69 / 75
69
しおりを挟む
「言ったであろう。まずは誉めてやろうと。よくぞ、ここまで来た。そう警戒するな。私に攻撃する気はもうない」
「お前がそうでも、私にはあるんだよ!」
あの巨体からは考えられないスピードで距離を詰め、拳を叩き込んだのだが、当然のようにレイは受け止めた。
「分からん奴じゃのう。先の打ち込みで勝てぬと悟れぬか。ならば、仕方あるまい」
そう言って、レイが何かしたのだろう。巨人は突然、足をぐらつかせ、片膝をついた。
「うぐっ……この程度……」
「耐えるか。良い良い。では、もう少し力を入れてやろう」
そう言うと、巨人は苦悶の声を漏らしながら体を捩り、地面に伏した。体が小さいレイが自身より何倍も大きい相手を屈服させたのだ。
その様子を見て、サーマッジさんとリターロさんは決死の攻撃を決意している様子だ。それにレイも気づいている。
「止さぬか。お主等を殺す気もなければ攻撃する気もない。少しは話を聞かぬか。それとも、無益な戦いをして命を散らしたいか? お主等だって生きたいじゃろ? な?」
レイの言葉に反応したのは、下で倒れている巨人の方だった。
「手を出すな。お前たちまで死ぬ必要はない。このまま引け」
「いや、お主も殺す気はないし、このまま逃がす気もないぞ」
それは嘘偽りのないレイの言葉だ。それだけ、言葉に重みがあった。
「まあよい。お主等には頼みたいことがあってな。このダンジョンを攻略してほしいんじゃ。お主等は私がこのダンジョンのボスだと思うておるじゃろうが、真実はそうではない。このダンジョンのボスは奥底に潜んでおる。其奴を倒してほしいのじゃ」
「なぜ、そんなことを……」
「私はこのダンジョンに捕らわれておる。それは本意ではない。お主等とて、ここにダンジョンがあるのは本意ではなかろう。じゃから、このダンジョンを壊してほしいのじゃ。そのために、お主等にはこのダンジョンに奥底に潜むボスを討伐してほしい。それだけじゃ。双方、利点はあるはずじゃろ?」
「なら、自分でやればいいじゃないかい。お前より弱い私らになぜ頼む」
「じゃから、言うたじゃろ。私はここに捕らわれておる。動けぬのじゃ。じゃから、お主等に頼んでおるのじゃろ。もちろん、罠ではないぞ? 殺すなら今すぐにでもお主等を殺しておる」
そんなことを言われるが、当然、魔物の頼みを聞く冒険者などいはしない。
「まあ、お主等に拒否権はないんじゃがな。これからお主等をダンジョンの入り口まで戻す。このダンジョンをどうにかしたいんじゃったら、ボスを探すことじゃな。まあ、お主等ほどの力があれば可能じゃろ」
どうやら、レイが要求していることはそれほど難しいことではないようだ。
「しかしじゃ、お主等はそのまま逃げるかもしれん。じゃから、人質を貰おうと思う。もちろん、誰かは分かるな、ジン」
そう言えば、レイは俺に執着していた。あまりの強さに、それをうっかり忘れていた。
「助けたたくば、急いでボスを倒すことじゃ。良いな」
レイは返答を聞くことなく、指を鳴らした。すると、レイの目の前にいた巨人は消え、そして、俺の周りにいた仲間たちも消えてしまった。やはり、レイが要求した人質は俺だったようだ。
「お前がそうでも、私にはあるんだよ!」
あの巨体からは考えられないスピードで距離を詰め、拳を叩き込んだのだが、当然のようにレイは受け止めた。
「分からん奴じゃのう。先の打ち込みで勝てぬと悟れぬか。ならば、仕方あるまい」
そう言って、レイが何かしたのだろう。巨人は突然、足をぐらつかせ、片膝をついた。
「うぐっ……この程度……」
「耐えるか。良い良い。では、もう少し力を入れてやろう」
そう言うと、巨人は苦悶の声を漏らしながら体を捩り、地面に伏した。体が小さいレイが自身より何倍も大きい相手を屈服させたのだ。
その様子を見て、サーマッジさんとリターロさんは決死の攻撃を決意している様子だ。それにレイも気づいている。
「止さぬか。お主等を殺す気もなければ攻撃する気もない。少しは話を聞かぬか。それとも、無益な戦いをして命を散らしたいか? お主等だって生きたいじゃろ? な?」
レイの言葉に反応したのは、下で倒れている巨人の方だった。
「手を出すな。お前たちまで死ぬ必要はない。このまま引け」
「いや、お主も殺す気はないし、このまま逃がす気もないぞ」
それは嘘偽りのないレイの言葉だ。それだけ、言葉に重みがあった。
「まあよい。お主等には頼みたいことがあってな。このダンジョンを攻略してほしいんじゃ。お主等は私がこのダンジョンのボスだと思うておるじゃろうが、真実はそうではない。このダンジョンのボスは奥底に潜んでおる。其奴を倒してほしいのじゃ」
「なぜ、そんなことを……」
「私はこのダンジョンに捕らわれておる。それは本意ではない。お主等とて、ここにダンジョンがあるのは本意ではなかろう。じゃから、このダンジョンを壊してほしいのじゃ。そのために、お主等にはこのダンジョンに奥底に潜むボスを討伐してほしい。それだけじゃ。双方、利点はあるはずじゃろ?」
「なら、自分でやればいいじゃないかい。お前より弱い私らになぜ頼む」
「じゃから、言うたじゃろ。私はここに捕らわれておる。動けぬのじゃ。じゃから、お主等に頼んでおるのじゃろ。もちろん、罠ではないぞ? 殺すなら今すぐにでもお主等を殺しておる」
