上 下
22 / 55
3 妖精の賢者

アルスター 22

しおりを挟む
「なるほど……その地上の種族に知恵を与えた存在であれば分かるかもしれないと言うことじゃな」
「それも理由の一つでありますが、もう一つ別の理由がありましてですな。それが龍種は古代の技術、ロストテクノロジーを扱うというはなしでして、それが我が妹の身の上に関係しているのではないかと、小生の考えでして。生物を鉱物に変換するなど、何の利点もない技術。これは呪術が関係しているのではないのかと思うのですが、そのような技術を龍種が未だに保有しているのかが問題でして……」
「問題はそれだけじゃない気がするのじゃが……。どうやって空に浮かぶ大陸に行くんじゃ。過去、誰かが龍の巣へ向かい帰ってきたという話は聞いておらんぞ。そんな場所にどうやって行くんじゃ」
「し、しまったでござるよ。妹が可愛いあまり、解決方法にばかり思考を向けてしまいもうした。小生としたことが、なんたる不覚!」
 メリルの姿がどうにかなるかもしれない可能性は分かったのだが、空に浮かぶ島へ行くのは現実的ではない。人が空を飛ぶなんて、夢物語だ。
「それなんだが……少し俺に心当たりがあってな……」
 そう言ったのは、ドワーフ王だった。
「俺が王の頃にやっていたことの一つでな……。俺たちの領土の上にのさばっているドラゴンどもをどうにかしようと空飛ぶ船、飛行船を作っていたんだ」
「流石! 龍の巣に気づいたドワーフ王殿は先見の明がありますな! では、それで飛び立てばよろしい」
「あぁ、それがな……船は造ったんだが、肝心の動力がなくてな……」
「つまり、動かないと言うことですかな? それでは張りぼてですぞ」
 ドワーフ王はベリルさんに素早い手のひら替えしをされていた。
「どうにか動力源があればいいんだが……。そうだ。妖精女王、さっき荷馬車を動かしていたように飛行船も動かしてくれないか?」
「流石に無理よ。人一人でも上空に飛ばすのはきびしいのに、船なんて飛ばせるわけないでしょ」
 人が空を飛ぶなんて夢物語だと思っていたが、メリルの魔法を使えば、人一人ぐらいは飛ばせるのか。
「動力源……確か、エルフの宝珠、黄金の果実が精霊脈と通じて無限に近い魔力を供給できるという噂を小生、耳にしたことが……」
「本当か!? それを動力源にしたら動くかもしれないな……。妖精女王、あの剣みたく、その果実とやらを出してくれ」
「そうできればよかったんだけど……あれは常に魔力を放っているから……」
 剣のように出し入れは出来ないようだ。つまり……。
「これは宝物庫まで取りに行く必要があるようですな」
 解決方法の一つが分かったのだが、簡単には進めてくれないようだ。
 宝物庫と言えば、王城の中にあるのだろう。そこには王位を奪おうとしてメリルを狙っているエルフもいるだろう。メリルという鍵がいても盗人を全うするのは簡単なことではない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

食うために軍人になりました。

KBT
ファンタジー
 ヴァランタイン帝国の片田舎ダウスター領に最下階位の平民の次男として生まれたリクト。  しかし、両親は悩んだ。次男であるリクトには成人しても継ぐ土地がない。  このままではこの子の未来は暗いものになってしまうだろう。  そう思った両親は幼少の頃よりリクトにを鍛え上げる事にした。  父は家の蔵にあったボロボロの指南書を元に剣術を、母は露店に売っていた怪しげな魔導書を元に魔法を教えた。    それから10年の時が経ち、リクトは成人となる15歳を迎えた。  両親の危惧した通り、継ぐ土地のないリクトは食い扶持を稼ぐために、地元の領軍に入隊試験を受けると、両親譲りの剣術と魔法のおかげで最下階級の二等兵として無事に入隊する事ができた。  軍と言っても、のどかな田舎の軍。  リクトは退役するまで地元でのんびり過ごそうと考えていたが、入隊2日目の朝に隣領との戦争が勃発してしまう。  おまけに上官から剣の腕を妬まれて、単独任務を任されてしまった。  その任務の最中、リクトは平民に対する貴族の専横を目の当たりにする。  生まれながらの体制に甘える貴族社会に嫌気が差したリクトは軍人として出世して貴族の専横に対抗する力を得ようと立身出世の道を歩むのだった。    剣と魔法のファンタジー世界で軍人という異色作品をお楽しみください。

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

おっさんの神器はハズレではない

兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。

傘使いの過ごす日々

あたりめ
ファンタジー
ある意味幸運なことに主人公は落雷で死んでしまった それを無様に思った神様が転生させてくれるようでスキルってのもつけてくれるようで。 スキル<傘使い>ってなんだ? スキル<傘使い>は実は凄かったりラノベ知識0の主人公が異世界で過ごすお話。 完結しました。

処理中です...