃ丸さんに見せると、飛びついてきた。
「そうだよ。これだよ。しかも、これはなかなか値が張る猫缶じゃないか!」
「あっ……ちょっと、ちゃちゃ丸さん。そんなに引っ張ったら駄目ですって」
餌で釣っているとはいえ、ここまでグイグイ来てくれると、猫好きな私にとっては堪らないシチュエーションだ。でも、このままでは話が進まない。
「この……放せ……これは俺のものだ……」
「ちゃちゃ丸さん、待て! 待てですよ、待て。待てぐらい分かりますよね?」
「知るかそんなもの! 俺は犬じゃないんだぞ!」
全く聞く耳を持たない。これが食べ物の力という奴か。なら、こちらも強行させてもらうしかない。
「もう……ちゃちゃ丸さん……駄目って言ってるじゃないですか!」
猫缶に引っかかっている爪を器用に外して、ちゃちゃ丸さんが届かない高さまで持ち上げた。
「この……。いい加減にしないと、このスカーレットネイルと呼ばれた俺の爪の鋭さを見せることになるぞ! その綺麗な足を血塗れにしてやるからな!」
ちゃちゃ丸さんは、牙を剥きだし、丸みがかった爪を見せびらかしている。威嚇されているのは分かるが、それも可愛いと思ってしまう。でも、血塗れは流石に嫌なので、黙って眺めている訳にはいかない。
「駄目ですよ、ちゃちゃ丸さん。そんなことをしたら上げませんからね」
「上げないって、それは昨日の報酬だろ! それを渋るなんて……。これだから後払いは……」
ちゃちゃ丸さんは、見せつけていた爪で地面を引っかいている。よほど悔しかったのだろう。
カリカリと音を鳴らしているが、事情を知らなければ爪とぎをしている可愛い猫にしか見えない。
「それじゃあ、私の話、聞いてくれますか?」
「話ぐらいは聞いてやる。だけど、必ず、その猫缶は渡せよ」
「分かってますって」
一時は、ちゃちゃ丸さんが聞き分けのない悪い野良猫になりそうだったが、どうにか分かり合えたようだ。
「それで、どんな話だ。答えられることがあったら答えてやる」
「ありがとうございます、ちゃちゃ丸さん」
なんだかんだ言いつつも、ちゃちゃ丸さんは優しい猫ちゃんなのだ。その優しさに甘えて、話を聞いてもらおう。
「一応、先に言っておくと、気のせいかもしれない話なんですけど、いいですか?」
「なんだ。確証もない話なのか」
「そうなんですけど、悪霊かもしれないって話で……」
「悪霊か……。それは気のせいかもでは済まないな」
やはり、ちゃちゃ丸さんも愛先輩と同様に悪霊を危険視しているようだ。
愛先輩から貰っていた猫缶をポケットから取り出して、ちゃちゃ丸さんに見せると、飛びついてきた。
「そうだよ。これだよ。しかも、これはなかなか値が張る猫缶じゃないか!」
「あっ……ちょっと、ちゃちゃ丸さん。そんなに引っ張ったら駄目ですって」
餌で釣っているとはいえ、ここまでグイグイ来てくれると、猫好きな私にとっては堪らないシチュエーションだ。でも、このままでは話が進まない。
「この……放せ……これは俺のものだ……」
「ちゃちゃ丸さん、待て! 待てですよ、待て。待てぐらい分かりますよね?」
「知るかそんなもの! 俺は犬じゃないんだぞ!」
全く聞く耳を持たない。これが食べ物の力という奴か。なら、こちらも強行させてもらうしかない。
「もう……ちゃちゃ丸さん……駄目って言ってるじゃないですか!」
猫缶に引っかかっている爪を器用に外して、ちゃちゃ丸さんが届かない高さまで持ち上げた。
「この……。いい加減にしないと、このスカーレットネイルと呼ばれた俺の爪の鋭さを見せることになるぞ! その綺麗な足を血塗れにしてやるからな!」
ちゃちゃ丸さんは、牙を剥きだし、丸みがかった爪を見せびらかしている。威嚇されているのは分かるが、それも可愛いと思ってしまう。でも、血塗れは流石に嫌なので、黙って眺めている訳にはいかない。
「駄目ですよ、ちゃちゃ丸さん。そんなことをしたら上げませんからね」
「上げないって、それは昨日の報酬だろ! それを渋るなんて……。これだから後払いは……」
ちゃちゃ丸さんは、見せつけていた爪で地面を引っかいている。よほど悔しかったのだろう。
カリカリと音を鳴らしているが、事情を知らなければ爪とぎをしている可愛い猫にしか見えない。
「それじゃあ、私の話、聞いてくれますか?」
「話ぐらいは聞いてやる。だけど、必ず、その猫缶は渡せよ」
「分かってますって」
一時は、ちゃちゃ丸さんが聞き分けのない悪い野良猫になりそうだったが、どうにか分かり合えたようだ。
「それで、どんな話だ。答えられることがあったら答えてやる」
「ありがとうございます、ちゃちゃ丸さん」
なんだかんだ言いつつも、ちゃちゃ丸さんは優しい猫ちゃんなのだ。その優しさに甘えて、話を聞いてもらおう。
「一応、先に言っておくと、気のせいかもしれない話なんですけど、いいですか?」
「なんだ。確証もない話なのか」
「そうなんですけど、悪霊かもしれないって話で……」
「悪霊か……。それは気のせいかもでは済まないな」
やはり、ちゃちゃ丸さんも愛先輩と同様に悪霊を危険視しているようだ。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
デリバリー・デイジー
SoftCareer
キャラ文芸
ワケ有りデリヘル嬢デイジーさんの奮闘記。
これを読むと君もデリヘルに行きたくなるかも。いや、行くんじゃなくて呼ぶんだったわ……あっ、本作品はR-15ですが、デリヘル嬢は18歳にならないと呼んじゃだめだからね。
※もちろん、内容は百%フィクションですよ!
