予知部と弱気な新入生

予知部と繋がる講義室

予知部と弱気な新入生 42

「目的の場所は……もう一個上ですか？」
「よく分かったな」
　愛先輩は、目の前にある教室の説明をすることもせずに、階段へと向かった。私もそれについて行く。だが、説明を求める必要はない。音楽室同様、そこにあった教室は有名な教室だ。
「ちなみに、理由を聞いてもいいかな？」
「はい」
　そうは言っても、移動時間はそれほど長くない。後、階段を一階分上るだけの時間しかないのだから。できるだけ話を短く、それでいて的確に内容を伝えなければならない。
「三階の教室には、放置されていそうな教室はありませんでしたから」
　三階の教室は、西から書道室、書道準備室、物理準備室、理科講義室、地理準備室。そして、さっき素通りした理科準備室と理科実験室だ。人が使わなさそうな準備室と名の付いた教室は非常勤講師が使っている。他の理科準備室や書道準備室は普段から使われているのだろう。なら、この三階に精霊はいない。
「正解だ。ちなみに、四階にある音楽室、音楽準備室、美術準備室、美術室も違う。そして、残るは……」
　その説明の途中で、階段を上り終えてしまった。だから、答えは目の前に見えている。
「コンピュータ室……」
「そう。ちなみに、ここは準備室がない。壁を取っ払って繋げてしまったみたいだ」
「……ほんとだ」
　確かに、このコンピュータ室には書道室、書道準備室のようにコンピュータ準備室があるであろう場所のドアに教室名が書かれた札が存在しない。ただ、ドアはちゃんと存在しているので、本当に準備室との壁をなくしてしまったのだろう。でも、それならそれで、問題が出てくる。
「……あれ？　もしかして、同好会とかはコンピュータ室が使えないとか、そういうことがあるんですか？」
「いいや、そんなことはないよ。ちゃんと許可を取って教師がついていたら使うことができる。最近だと、FPS研究会とか格ゲー研究会まで出来ているらしいからね。人気はあるが、流石に、学校側も部に昇格させることは出来ないだろう。テレビゲームに経費を割くいたら反感を買うだろうからな」
「それを言っちゃうと、勉学に関係ないスポーツ系の部活は、ほとんどアウトになっちゃうんですけどね」
　まあ、そんなことになれば、真っ先に切り捨てられる部活は、運動部ではなく、私たち予知部だろう。そうならないためにも、ちゃんと活動しなければならない。今回は、この精霊の件が無事に片づけば、新聞部に取り上げられて、有益な活動をしていると認知されるだろう。そのためにも、頑張って精霊を見つけなければならない。ただ、このコンピュータ室にはいないのだろう。残る教室は……。