18 / 36
18
しおりを挟む
今までは学園の中でしか過ごしていなかったので、外がこんなに治安が悪いなんて思いもしなかった。流石は異世界だ。
しかし、今の状況を対岸の火事だと思ってはいけない。襲われている馬車は前を進んでいるので、盗賊に止められてしまえば、いずれ同じ現場に遭遇してしまう。
そのことに一番危機感を持っているのは御者だった。
正面の窓が遠慮なしに叩かれ、慌ててノワールが窓を開けた。
「お嬢さん、悪いんだがこのままこの道を進むのはお勧めできません。前の馬車がどうも様子がおかしくてな。道は悪くなりますが、迂回してもよろしいでしょうか」
俺もこの御者さんの意見に賛成だ。盗賊に襲われているのを助けるなんて、いかにも異世界転生した主人公って感じなのだが、俺は扇子だ。颯爽と現れることはできない。
しかし、ノワールだけは違った。
「いいえ。そのまま進んでください」
「えっ、えぇっ? このまま進むんですか? ありゃどう見ても山賊ですぜ? 間違いなく襲われますよ?」
「分かっています。世の乱れを正すのも貴族の勤めです。彼らを退け、襲われている方を助けなければ。私が貴族である意味がない」
「いいですけど、俺は知りませんからね? 襲われたら馬車おいて逃げますからね?」
俺だって知らないし逃げたいのだが、扇子の体では好き勝手に動くことはできない。今この場でノワールに逆らえる人はいないので、進路を変更することはなかった。
せめて、護衛がいたりしたら話は簡単だったのだが、学校を出るときにそんな人がついてくる気配はなかった。御者さんは逃げるといっているし、強そうには見えない。俺は扇子なので強いとか弱いとか、そんなレベルではない。残るはノワールなのだが、強いと感じたことはない。運動神経だって、悪い方だ。だから、ここは異世界だから、異世界なりの特殊能力をノワールが持っていると賭けるしかない。
そんなことを考えているうちに、前方の馬車は片方の車輪が外れ、ついに止まってしまった。
周りを取り囲んでいた盗賊は馬を下り、どう調理してやろうかと馬車のドアを開けようとしたとき、ノワールたちが乗っている馬車も到着した。
そして、馬車が止まると同時にノワールと俺は馬車から飛び出した。
「私はノワール・エル・ジャンバロ。今すぐ、その馬車から離れなさい」
盗賊たちはどんな騎士様が出てくるのだろうかと警戒していたのだろうが、出てきたのが女性だと分かると、その反応はカモがネギを背負ってきたという感じだ。
しかし、今の状況を対岸の火事だと思ってはいけない。襲われている馬車は前を進んでいるので、盗賊に止められてしまえば、いずれ同じ現場に遭遇してしまう。
そのことに一番危機感を持っているのは御者だった。
正面の窓が遠慮なしに叩かれ、慌ててノワールが窓を開けた。
「お嬢さん、悪いんだがこのままこの道を進むのはお勧めできません。前の馬車がどうも様子がおかしくてな。道は悪くなりますが、迂回してもよろしいでしょうか」
俺もこの御者さんの意見に賛成だ。盗賊に襲われているのを助けるなんて、いかにも異世界転生した主人公って感じなのだが、俺は扇子だ。颯爽と現れることはできない。
しかし、ノワールだけは違った。
「いいえ。そのまま進んでください」
「えっ、えぇっ? このまま進むんですか? ありゃどう見ても山賊ですぜ? 間違いなく襲われますよ?」
「分かっています。世の乱れを正すのも貴族の勤めです。彼らを退け、襲われている方を助けなければ。私が貴族である意味がない」
「いいですけど、俺は知りませんからね? 襲われたら馬車おいて逃げますからね?」
俺だって知らないし逃げたいのだが、扇子の体では好き勝手に動くことはできない。今この場でノワールに逆らえる人はいないので、進路を変更することはなかった。
せめて、護衛がいたりしたら話は簡単だったのだが、学校を出るときにそんな人がついてくる気配はなかった。御者さんは逃げるといっているし、強そうには見えない。俺は扇子なので強いとか弱いとか、そんなレベルではない。残るはノワールなのだが、強いと感じたことはない。運動神経だって、悪い方だ。だから、ここは異世界だから、異世界なりの特殊能力をノワールが持っていると賭けるしかない。
そんなことを考えているうちに、前方の馬車は片方の車輪が外れ、ついに止まってしまった。
周りを取り囲んでいた盗賊は馬を下り、どう調理してやろうかと馬車のドアを開けようとしたとき、ノワールたちが乗っている馬車も到着した。
