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3章 唐突な旅立ち
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見学にぐらいなら行ってもいいかなと思っていた私ですが、1日という時間が経つとその意気込みも薄れてしまいます。
「やっぱりやめておこうかな……」
約束の放課後になったというのに、私は机にへばりついていました。
「いつまでそうやってるつもり? 今日、見学しに行くんでしょ? 放課後になったら早く来るように言われてるんでしょ?」
「そうなんだけど……。やっぱり、今更部活に入るっていうのは気が引けて……」
「またそんなこと言って……。いいじゃない。イケメンに誘われて、一緒に部活でしょ? これぞ青春って感じじゃない」
「そうかもしれないけど……」
顔もよくて頭もいい。でも、身長が……。
呼び出されて告白されると思っていた時は身長が低くてもいいかもしれないとさえ思っていましたが、部活動への興味と共に消えてしまっていました。恋とは儚いと言いますが、夢から覚めたような気分です。今は未練すらありません。部活の見学に行かずに帰ってしまえば、もう完璧です。
「帰ろうかな……」
「えぇー。もったいない。出会いは一期一会だよ?」
「どうでもいいよ。どうせクラスも違うんだし。一期一会とかよく分からないし」
やっぱり見学になんて行かないで家に帰ろうと思い立ち上がったのですが、残念ながら帰路に就くことはできませんでした。
「おっ! いたいた。すれ違いにならないように早く来てみてよかった」
教室の入り口で私が帰るのを止めたのは、部活に勧誘してきた彦君というあの男子生徒でした。
「ほらっ! 迎えにまで来てくれてるんだよ? もしかして、脈ありなんじゃないの?」
「いや、全然そういうのじゃないから」
今や少しからかわれたとしても全く動揺しません。
しかし、これで私はもう部活の見学をせずに帰ることができなくなりました。
「ほら、早く行ってきなよ」
久遠が私の後押しをするように背中を押してきました。流石は運動部。ただの後押しだというのに、押す力が強いです。勢いのあまり転けてしまいそうでしたが、誰かが私を支えてくれたおかげで事なきを得ました。
「大丈夫? 足、ひねってない?」
「う、うん。大丈夫」
教室の中から微量ながら歓声が沸きますが、それが大きくなるまえにすぐさま教室を離れたいです。
1日経過して私の心は静まっていたのですが、再び水面が揺らめきはじめたのが分かります。自分がこんな些細な接触で揺れ動かされるようなチョロい女だとは思いませんでした。
ただ、ときめきを感じているのは私だけで、彦君にはそんな様子はありません。
「そっか。なら、早く部室に行こう。放課後の貴重な時間を無駄には出来ないからね」
そう言って、彦君は私の手を握り、そのまま歩き出しました。
イケメンというだけあって、女慣れしているのでしょうか。
ただ、一つだけ言えることは、私に拒否権と言う物が存在しないということでしょう。
「やっぱりやめておこうかな……」
約束の放課後になったというのに、私は机にへばりついていました。
「いつまでそうやってるつもり? 今日、見学しに行くんでしょ? 放課後になったら早く来るように言われてるんでしょ?」
「そうなんだけど……。やっぱり、今更部活に入るっていうのは気が引けて……」
「またそんなこと言って……。いいじゃない。イケメンに誘われて、一緒に部活でしょ? これぞ青春って感じじゃない」
「そうかもしれないけど……」
顔もよくて頭もいい。でも、身長が……。
呼び出されて告白されると思っていた時は身長が低くてもいいかもしれないとさえ思っていましたが、部活動への興味と共に消えてしまっていました。恋とは儚いと言いますが、夢から覚めたような気分です。今は未練すらありません。部活の見学に行かずに帰ってしまえば、もう完璧です。
「帰ろうかな……」
「えぇー。もったいない。出会いは一期一会だよ?」
「どうでもいいよ。どうせクラスも違うんだし。一期一会とかよく分からないし」
やっぱり見学になんて行かないで家に帰ろうと思い立ち上がったのですが、残念ながら帰路に就くことはできませんでした。
「おっ! いたいた。すれ違いにならないように早く来てみてよかった」
教室の入り口で私が帰るのを止めたのは、部活に勧誘してきた彦君というあの男子生徒でした。
「ほらっ! 迎えにまで来てくれてるんだよ? もしかして、脈ありなんじゃないの?」
「いや、全然そういうのじゃないから」
今や少しからかわれたとしても全く動揺しません。
しかし、これで私はもう部活の見学をせずに帰ることができなくなりました。
「ほら、早く行ってきなよ」
久遠が私の後押しをするように背中を押してきました。流石は運動部。ただの後押しだというのに、押す力が強いです。勢いのあまり転けてしまいそうでしたが、誰かが私を支えてくれたおかげで事なきを得ました。
「大丈夫? 足、ひねってない?」
「う、うん。大丈夫」
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「そっか。なら、早く部室に行こう。放課後の貴重な時間を無駄には出来ないからね」
そう言って、彦君は私の手を握り、そのまま歩き出しました。
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ただ、一つだけ言えることは、私に拒否権と言う物が存在しないということでしょう。
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