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予知部と精霊探索
予知部と弱気な新入生 21
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「おや? 誰かと思えば、予知部の部長の……えぇっと、名前は何だっけ」
「愛仙七郎です。いい加減、覚えてくれませんかね」
「いやぁ、すまないね。仕事柄、人の名前を聞くのが多くてさ。覚えるのが大変なんだよ。本当に申し訳ないと思っているよ、予知部の部長さん」
部屋の中にいた一人の男子生徒と話している愛先輩は呆れた様子だ。おそらく、愛先輩は何度もこの人と会っているんだろう。それなのに、名前を覚えてくれないのだろう。愛仙なんて名前は珍しくて覚えやすいと思うのだが、この人には関係ないのかもしれない。
「それで、何の用かな。もしかして、何かネタになる話でも持ってきてくれたのかい?」
この男子生徒が求めているのは、話のネタのようだ。その理由は見れば分かる。
この社会科室は授業を行う場所だ。本来なら。
今、この教室では授業は行われていない。それは当たり前だ。もう授業は終わり、時間は放課後なのだから。では、ここで生徒たちは何を行っているのか。放課後に生徒が別の教室に集まる理由など決まっている。部活動だ。そして、この教室では、机を合わせ、そこに紙を乗せて何かを書き込んでいる。それだけでも答えは分かるのだが、私はもっと的確なものをみていた。昨日、どの部活にするか悩んでいたときに私は目にしたのだ。この社会科室を部室にしている部活を。それは新聞部だ。
「いいえ。新聞部に提供するようなネタはないし、新聞部から情報を聞き出すような依頼も来ていませんよ」
「それなら、談笑をしにきたのか? こっちは大歓迎だよ。予知部は宝の宝庫だからね」
「無駄話をするつもりはありませんよ。新聞部に用事があるわけじゃなくてね」
そう言って、愛先輩は入り口近くのフックに吊り下がった鍵を手にした。
「鍵? 流石に、この教室を貸すわけにはいかないんだけど。今は今週の新聞を作っている最中なんだ。新入生が始めてみる学校新聞だから気合いが入ってるんだ。だから、すまないね。譲れないんだ」
もし、この教室の中に精霊がいるのだとしたら、新聞部の人たちには、一度教室から出てもらう必要がある。でも、見るからに新聞部の人たちは忙しそうだ。理由もなく排除する事は出来ないだろう。だからといって、説明するわけにも行かない。愛先輩はどう言いくるめるのだろう。
そう考えていたが、結末はあっけなかった。
「いえ、用があるのは社会科室じゃなくて社会科準備室の方ですよ」
「そうか。それなら話は別だ。社会科準備室なら好きに使ってくれ。鍵さえ返してくれれば問題ない」
「ありがとうございます」
一礼して、教室を出ようとした。
「あ、ちょっと待ってくれ
新聞部の男子生徒がまだ用事があったようで引き留めてきた。
「なんですか?」
「物は持って行かないでくれよ。紛失物があったらこっちが怒られることになるからさ」
「分かってますよ」
最後の忠告を了承して、教室から出ていった。
「愛仙七郎です。いい加減、覚えてくれませんかね」
「いやぁ、すまないね。仕事柄、人の名前を聞くのが多くてさ。覚えるのが大変なんだよ。本当に申し訳ないと思っているよ、予知部の部長さん」
部屋の中にいた一人の男子生徒と話している愛先輩は呆れた様子だ。おそらく、愛先輩は何度もこの人と会っているんだろう。それなのに、名前を覚えてくれないのだろう。愛仙なんて名前は珍しくて覚えやすいと思うのだが、この人には関係ないのかもしれない。
「それで、何の用かな。もしかして、何かネタになる話でも持ってきてくれたのかい?」
この男子生徒が求めているのは、話のネタのようだ。その理由は見れば分かる。
この社会科室は授業を行う場所だ。本来なら。
今、この教室では授業は行われていない。それは当たり前だ。もう授業は終わり、時間は放課後なのだから。では、ここで生徒たちは何を行っているのか。放課後に生徒が別の教室に集まる理由など決まっている。部活動だ。そして、この教室では、机を合わせ、そこに紙を乗せて何かを書き込んでいる。それだけでも答えは分かるのだが、私はもっと的確なものをみていた。昨日、どの部活にするか悩んでいたときに私は目にしたのだ。この社会科室を部室にしている部活を。それは新聞部だ。
「いいえ。新聞部に提供するようなネタはないし、新聞部から情報を聞き出すような依頼も来ていませんよ」
「それなら、談笑をしにきたのか? こっちは大歓迎だよ。予知部は宝の宝庫だからね」
「無駄話をするつもりはありませんよ。新聞部に用事があるわけじゃなくてね」
そう言って、愛先輩は入り口近くのフックに吊り下がった鍵を手にした。
「鍵? 流石に、この教室を貸すわけにはいかないんだけど。今は今週の新聞を作っている最中なんだ。新入生が始めてみる学校新聞だから気合いが入ってるんだ。だから、すまないね。譲れないんだ」
もし、この教室の中に精霊がいるのだとしたら、新聞部の人たちには、一度教室から出てもらう必要がある。でも、見るからに新聞部の人たちは忙しそうだ。理由もなく排除する事は出来ないだろう。だからといって、説明するわけにも行かない。愛先輩はどう言いくるめるのだろう。
そう考えていたが、結末はあっけなかった。
「いえ、用があるのは社会科室じゃなくて社会科準備室の方ですよ」
「そうか。それなら話は別だ。社会科準備室なら好きに使ってくれ。鍵さえ返してくれれば問題ない」
「ありがとうございます」
一礼して、教室を出ようとした。
「あ、ちょっと待ってくれ
新聞部の男子生徒がまだ用事があったようで引き留めてきた。
「なんですか?」
「物は持って行かないでくれよ。紛失物があったらこっちが怒られることになるからさ」
「分かってますよ」
最後の忠告を了承して、教室から出ていった。
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