私が忘れたラブゲーム

小森 輝

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私が忘れたラブゲーム 1

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 目を覚ますと、そこは見知らぬ白い天井でした。
「どこ…………?」
 体を動かそうとして、痛みに気づきます。
「あれ……なにこれ……」
 痛みのある右腕を見ると、そこから管が繋がっていた。これは点滴というやつだ。そして、その横には、何かの機械が一定の音を鳴らしている。
 そんな空間に看護師の人が入ってきた。
「意識が……。先生呼んでくるから、そのままにしててね」
 入ってくるなり、すぐに出て行った。
 そのままと言われたが、その心配はしなくてもいい。
 だって、動けないんだから。足も腕も腰も首も頭も。体中が痛い。
 でも、私はどうして、病院なんかにいるんだ。事故に遭った記憶もない。ただ、私は学校で授業を受けていたはずなんだ。それなのに、何が……。
 思案している内に、白衣を着たおそらく医者の先生が来てくれたみたいだ。
「落ち着いて聞いてください。ここは病院です。ご自身の名前は分かりますか?」
「……名前?」
 それが落ち着いて聞かなければならないことなのだろうか。
「私の名前は……葉山茜です」
 医者は満足そうな顔で頷いている。名前が言えたことがそんなに嬉しいのだろうか。
「それじゃあ、今、西暦何年か分かる?」
「西暦? 2020年」
「じゃあ、何月何日?」
「10月の……何日だろう」
 カレンダーを探したけれど、部屋の中にはなかった。残念ながら、普段から何日まで見て生活はしていない。それに、今は何日病院で寝ていたかも分からないから正確な日にちなんて分かるはずがない。
「うん……。大丈夫そうだね」
「大丈夫? これで?」
 全身が痛くて病院で寝ているのが大丈夫なわけがない。
「そうだね。学校の屋上から落ちて頭と体を強く打ったんだからね。大丈夫な訳ないよね。でも、目立った骨折もなく、脳に異常も見られない。全身打撲だけですんだのは奇跡的だよ」
「そう、なんですね」
 どうやら、私は学校の屋上から落とされたらしい。でも、その記憶が全くない。
「もう少し精密検査とかリハビリがあるけど、1週間ぐらいしたら退院できると思うよ。よかったね」
 全然、よくなんてない。最悪だ。
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