一輪の花

月見団子

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第十八話〜太陽は走る。チャンスの為に〜

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「あぁー疲れたー」「おつかれ」「てかさ、気になったんだけど…なんで中学を3年間通った私よりも君たちの方が勉強できるの?」まぁ、水月の言っていることもごもっともだった。僕らがイレギュラーなのだ、きっと。なんせ僕らは学校に行っていない間も勉強をしていたのだから。学校が、人間関係が嫌いなだけで、勉強自体は嫌いではなく…寧ろ好きな部類なので暇さえあれば二人で勉強をしていた。その範囲は中学の範囲に留まらず高校レベル以上の内容も扱っていた。「まぁ、頑張ったんだよ、色々」「そうだよ…多分ね」「多分て…まぁ、君たちは勉強好きだったからね」「「勉強は趣味です!」」「ま、まぁうん。大丈夫。私は否定しないよ。人それぞれだもんね」水月が憐れみの目で見てきた気がするが気のせいだろう。「さ、今日はどうする?」と僕が切り出すと「んー今日はまっすぐ帰ろう。なんか疲れた」「そうだね、どこかに行く気分じゃないよね」「了解。じゃあ、そうしよっか」そうして、僕らは帰路を辿る。水月は家の方向が途中から違うので別れたが、カリアちゃんとは家が同じなので最後まで一緒である。そうして、家に帰ると藤花さんがとある紙を渡してきた。「これは、部屋で読んだ方が良いよ。後は任せてくれたらいいから、ね」その言葉の意味を僕は汲み取れないまま部屋に足を進める。部屋を開けると広々とした青を基調とした部屋が視界に広がる。自分のベッドの上に座り、その紙を開く。そこには文字が書かれていた。その文字を一つ一つ大切に読んでいく。
 日向。私達は君を大切に出来ていなかったのかもしれない。もっと、素直に愛情を渡せば良かった。もっと、分かりやすく愛せばよかった。私達は大人だから…子供を依存させてはいけないと思ってしまい。あまり愛しすぎると日向が馬鹿にされてしまうのでは無いかと思い、素直に愛情を注げなかった。でも、違うんだよな。日向が居なくなって思い知ったんだ。それは、私達が逃げていただけなんだって。そのせいで日向に寂しい思いをさせてしまった。本当に、すまなかった。もし…もし日向が許してくれると言うのであれば…。一度だけ、チャンスをくれないか?チャンスをくれるのであれば、この場所に来てほしい。
その文の最後にはある場所が書かれていた。気付けば僕は部屋を飛び出し、その場所まで走っていた。外は夕暮れ。残り時間は少ない。頼む…間に合ってくれ…。最後に、其の言葉をかける為に…僕にチャンスを下さい。
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