予知部と弱気な新入生

小森 輝

文字の大きさ
上 下
38 / 86
予知部と繋がる講義室

予知部と弱気な新入生 38

しおりを挟む
 埃っぽい部屋の中に長時間とは言わないものの、体が悪い環境に慣れ始めてきたので、外の空気がとてもおいしく感じる。
「くぅ……。やっぱり外が一番」
 山に囲まれて自然が豊かなのも加えて、空気がより一層おいしく感じる。
「移動する前に、体をはたいておけ」
「……え? どうして……」
 私に何か変なものでもついてるのかと思い体を見てみると、本当についていた。というかまみれていた。
「うわぁ……。これは大変だ……」
 私の体は埃まみれになっていた。おそらく、頭にも付いているのだろうが、それよりも、制服が埃まみれになっている方がショックだった。
「あぁ……。制服が……」
「制服が汚れるのなんて気にする必要ないだろ。毎日着る物なんだから。どの道、汚れてしまう」
「そうですけど、嫌なものは嫌なんです!」
 私は必死に制服をはたいて埃を落とした。
 愛先輩はというと、私より先に埃を落としていたらしい。だが、完璧に落としているわけじゃない。所々に埃が残っている。愛先輩はそれでもいいのだろうが、私にはそれが我慢できなかった。
「あぁ……体中に……背中にも……」
 一度、制服を脱いではたきたい気持ちでいっぱいなのだが、ここは廊下だし、それに、愛先輩がいる前で服を脱ぐなんてことはできない。
「もう……髪にも絡まってるし……こんなことなら、埃取りのやつ持ってくるんだった……」
 制服に付いた埃を取るブラシを持っているのだが、バッグの中に入れており、そのバッグは残念ながら部室である図書準備室に置いてきている。取りに戻りたいのだが、愛先輩が許してくれないだろう。
「埃だったら歩いているうちに取れる。先を急ごう」
 そう言って、愛先輩は歩き出してしまった。
 埃を取るのは大事だが、愛先輩に置いていかれるのはまずい。
「ちょっと、待ってください。今、行きますから」
 そう言っても待ってくれない愛先輩に、早足で追いついた。
 愛先輩に付いていくと決めたのだが、埃が気にならないわけではない。歩きながらでも、私は制服に付いている埃をできるだけ払っていた。すると、愛先輩が嫌そうな目で見てきた。
「……なんですか?」
「そこまで気にするようなことなのか? 埃なんて、些細なものだろ」
「先輩はそうかもしれませんけど、私は違うんです!」
 まだ制服を着て三日しか経っていないのだ。それなにのこんなに汚れてしまって……。
 そのショックは制服を着て何日にもなる愛先輩には理解できないことだ。
「ついでに言っておくが、また埃だらけになるぞ」
「そんな……」
 また汚れるかと思うと、制服を払う手からちからが抜けてくる。
しおりを挟む

処理中です...