一輪の花

月見団子

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第十七話〜小鳥は桜の下で唄を歌う〜

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あの授業から2年と少し経過した季節は春になっていた。冬に枯れていた並木はピンク色の花を満開に咲かせ、地面はその花びらでピンク色の絨毯を作り出していた。あれから虐めに関する授業は変わり、今は試行錯誤の段階ではあるが、確かに変わったこともある。今まで被害者を減らす事に尽力してきた教育に、加害者を減らそうとする教育が追加された事だ。それにより、誰もが被害者と加害者、両者の気持ちを理解する事ができるようになった。他にも変わった事はあるが、僕の斜め前を軽くスキップしながら楽しそうに歩いていた筈の珍獣2匹が僕の隣にまで来て、やかましいので、また別のお話とさせてもらおう。「どうしたんだ?さっきまで前を歩いていたじゃないか」
「水月ちゃんと放課後どこか行こうって話になったんだけどお兄ちゃんもいく?」「行くよね?」「もちろん行きます!」圧が強すぎて後ろに吹き飛びそうになった…。「どこ行こうか?」「僕はどこでもいいよ、2人と一緒ならどこでも賑やかで楽しいからな、水月はどこか行きたいところあるか?」「私はねー」あれ?僕今いいこと言わなかった?少しくさすぎたかな?
そんな疑問を抱きながら水月の意見を聞いた。「駅前に新しく出来たカフェわかる?」「お!あそこか、いいね」「私もそこ行きたかったー!」「じゃー決定!」「決定!」「じゃあ放課後お兄ちゃんのところに集合ね!」「おう!」「了解!」何も無かった放課後の予定が決定したところで校門に着いた。「じゃあ今日も一日がんばるぞ!」「いや、今日は入学式でしょ…何を頑張ることがあるのさ」「「いや、兄妹になって初めての学校だし」」「二人とも息ぴったりだね、私は心配をするのを止めるよ…」そんなこんなで僕らは別行動をすることになった…筈なのだが。「なんで君たちがここに居るんだ?」「まただね、日向君。」「水月…僕は君が隣にいる事にもはや驚かなくなったよ…。手錠かなんかに縛られているのか?」「んー?赤い糸の間違いじゃない?」「それからカリアちゃん…だよね?」「そうだよ、お兄ちゃん」「…可愛い」「ありがとう!お兄ちゃん!」「私には言ってくれなかったのに…」「水月は…なんか恥ずかしい。」「えぇ…」「幼馴染に可愛いとか、綺麗とか言うの…恥ずかしいじゃん。一緒にいた期間が長いからこそ、なんか、変に思っちゃってさ」「まぁ、分からないことはないけどさぁ…ま、いいや。真鳥ちゃんが可愛いのは本当だしね」今日から始まる高校生活も、なんだかゆっくり出来ないかもしれないなと。そんなことを思う今日この頃だった。
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