オートマーズ

小森 輝

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2章 聞きなれない部活

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「ハガネさん! 誰か来てるみたいだよ!」
 教室の入り口から一番近い席の人が声を上げて呼びました。ちなみに、ハガネというのは私のことです。
「まだお弁当食べてるのに……誰だろ」
 他のクラスの人たちとの交友もそれなりにあるので誰かが訪ねてくるのはよくあることです。しかし、お昼休みが始まってすぐに誰かが来るのは珍しいことです。部活動の仲間もいませんし、いつもお弁当なので学食に誘われることもありません。何か用事があってもお昼休み中盤から終盤なのですが……。
「ねえねえ、ハガネさんを呼んでるのって、もしかして男子じゃない?」
「えっ! ほんと? どこどこ」
「ほら、あれでしょ? もしかして、彼氏?」
「ええっ! ヒーロー、彼氏いるの! つまらないつまらないって言ってる割にちゃんと青春してるじゃん! 私が部活でせっせとトレーニングしている間に青春してただなんて……顔だけはいいんだから。いいなぁ……彼氏かぁ……私も欲しいな……」
 ちょうど困っていたので、いい助け船になったと思ったのですが、どうやらもっと別の問題が私に降りかかってきたようです。
「からかわないでよね。まったく。彼氏がいたならとっくに自慢してるっての」
 部活もしていません。学力もよくありません。そんな私が久遠に勝とうと思ったら、もう彼氏の一人や二人を作って青春を自慢するしかありません。ただ、中学生でも彼氏ができなかった私に高校生になったからといって彼氏ができるわけではありません。
 とは言っても、男友達がいないわけではありません。同じクラスの男子はもちろん、他のクラスでも同学年の男子とは何人かとお友達になっています。その中の誰かなのでしょうが、いったい誰なのでしょうか。
「じゃあじゃあ、彼氏じゃなくても告白だったりして!」
「もう……あんまり茶化さないでよね」
 告白なら、それはそれで嬉しいのですが、公開告白というのは恥ずかしいものがあります。それに彼氏が欲しいといっても誰でもいいわけではありません。私にだって選ぶ権利というものがあるはずです。できれば、イケメンで、背が高くて、私の勉強も見てくれて、野球かサッカーかバスケ部のエース的な人ならいいのですが……。
「ハガネさん? 早くしなよ! 待ってるみたいだよ」
「す、すぐ行く!」
 誰かなんて、今はどうだっていいのです。待たせてしまう方が申し訳ないですから。
 慌ててお弁当に蓋をして向かいます。
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