四天王寺ロダンの冒険
ヒナタウヲ
キャラ文芸
『奇なる姓に妙なる名』その人は『四天王寺ロダン』。
彼はのっぽ背にちじれ毛のアフロヘアを掻きまわしながら、小さな劇団の一員として、日々懸命に舞台芸を磨いている。しかし、そんな彼には不思議とどこからか『謎』めいた話がふわりふわりと浮かんで、彼自身ですら知らない内に『謎』へと走り出してしまう。人間の娑婆は現代劇よりもファナティックに溢れた劇場で、そこで生きる人々は現在進行形の素晴らしい演者達である。
そんな人々の人生を彩る劇中で四天王寺ロダンはどんな役割を演じるのだろうか?
――露と落ち 露と消えにし 我が身かな 浪速のことは 夢のまた夢、秀吉が辞世で詠んだ現代の難波で、四天王寺ロダンは走り出す。
本作は『嗤う田中』シリーズから、一人歩き始めた彼の活躍を集めた物語集です。
『四天王寺ロダンの挨拶』
@アルファポリス奨励賞受賞作品
https://www.alphapolis.co.jp/prize/result/682000184
@第11回ネット大賞一次通過作品
https://kimirano.jp/special/news/4687/
『四天王寺ロダンの青春』
等
@第31回電撃大賞一次通過作品
となりの京町家書店にはあやかし黒猫がいる!
葉方萌生
キャラ文芸
京都祇園、弥生小路にひっそりと佇む創業百年の老舗そば屋『やよい庵』で働く跡取り娘・月見彩葉。
うららかな春のある日、新しく隣にできた京町家書店『三つ葉書店』から黒猫が出てくるのを目撃する。
夜、月のない日に黒猫が喋り出すのを見てしまう。
「ええええ! 黒猫が喋ったーー!?」
四月、気持ちを新たに始まった彩葉の一年だったが、人語を喋る黒猫との出会いによって、日常が振り回されていく。
京町家書店×あやかし黒猫×イケメン書店員が繰り広げる、心温まる爽快ファンタジー!
Hate or Fate?
たきかわ由里
キャラ文芸
Storm in the Nightfall 第1作
26歳の優哉は、サポートドラマーやスタジオミュージシャンとして活動する、実力派ドラマー。
ヘヴィメタルを愛してやまない優哉がひょんなことから加入したヴィジュアル系バンド・ベルノワールは、クールなワンマンベーシスト宵闇がリーダーとして牽引する、見た目だけで演奏力がないバンドでした。
宵闇と真正面からぶつかり合いながら、ベルノワールの活動にのめり込んでいく「夕」こと優哉。
そして迎える初ライブ!
音楽に恋に駆け回る優哉の、燃えるように熱いヴィジュ根(ヴィジュアル系根性)ストーリー!!
全36話。毎日20:30更新です。
百物語 厄災
嵐山ノキ
ホラー
怪談の百物語です。一話一話は長くありませんのでお好きなときにお読みください。渾身の仕掛けも盛り込んでおり、最後まで読むと驚くべき何かが提示されます。
小説家になろう、エブリスタにも投稿しています。
夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします
希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。
国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。
隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。
「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」
ほとりのカフェ
藤原遊
キャラ文芸
『ほとりのカフェ - 小川原湖畔に紡がれる物語』
静かな湖畔に佇む小さなカフェ。
そこには、人々の心をそっと解きほぐす温かな時間が流れている。
都会に疲れた移住者、三沢基地に勤めるアメリカ軍人、
そして、地元に暮らす人々──
交差する人生と記憶が、ここでひとつの物語を紡ぎ出す。
温かなコーヒーの香りとともに、
あなたもこのカフェで、大切な何かを見つけてみませんか?
異文化交流と地方の暮らしが織りなす連作短編集。
千切れた心臓は扉を開く
綾坂キョウ
キャラ文芸
「貴様を迎えに来た」――幼い頃「神隠し」にあった女子高生・美邑の前に突然現れたのは、鬼面の男だった。「君は鬼になる。もう、決まっていることなんだよ」切なくも愛しい、あやかし現代ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる