オートマーズ

小森 輝

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1章 運命の出会い……?

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 様々な楽器が好き勝手に重なり合う吹奏楽部の演奏を聞きながら廊下を歩き、昇降口で靴へと履き替え外へと出ると、運動部が声を張り上げて気合いを入れてしました。
 毎日毎日、飽きもせず、運動部が学校の周りを走っています。様々なユニフォームで走っていますが、残念ながらスポーツに全く興味がない私には、それが全員陸上部にしか見えません。こういう興味のなさが私を帰宅部にしたのかもしれません。つまり、私が帰宅部になったのは、もはや必然なのです。仕方のないことなのです。
 一人で寂しく帰っているのは私が悪いわけではないのだと自分に言い聞かせながら、帰りの道を歩いていきました。
 桜井高校は駅からかなり離れているので、登下校だけでもかなりの運動量になります。運動部でもないのに世知辛い世の中です。日本は世界的に見ても技術力はトップレベルだと聞いてはいるのですが、学生の登下校が未だに電車から徒歩か自転車かという状況なのに技術力があるだなんて、私には到底信じられません。
 そんな日本に対する行き場のない愚痴を考えているのは、寂しさを紛らわせる為でもあります。
 長い長い学校から駅までの道程。一人はやっぱり寂しいです。でも、勘違いはしないでください。帰り道が一人なのは友達がいないわけではありません。むしろ多い方です。久遠とはもちろんですが、他のクラスメイトとも男女問わず仲良しです。ついでに言うと、お隣のクラスとも仲良しさんはいますし、社交性は高い方だと自負しています。
 そんな私が帰り道で独りぼっちなのは、私が帰宅部なのもありますが、それ以上に徒歩通学と言うのが大きいでしょう。
 この桜井高校、駅から遠いです。それなのにバスなんかは出ていません。だから、駅まで自転車という生徒がたくさんいます。今も私と同じく帰宅部の人が、自転車に乗って颯爽と追い越していきます。
「こんなことなら、自転車、買ってもらうんだった……」
 私はと言うと、兄が同じ桜井高校の卒業生でバスケ部だったのに徒歩通学だったこともあり、帰宅部の私は自転車を諦めるしかありませんでした。おのれ兄貴め。こうなったら、単位を落とす呪いをかけるしかありません。
 そんな悪意に満ちた計画を立てていると、通学路の先から明らかに空気が読めていない男子生徒がやってきました。
「……忘れ物かな?」
 その生徒は、下校の波に逆らって学校の方向へと自転車を漕いでいます。駅へと向かう自転車の群は、それはそれは迷惑そうです。
 そんな悪目立ちをしている生徒を眺めていると、どうやら私と同じ1年生だということが分かりました。ヘルメットが学校指定の物なので、装飾されているラインの色で学年が分かります。おそらく、クラスと名前もヘルメットに記載されているのでしょうが、流石に肉眼で確認できる距離ではありません。
 しかし、同じ学年だと分かると、少し情けなく思います。入学してすぐに行われた勉強合宿という名の集団訓練のことを忘れてしまったのでしょうか。今の彼からは協調性なんて微塵も感じられません。
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