英華女学院の七不思議

小森 輝

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英華女学院の七不思議 12

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 椅子に座り、持っている豪華な日替わり定食をテーブルに置いた。
「さて、どうしたものか……」
 雛ノ森さんは先に食べていてくださいと言っていたが、そうするわけにはいかない。かといって、雛ノ森さんの到着を凝視しながら待つような高校生男子みたいなことはしたくない。
 雛ノ森さんを見るのもダメ。日替わり定食も見ていると胃が悲鳴を上げてくる。
 変に視線の行き場に困った私は、周りを見渡すことにした。
 周囲には、すでに女子生徒がグループを作って食事をしている。そんな中に一人ポツンといるのは気まずかった。だが、二学期ともなればもう慣れたものだ。それに、他の教師の方も一人で食事をしている方が多い。平川先生にいたっては、周囲に全く生徒がおらず、まるでバリアでも張っているのかと思うほどだ。
「お待たせしました」
 そんなことを考えていると、雛ノ森さんが急いでやってきた。
「そんなに急がなくてもよかったんですけど……」
「いえ、そういうわけにはいきません」
 そういって、雛ノ森さんは私の前に座った。
 雛ノ森さんが持ってきた昼食は、小さめのかわいいサンドウィッチに紅茶という組み合わせだった。
「あ、先生、やっぱりまだ箸をつけてなかったんですね。私のこと、待たなくてもよかったのに……」
「そういうわけには……」
 こういう話は意地の張り合いの平行線になってしまうのでやめておこう。
「それよりも、ご飯をいただきましょう。料理が冷めて……紅茶が冷めてしまいますから!」
「そうですね」
 サンドウィッチは元から温かくないので冷める心配もない。また、無駄に気を使わせてしまった。
「「いただきます」」
 二人、両手を合わせて感謝をし、食事を始めた。
 自分の料理を受け取って、雛ノ森さんを待っていたと言っても、冷えてしまうほどの時間は経っていない。その証拠に、タケノコの炊き込みご飯を口に運ぶとまだ温かい。
「あの……お食事中に申し訳ないのですが……」
 口に入っているタケノコご飯を飲み込む間に、雛ノ森さんが何を話したいのか考えた。
「先輩のお話ですか?」
 学食が込むと言うことを分かっていながら私を待っていたのだから、大事な話、つまり、行方不明になっている探偵部の先輩の話で間違いない。
「そうです」
 当たったことに失礼ながら心の中でガッツポーズをした。
「学食になら先輩も必ず来ると思って、走って、まだ数人しかいないところから待っていたんですけど、会えませんでした」
 廊下は走ってはいけません、という注意を教師であるならするべきなのだが、これには私にも落ち度がある。授業の時になんて考えず、朝一番に学年写真で放課後に3年生が集合すると伝えるべきだった。そうすれば、彼女が学食の前で一人待つなんて状況は回避出来たはずだ。
「先輩を見つける、と言う話なのですが、今日の放課後、3年生全員で学年写真を撮るという話を聞きまして」
「本当ですか!?」
 不意の大声に周囲の生徒が一斉にこちらへと注目した。私へと前のめりになっていた雛ノ森さんは、顔を赤らめながら周りの生徒に頭を下げ、静かに椅子に座ってくれた。
「それなら、きっと……でも、お休みしている生徒とかはいないんですか?」
「学年写真ですからね。休みの生徒がいれば中止になるという話です。今日は休みもないし天気もいいので、写真撮影は行えるという話です」
「そうなんですね……これでやっと……」
 見つかればいいのだが、嫌な予感が私の頭に張り付いた気がした。
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