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4 妖精の宝物庫

アルスター 37

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「え? お兄さん? 本当に?」
「うん……間違いない。魔法か何かで幻覚を見せられている、というわけじゃないんだよね?」
「そんな魔力は感じられないは。本物の人間で間違いなさそう。それより、本当にお兄さんなの? 3年ぶりって言ってるけど……」
「うん……僕をアル坊なんて呼ぶのはベスにぃぐらいだから……」
 それに、あの頼れる兄貴のオーラは間違いなくベスにぃだ。
 でも、ずっと帰ってこずに失踪していたベスにぃが、なんでこんなところに? 偶然? こんなエルフの国の宝物庫で偶然出会うものなのか?
「貧しく育ったお前が、今や妖精女王とお喋りできる身分になったとはね」
「そう言うわけじゃ……」
 あの村でベスにぃと暮らした日々を忘れたりなんかしない。
「アルスター、気をつけなさい。あなたのお兄さん、得体が知れないわ」
 そう言うメリルは敵意を剥き出しにしていた。
「ベスにぃは悪い人じゃないよ。人一倍正義感が強かったし、困っていたらいつだって助けてくれた。もしかしたら、ここに迷い込んで出られなくなったのかも知れない」
 多分そうだ。この城は道が入り組んでいて方向感覚が狂うし、さらに時空を歪めて本来の道をねじ曲げてしまうのだから、誰だって迷ってしまうのは当然だ。
「仮に迷い込んでいたとしても、何で私のことを知っているの? そもそも、彼にはあなたが一人でいるようにしか見えない。この宝石になった私を妖精女王だと見抜く以前に私の存在を知るすべが彼にはないの」
 確かに、メリルの言うとおりだ。ベスにぃには、僕が独り言を言っているようにしか見えていなかったはず。じゃあ、ベスにぃがここにいる意味は……。
「アル坊、状況は理解できたか? それじゃあ、いくぜ!」
 ベスにぃが腰に帯刀している剣を引き抜き、襲いかかってきた。
「ベスにぃ! なんで……」
 おとなしく斬られるわけにはいかないので、慌てて盾を展開し、ベスにぃの剣を受け止め、空いた右手にエルフの宝剣を掴んだ。
 それを見たベスにぃは、すかさず距離を取った。
「いいもの持ってるじゃないか。エルフの宝剣に、その盾は……イージス、ドワーフ王の代物か。まさかこんなに早く二人の王が邂逅しているなんてな。これが運命の導きってやつなのかね」
 しまった。もし本当にベスにぃが敵なら盾は出さない方がよかった。これで妖精女王とドワーフ王が一緒にいることがバレてしまった。幸い、人類王も一緒だと言うことはバレていない。
「いいや、アル坊。盾を見せたことは悔いることじゃない。剣一本じゃ俺には勝てない。小さい頃からそうだったろ?」
 ベスにぃの猛攻に防戦一方。ドワーフ王の盾があるから防御には困らないが、それもいつまで続くか分からない。
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