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4 妖精の宝物庫

アルスター 38

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「どうした? 防御だけじゃ勝てないぞ!」
 剣戟の途中で前蹴りをされ、後ろへと数歩よろめいた。
 間合いが取れたことで攻撃も止まった。語りかけるなら今しかない。
「なんで僕たちが戦わなくちゃいけないんだよ、ベスにぃ!」
 僕の問いにベスにぃはすぐに答えてくれた。
「そりゃあ、ここにお前がいるからだろ」
 錯乱しているのだろうか。それとも魔法で操られているのか。でも、魔力は感じられないとメリルは言っていた。なら、脅されているのか。大事ななにかを人質にされて……。弟の僕よりも大事なものってなんなんだ。
 なにもかも分からなくて逆にこちらが錯乱してしまいそうだ。
「俺は雇われて、今はここの門番をしているんだ。だから、ここに許可なく入ろうとするやつは、弟だろうと容赦はしない」
「ここの門番……?」
 ここの門番をしていたから村に帰って来れなかった? でも、メリルはベルにぃのことを知らなかった。つまり、ベルにぃが門番として雇われたのは現妖精王になってから。それは3年前などではなく、つい最近の出来事。じゃあ、ベルにぃは何で帰って来なかったのか。
 分からない。何もかもが分からない。
「ベルにぃ! 分からないよ! 説明して!」
「そうか。じゃあ、説明してやるよ」
 そう言うと、ベルにぃの姿が消えた。違う。僕の視界から一瞬にして居なくなっただけ。
「アルスター! 右!」
 動揺しているうちに、もう右から僕の懐に入り込んできていた。
「俺はお前の敵だってことだよ!」
 ベルにぃの剣が振り下ろされる。ダメだ。左の盾じゃ間に合わない。でも、右の剣なら……。
 咄嗟の判断で、ベルにぃの剣を今まで使ってこなかった右の剣で迎撃した。
 ベルにぃの必殺の一閃に、僕の拙い剣筋が重なり合う。
 誰が見ても勝敗は明らか。僕の剣は押し切られ、ベルにぃの刃が僕の首を切り裂く。
 そうなるはずだったのだが、剣が重なり合うと同時に僕の剣が輝きを放ち、爆発のように両者を吹き飛ばした。
「アルスター、大丈夫?」
「う、うん。大丈夫。それより、今のは……」
「宝剣の力よ。あなたの意志に答えてくれたの」
 宝剣の力。
 あんな誰が見ても負けのような状態をひっくり返すことが出来るなんて……。
 でも、そんな有利があったのに、僕の頬からは血が垂れている。
「流石、宝剣。武器能力の差がここまでだなんてな」
 次も同じことをされても、さっきと同じように宝剣の力が都合よく働いてくれるか分からない。
 現状は不利。
 そう思っていたが、どうやらそうでもないらしい。
「まさか、俺の剣を粉々にするなんてな」
 ベルにぃが持っている剣は柄だけで、刀身はどこかに消えていた。
「ここでお前を殺しておきたかったが、武器がないなら仕方がない。門番の仕事は終わりにして帰るとするよ」
「帰るって、どこにだよ」
「そりゃあ、あの村以外のどこかにだよ」
 そう言って逃げようとしたベルにぃだが、それをメリルが呼び止めた。
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