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予知部と小さい共存者
予知部と弱気な新入生 25
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「あの……先輩、これって」
確証はないが、もしかしたら、この穴の中に盗品を隠しているかもしれない。
そう思い、愛先輩に伝えようと振り向くと、まだ机の下を調べていた。
「何か見つかったのか?」
私に期待していないのか、全く興味がなさそうだ。
愛先輩がとても素っ気ない態度なのは分かっているが、報告を怠るなんてことは高校生になったからにはやってはいけないことだ。
「ここに、この本棚の奥に、小さな穴があるんですけど、これってなにか関係が」
「なに!? 痛っ!」
私の報告を聞いた愛先輩は、立とうとして思いっきり机に頭をぶつけていた。そのせいで、爆発したように埃が舞った。
「ゴホッ……。やってしまった」
煙のように白く濁った場所から、愛先輩が出てきた。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫なものか」
右手で頭を押さえ、左手で口を覆った変な格好をしていた。笑ってしまいそうなほど、おかしな姿なのだが、それは失礼なので、必死に堪えた。
「それで、穴というのは?」
「あ、はい。ここなんですけど」
「どれどれ……」
私が指さした本棚の奥にある穴を愛先輩はのぞき込んだ。どうせ違うと言われ、使えないだの役立たずだの罵詈雑言を聞かされるのだろうと思っていたが、私の嫌な予想は外れてくれた。
「お手柄だ、秋葉さん。これは私も見落としていたかもしれない。上出来だよ。君を連れてきて正解だった」
口を覆うことも忘れて私の背中をバシバシと何度も叩いて褒めてくれた。
「お役に立てたのは、うれしいんですけど……」
「なんだ……」
こんなに何回も叩かれたら、口を覆っていた手がずれてしまう。それに加え、さっきの爆発のように舞った埃が霧散して、部屋の埃濃度が増してしまったこと。これらが重なれば、鼻の奥が疼くのは仕方ないことで……。
「「へくしゅん!」」
二人、ほぼ同時にくしゃみが出た。しかも、その反動でさらに埃が舞ってしまった。
「あまり、長居はしたくないな」
「そうですね」
口を覆うついでに鼻を摘んでいる愛先輩は辛そうだ。それは私も一緒で、早く外に出たい気持ちで満たされている。
「さあ、早く、用を済ませよう」
「そう、ですけど……」
私が発見した本棚の穴は、手が入るかどうかと言うほどの小さな穴だ。なにか特別な道具があるのだろうかと思っていたが、そんなものを取り出すような素振りはない。それどころか、素手のまま穴の方に手を
出そうとしている。まさか、素手のまま穴に手を突っ込む気なのだろうか。中は見えなくて、何があるか分からない。画鋲などの針があるだけでも怪我をするし、ネズミがいたら噛みつかれてしまうかもしれない。止めるべきなのだろうかと悩んでいたが、そこまで危険なことはしなかった。むしろ、それは変な行動だった。
確証はないが、もしかしたら、この穴の中に盗品を隠しているかもしれない。
そう思い、愛先輩に伝えようと振り向くと、まだ机の下を調べていた。
「何か見つかったのか?」
私に期待していないのか、全く興味がなさそうだ。
愛先輩がとても素っ気ない態度なのは分かっているが、報告を怠るなんてことは高校生になったからにはやってはいけないことだ。
「ここに、この本棚の奥に、小さな穴があるんですけど、これってなにか関係が」
「なに!? 痛っ!」
私の報告を聞いた愛先輩は、立とうとして思いっきり机に頭をぶつけていた。そのせいで、爆発したように埃が舞った。
「ゴホッ……。やってしまった」
煙のように白く濁った場所から、愛先輩が出てきた。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫なものか」
右手で頭を押さえ、左手で口を覆った変な格好をしていた。笑ってしまいそうなほど、おかしな姿なのだが、それは失礼なので、必死に堪えた。
「それで、穴というのは?」
「あ、はい。ここなんですけど」
「どれどれ……」
私が指さした本棚の奥にある穴を愛先輩はのぞき込んだ。どうせ違うと言われ、使えないだの役立たずだの罵詈雑言を聞かされるのだろうと思っていたが、私の嫌な予想は外れてくれた。
「お手柄だ、秋葉さん。これは私も見落としていたかもしれない。上出来だよ。君を連れてきて正解だった」
口を覆うことも忘れて私の背中をバシバシと何度も叩いて褒めてくれた。
「お役に立てたのは、うれしいんですけど……」
「なんだ……」
こんなに何回も叩かれたら、口を覆っていた手がずれてしまう。それに加え、さっきの爆発のように舞った埃が霧散して、部屋の埃濃度が増してしまったこと。これらが重なれば、鼻の奥が疼くのは仕方ないことで……。
「「へくしゅん!」」
二人、ほぼ同時にくしゃみが出た。しかも、その反動でさらに埃が舞ってしまった。
「あまり、長居はしたくないな」
「そうですね」
口を覆うついでに鼻を摘んでいる愛先輩は辛そうだ。それは私も一緒で、早く外に出たい気持ちで満たされている。
「さあ、早く、用を済ませよう」
「そう、ですけど……」
私が発見した本棚の穴は、手が入るかどうかと言うほどの小さな穴だ。なにか特別な道具があるのだろうかと思っていたが、そんなものを取り出すような素振りはない。それどころか、素手のまま穴の方に手を
出そうとしている。まさか、素手のまま穴に手を突っ込む気なのだろうか。中は見えなくて、何があるか分からない。画鋲などの針があるだけでも怪我をするし、ネズミがいたら噛みつかれてしまうかもしれない。止めるべきなのだろうかと悩んでいたが、そこまで危険なことはしなかった。むしろ、それは変な行動だった。
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