そして、馬車が止まると同時にノワールと俺は馬車から飛び出した。
「私はノワール・エル・ジャンバロ。今すぐ、その馬車から離れなさい」
盗賊たちはどんな騎士様が出てくるのだろうかと警戒していたのだろうが、出てきたのが女性だと分かると、その反応はカモがネギを背負ってきたという感じだ。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
転生領主の領地開拓 -現代の日本の知識は最強でした。-
俺は俺だ
ファンタジー
今年二十歳を迎えた信楽彩生《しんらくかやせ》は突如死んでしまった。
彼は初めての就職にドキドキし過ぎて、横断歩道が赤なことに気がつかず横断歩道を渡ってしまった。
そんな彼を可哀想に思ったのか、創造神は彩生をアルマタナの世界へと転生させた。
彼は、第二の人生を楽しむと心に決めてアルマタナの世界へと旅だった。
※横読み推奨 コメントは読ませてもらっていますが、基本返信はしません。(間が空くと、読めないことがあり、返信が遅れてしまうため。)
俺のスキルが無だった件
しょうわな人
ファンタジー
会社から帰宅中に若者に親父狩りされていた俺、神城闘史(かみしろとうじ)。
攻撃してきたのを捌いて、逃れようとしていた時に眩しい光に包まれた。
気がつけば、見知らぬ部屋にいた俺と俺を狩ろうとしていた若者五人。
偉そうな爺さんにステータスオープンと言えと言われて素直に従った。
若者五人はどうやら爺さんを満足させたらしい。が、俺のステータスは爺さんからすればゴミカスと同じだったようだ。
いきなり金貨二枚を持たされて放り出された俺。しかし、スキルの真価を知り人助け(何でも屋)をしながら異世界で生活する事になった。
【お知らせ】
カクヨムで掲載、完結済の当作品を、微修正してこちらで再掲載させて貰います。よろしくお願いします。
クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される
こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる
初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。
なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています
こちらの作品も宜しければお願いします
[イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]
おっす、わしロマ爺。ぴっちぴちの新米教皇~もう辞めさせとくれっ!?~
月白ヤトヒコ
ファンタジー
教皇ロマンシス。歴代教皇の中でも八十九歳という最高齢で就任。
前任の教皇が急逝後、教皇選定の儀にて有力候補二名が不慮の死を遂げ、混乱に陥った教会で年功序列の精神に従い、選出された教皇。
元からの候補ではなく、支持者もおらず、穏健派であることと健康であることから選ばれた。故に、就任直後はぽっと出教皇や漁夫の利教皇と揶揄されることもあった。
しかし、教皇就任後に教会内でも声を上げることなく、密やかにその資格を有していた聖者や聖女を見抜き、要職へと抜擢。
教皇ロマンシスの時代は歴代の教皇のどの時代よりも数多くの聖者、聖女の聖人が在籍し、世の安寧に尽力したと言われ、豊作の時代とされている。
また、教皇ロマンシスの口癖は「わしよりも教皇の座に相応しいものがおる」と、非常に謙虚な人柄であった。口の悪い子供に「徘徊老人」などと言われても、「よいよい、元気な子じゃのぅ」と笑って済ませるなど、穏やかな好々爺であったとも言われている。
その実態は……「わしゃ、さっさと隠居して子供達と戯れたいんじゃ~っ!?」という、ロマ爺の日常。
短編『わし、八十九歳。ぴっちぴちの新米教皇。もう辞めたい……』を連載してみました。不定期更新。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双
たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。
ゲームの知識を活かして成り上がります。
圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる