予知部と弱気な新入生

小森 輝

文字の大きさ
上 下
6 / 86
予知部と初めの依頼人

予知部と弱気な新入生 6

しおりを挟む
 午後の授業も終え、放課後がやってきた。
 今日は、私のところに春陽は来ていない。今日からバレー部の練習に参加するようなので、私のところに来る余裕はないようだ。私も、放課後は予知部という用事があるので春陽が来ても相手は出来ないのでちょうどいいのかもしれない。
 続々と教室から出ていく生徒に混じって、私も教室から出ていく。
 私はそこまで勉強を苦手としていないので大丈夫だが、春陽はとても疲れているだろう。それでもバレーをしに行くのだから、春陽の体力は恐るべきだ。私はと言うと、4階まで上がるだけで疲れていた。
「もう少し、体力つけなくちゃな」
 一度、息を整えてから、予知部の部室である図書準備室へと入った。
 中にはいると、相変わらずの古い本のかび臭い匂の中に先に来ていた部長の愛先輩と部員の泉ちゃんが椅子に座っていた。お互い、話すこともなく、本を読んでいるようだ。
「二人とも、早いですね」
 上級生の教室は上の階にあるので、愛先輩が早いのは分かるが、泉ちゃんの教室は、おそらく私より下の階にあるので、どこかで抜かれてしまったのだろう。私より小柄なのに、体力は私以上のようだ。
「早く出たつもりだったんだけど、泉ちゃんの方が早かったか」
「あぁ、うん。まあね」
 笑顔で答えてくれる泉ちゃんの隣に座った。早く来て私の分の椅子も準備してくれたのだろう。
 私が来たことで変化が起こることもなく、二人は本を読み続けている。図書室は隣にあるので、私も本を借りてきて読むべきなのだろうが、それは明日からするべきだ。今日は本を読む前にやるべき事がある。
 古い本が積まれたこの部屋の中は、時間が止まったみたいで静寂が似合うのだが、未来の私のためにも、勇気を出さなければならない。
「……あの!」
 と、その一言で、愛先輩は本を音を立てて閉じてしまった。怒らせてしまったのだろうかと不安になり、話そうとしていた先の言葉を引っ込めてしまった。
「予知部について、聞きたいのだろ? 私も説明を始めようと思っていたところだ」
 どうやら、怒っている訳ではないようだ。一安心してほっとしたていたら、愛先輩が説明を始めた。
「昨日も言った通り、予知部というのは、生徒の悩みを聞き、先の未来を予知して、解決する。そういった部活だ」
 昨日、聞いた話だ。悩みを聞くだけではなく解決するところまでを含めて予知部なのだろう。益々、私に勤まるのか不安になってきた。
「最終的に悩みを解決するのは私でも、そのためには情報が必要だ。君には情報集めを手伝って欲しいんだ。情報が多ければ多いだけ正確な未来が見えるからね」
「探偵の助手みたいな感じですか?」
「まあ、そうだな。情報集めだけじゃなくて、気づいたことがあったら何でも言ってくれ」
 とりあえず、一人で悩みを聞いて解決しなければならないと言うわけではなくて安心した。
「とりあえず、慣れてくるまでは私も一緒に行動するが、最終的には情報集めぐらいは一人でして貰うつもりだからそのつもりで」
「は、はい……」
 一人で知らない人と話さなければいけないのはハードルが高いが、いつかは克服しなければならない問題だ。
「あとは……。そうだ。部活での出来事は、あまり他の人には話さない方がいいな」
「それはもちろんです」
 人の悩みを聞くのだ。他の人に聞いた悩みを話すのはマナー違反と言うものだ。
「とりあえずは、そんなものかな。質問はまた後で。そろそろ時間だ」
「時間……?」
 何の時間なのかと首を傾げると、図書準備室のドアからコンコンと2回、ノックをする音が聞こえた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

妻がエロくて死にそうです

菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。 美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。 こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。 それは…… 限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常

みちのく銀山温泉

沖田弥子
キャラ文芸
高校生の花野優香は山形の銀山温泉へやってきた。親戚の営む温泉宿「花湯屋」でお手伝いをしながら地元の高校へ通うため。ところが駅に現れた圭史郎に花湯屋へ連れて行ってもらうと、子鬼たちを発見。花野家当主の直系である優香は、あやかし使いの末裔であると聞かされる。さらに若女将を任されて、神使の圭史郎と共に花湯屋であやかしのお客様を迎えることになった。高校生若女将があやかしたちと出会い、成長する物語。◆後半に優香が前の彼氏について語るエピソードがありますが、私の実体験を交えています。◆第2回キャラ文芸大賞にて、大賞を受賞いたしました。応援ありがとうございました! 2019年7月11日、書籍化されました。

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

庭木を切った隣人が刑事訴訟を恐れて小学生の娘を謝罪に来させたアホな実話

フルーツパフェ
大衆娯楽
祝!! 慰謝料30万円獲得記念の知人の体験談! 隣人宅の植木を許可なく切ることは紛れもない犯罪です。 30万円以下の罰金・過料、もしくは3年以下の懲役に処される可能性があります。 そうとは知らずに短気を起こして家の庭木を切った隣人(40代職業不詳・男)。 刑事訴訟になることを恐れた彼が取った行動は、まだ小学生の娘達を謝りに行かせることだった!? 子供ならば許してくれるとでも思ったのか。 「ごめんなさい、お尻ぺんぺんで許してくれますか?」 大人達の事情も知らず、健気に罪滅ぼしをしようとする少女を、あなたは許せるだろうか。 余りに情けない親子の末路を描く実話。 ※一部、演出を含んでいます。

可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~

蒼田
青春
 人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。  目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。  しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。  事故から助けることで始まる活発少女との関係。  愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。  愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。  故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。 *本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。

俺の幼馴染がエロ可愛すぎてヤバい。

ゆきゆめ
キャラ文芸
「お〇ん〇ん様、今日もお元気ですね♡」  俺・浅間紘(あさまひろ)の朝は幼馴染の藤咲雪(ふじさきゆき)が俺の朝〇ちしたムスコとお喋りをしているのを目撃することから始まる。  何を言っているか分からないと思うが安心してくれ。俺も全くもってわからない。  わかることと言えばただひとつ。  それは、俺の幼馴染は最高にエロ可愛いってこと。  毎日毎日、雪(ゆき)にあれやこれやと弄られまくるのは疲れるけれど、なんやかんや楽しくもあって。  そしてやっぱり思うことは、俺の幼馴染は最高にエロ可愛いということ。  これはたぶん、ツッコミ待ちで弄りたがりやの幼馴染と、そんな彼女に振り回されまくりでツッコミまくりな俺の、青春やラブがあったりなかったりもする感じの日常コメディだ。(ツッコミはえっちな言葉ではないです)

処理中です...