そんなことを言われるが、当然、魔物の頼みを聞く冒険者などいはしない。
「まあ、お主等に拒否権はないんじゃがな。これからお主等をダンジョンの入り口まで戻す。このダンジョンをどうにかしたいんじゃったら、ボスを探すことじゃな。まあ、お主等ほどの力があれば可能じゃろ」
どうやら、レイが要求していることはそれほど難しいことではないようだ。
「しかしじゃ、お主等はそのまま逃げるかもしれん。じゃから、人質を貰おうと思う。もちろん、誰かは分かるな、ジン」
そう言えば、レイは俺に執着していた。あまりの強さに、それをうっかり忘れていた。
「助けたたくば、急いでボスを倒すことじゃ。良いな」
レイは返答を聞くことなく、指を鳴らした。すると、レイの目の前にいた巨人は消え、そして、俺の周りにいた仲間たちも消えてしまった。やはり、レイが要求した人質は俺だったようだ。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
落第組の呪いの子~ぼっちが転生した先は、転生者が処刑される世界だった。呪われた魔素の力で、魔法学園で成り上がる~
いとうヒンジ
ファンタジー
レグ・ラスターは、転生者が処刑される世界に「呪いの子」として転生してしまった。彼はその強大すぎる呪いの魔素の所為で、三年後に命を落としてしまうという。
呪われた運命を変える唯一の方法は、魔法学園ソロモンで優秀な成績を収め、学長に認めてもらうことだった。
彼が入学したクラスは、落ちこぼれが集まる通称落第組。レグは自分が転生者だとバレないよう、学園生活を送ることとなる。
そこで出会った、魔法が使えない落第魔女――エルマ・フィール。彼女は転生前の自分同様、他人と関わろうとしない「ぼっち」だった。
エルマの自信を持った生き様に、レグは次第に惹かれていく。
ぼっちだった自分を変えるため、呪われた運命に抗うため――そして何より、エルマを助けるため。
レグ・ラスターは、呪いの力で成り上がる。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!
柊
ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」
ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。
「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」
そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。
(やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。
※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。
悪役令嬢にざまぁされた王子のその後
柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。
その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。
そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。
マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。
人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。
悪役令嬢?いま忙しいので後でやります
みおな
恋愛
転生したその世界は、かつて自分がゲームクリエーターとして作成した乙女ゲームの世界だった!
しかも、すべての愛を詰め込んだヒロインではなく、悪役令嬢?
私はヒロイン推しなんです。悪役令嬢?忙しいので、後にしてください。
悪役令嬢を陥れようとして失敗したヒロインのその後
柚木崎 史乃
ファンタジー
女伯グリゼルダはもう不惑の歳だが、過去に起こしたスキャンダルが原因で異性から敬遠され未だに独身だった。
二十二年前、グリゼルダは恋仲になった王太子と結託して彼の婚約者である公爵令嬢を陥れようとした。
けれど、返り討ちに遭ってしまい、結局恋人である王太子とも破局してしまったのだ。
ある時、グリゼルダは王都で開かれた仮面舞踏会に参加する。そこで、トラヴィスという年下の青年と知り合ったグリゼルダは彼と恋仲になった。そして、どんどん彼に夢中になっていく。
だが、ある日。トラヴィスは、突然グリゼルダの前から姿を消してしまう。グリゼルダはショックのあまり倒れてしまい、気づいた時には病院のベッドの上にいた。
グリゼルダは、心配そうに自分の顔を覗き込む執事にトラヴィスと連絡が取れなくなってしまったことを伝える。すると、執事は首を傾げた。
そして、困惑した様子でグリゼルダに尋ねたのだ。「トラヴィスって、一体誰ですか? そんな方、この世に存在しませんよね?」と──。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる