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2 元三王協定

アルスター 12

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 階段を上がり、広間に出ると、やはり数人の男が待ちかまえていた。
「ドワーフ王! なんで堂々と歩いているんじゃ! それではバレバレではないか!」
「人類王こそ、なんでそんなこそこそしているんだ? 王としての威厳はないのか?」
「元で、しかも牢屋に入れられた後に威厳なんてあるわけがないだろ。そんなプライドより見つからないように……」
 人類王は体を低くして隠れようとしていたのだが、堂々と出てきたドワーフ王に全て台無しにされていた。おかげで、広間にいる男全員が武器を構えている。いよいよ戦闘は避けられない。
「よぉし。牢屋暮らしで、ちょうど体が鈍っていたんだ。人暴れして正面から脱出といこうじゃないか」
「全く、ドワーフは……手先は起用なのに頭は固いんじゃから……」
 人類王も戦闘を覚悟したようだ。僕も3人の王の足を引っ張らないようにしなければならない。震えそうな手に力を入れて剣を握った。
 人類王は一人ずつ確実に倒していき、ドワーフ王は豪快に剣を振り回し敵を圧倒していた。王といっても、二人ともかなり強い。僕の出る幕なんてないように思えるほど。
 でも、それは思えると言うだけで、この敵の数を相手にすると、僕の方にも相手は回ってくる。
 数人、おそらく4名が襲いかかってきた。
「アルスター! 来るわよ」
 メリルの声と同時に、4人の男が剣を振り下ろしてきた。
 左手の人差し指に力を入れると同時に、ドワーフ王から貰った指輪が盾へと形を変える。この盾で4人の剣を受け止めると、難なく押し返せた。
「す、すごい、この盾……」
 王様が持っていた盾なのだからすごいということぐらいは分かっていた。だけど、ここまでとは思わなかった。
「ちょっと、盾だけじゃなくて私の剣も褒めなさいよ」
「つ、使いやすいよ」
「そう言う割には使ってないじゃない」
 メリルの言うとおり、僕はまだ剣を使っていない。
「早くそんな奴ら切り倒しなさいよ」
「わ、分かっているって」
 分かっているんだけど、なかなか覚悟が決まらない。人間を殺すという覚悟が……。
「後ろから来ているわよ!」
「なっ!?」
 反応が遅れてしまった。ダメだ。斬られてしまう。
「エアリアル・ウォール!」
 メリルが叫ぶと同時に、後ろから襲いかかってきた敵の目の前に風が舞い上がり、敵を吹き飛ばした。
「すごい……真後ろなのに……」
 完全に死角からの攻撃だった。それに、メリルは首から下げているから、僕の後ろなんて見えないはずだ。
「感知魔法よ。私に近づく者は全て感知できる」
 初めて会った時もその感知魔法のおかげで草むらからでも僕のことを見つけることができたのだろう。
「それより、吹き飛ばして倒れている今がチャンスよ」
 そう言われるが、人を殺すのは……。
 そう躊躇していると、起きあがろうとしていた敵をドワーフ王が剣で殴りつけた。
「一応、衣服を奪うんだから、斬ったら意味ないだろ。剣の腹で殴りつけるんだよ」
「そ、そうですね!」
 剣の腹でなら殺すこともない。それなら気負わずにすむ。
「以外と甘いのね」
 メリルが呆れたように呟いていたが、どこか嬉しそうだった。
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