予知部と弱気な新入生

小森 輝

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予知部と茶色い猫

予知部と弱気な新入生 10

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「この学校で物がなくなる。その犯人と盗品の隠し場所の調査だったな」
「そうだ。報酬の前払いもしただろう」
「確かに受け取ったな。あの猫缶はなかなかに美味でな……」
 おいしかった猫缶の記憶を思い出しているのか、目を閉じ、尻尾をゆっくりと揺らしている。
 しかし、愛先輩はそんな妄想に付き合いたくはないようだ。
「話を逸らすな」
「まったく、いい気分だったところを……」
 揺れていた尻尾は地面に落ち、鋭い目が開いた。少々、ご機嫌斜めと言ったところか。
「まあ、いい。報酬に見合った仕事をするのが俺の信条ってやつだからな。せっかちなお前に分かったことを教えてやろう」
「もったいぶるな。早く言え」
「これだからガキは……」
 呆れたと言わんばかりに首を振り、ため息を付いてから話し始めた。
「物がなくなる。これが人間の悪戯でなければ、まず間違いなく精霊の仕業を疑うだろうな」
「そんなことは分かっている。それで、精霊の居場所と盗品の隠し場所は」
「そう急くな。話には順序って言う物があんだぞ」
 そう言われて、愛先輩は苛立つが、怒りを堪えて口を出さなかった。
「盗難は基本、この学校内で行われると聞いていた。ただ、この学校はネズミどもの縄張りでな……ネズミと俺たちは仲が悪くてな……」
 猫とネズミの仲が悪いのは自然の摂理だ。つまり、猫が言いたいことは、ネズミが邪魔で調査がが出来なかったという事だ。それが分かると、愛先輩は置いていた猫缶を取り上げた。
「お、おい! 何をする! それは俺の分だろ!」
「報酬分の仕事をするのが信条なんだろ。これはお前には不要なものだ」
「まだ話は終わってない。それを取り上げるのは、それを聞いてからでも遅くないだろ」
「いいだろう。話してみろ」
 こちらの方が立場が上なんだぞと思い知らせた愛先輩は、再び、猫の前に缶詰を置いて、話の続きを促した。
「ネズミからの話は聞けなかった。だが、奴らの仕業と言うわけではない。奴らは小さくて弱いが賢いからな。人間からかすめ取るなんてリスクが高い事はしない。だからこそ、精霊の仕業である可能性が一番高い」
「なら、ネズミが精霊を匿っている可能性があるのか」
「いいや、それはない。奴らは臆病だからな。同種以外とは群たりしない」
 あまり有用な報告がなく、愛先輩の顔が険しくなっていく。
「そうか……。特定は難しそうだな」
「難しいが、解決するなら早くしてくれ。ネズミたちに不穏な動きがあってな」
「不穏な動き? なんだそれは。悪さをしている精霊を退治でもしてくれるのか?」
「違う。奴らにそんな度胸はない。だからこそ、奴らは縄張りにしているこの学校を手放そうとしている」
「……最悪の展開だな」
 ネズミという害獣が居なくなることは良いことのはずなのだが、そうはいかないようだ
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