上 下
131 / 137

130話 ユナ救出作戦

しおりを挟む
 ユナがさらわれたと聞いて集まった七人。

「さらわれたまではともかく、ユナがどこに居るのかは分かっているのか?」

 セイさんが言う。

「まだ分かってないです。でも、シェイドが関わっているのは推測できます」

 トリオスがそれに返答をする。
 しかし、そのシェイドの居場所も分かっていなかった。

「ノーゼスさんにメッセージが届かないんです。カードからの着信も無視し続けているみたいで……」

 同様にミュルドーにもシェイドの居場所を聞いてみるが「俺は知らない」の一点張りだった。
 無理やり「Giveギブ魔法」で記憶を出そうとしても分からない。

「シェイドに操られている人は目撃しましたが、あくまで操られているだけですからね……。情報も持ってないでしょうし」

 サレスティがそう言ったことで話が堂々巡りになってしまいそうになる。
 だが、セイさんは少し考えた後、言った。

「いや、もしかしたら頑張れば見つけられるかもしれない。協力が必要だが……」

 皆が一斉にセイさんの方を向く。
 彼は落ち着いて自分の作戦を述べていった。

「おそらく、シェイドの目的はユナをさらうことにあったはずなんだ。だから、裏を返せばユナの近くにシェイドがいる可能性は高い。とりあえず、ユナの魔力を探ってみるんだ」

 神聖魔法の魔力探知を使い、貴族街のユナの魔力を検知しようというのだ。
 しかしながら、さすがのハルカさんといえど広いエリアに長時間気配を探知し続ければすぐに魔力を使い切るだろう。

「研究に、といくつか持ってきてて良かったよ。白色の魔石。ハルカさんの神聖魔法にリンクをさせて俺の不死鳥で飛ばせば、少ない魔力消費量で遠いところも探知できるんじゃないか?」

 要約すれば、ハルカさんとリンクした魔石を持った不死鳥が中継地点となって空を飛べば、遠くの魔力も少ない魔力で検知できる、ということだ。
 さらには、これをいくつも用意すれば様々な方角に検知を張ることもできるらしい。

「生憎持ち合わせは一つしかないが、これでも十分……」

「白色の魔石ならうちにも沢山ありますよ?」

 トリオスが言う。
 忘れていたが、この家は上流貴族の家。

 物置を探せば白色の魔石はいくらでもあるそうだ。

「それなら、私にもできるかもしれないな。なんたって、私はユナの母親なんだから。絶対に娘の居所を見つけ出してやらないと。よろしくな、えーと名前は……」

 そうだ。セイさんには名前がない。
 でも、今の僕なら……。

「セイさん、名前を統一すべきだと思います」

「だが、決まった名前というのは……」

「もう、孤児じゃないんでしょう?名前くらいは持っててもいいはずだ」

「でも、私にはどうやって名前を付ければいいのかが……」

「ならば私が貴方に名前を授けましょうか?」

 レイシェル姫の鶴の一声。
 セイさんは少し悩んだ末、レイシェルにお願いすることにした。

「あなたの名前は……セシル。どうですか」

「ありがたき幸せ」

「名前はあなたと一生を共にすることでしょう。あなたの親からもらったものに比べれば力は薄れますが……」

「いいえ。それは大丈夫だと思います。Nameネーム

 シュンはセイさんに向かって名付け魔法をかける。

「それは……?」

「名前を付けました。これで、セシルは解放されると思います。過去から」

 ミトラス神は言っていた。
 名前を付けるというのは、人に力を授けることだと。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

罠に嵌められたのは一体誰?

チカフジ ユキ
恋愛
卒業前夜祭とも言われる盛大なパーティーで、王太子の婚約者が多くの人の前で婚約破棄された。   誰もが冤罪だと思いながらも、破棄された令嬢は背筋を伸ばし、それを認め国を去ることを誓った。 そして、その一部始終すべてを見ていた僕もまた、その日に婚約が白紙になり、仕方がないかぁと思いながら、実家のある隣国へと帰って行った。 しかし帰宅した家で、なんと婚約破棄された元王太子殿下の婚約者様が僕を出迎えてた。

冷宮の人形姫

りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。 幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。 ※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。 ※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので) そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。

虐げられた令嬢、ペネロペの場合

キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。 幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。 父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。 まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。 可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。 1話完結のショートショートです。 虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい…… という願望から生まれたお話です。 ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。 R15は念のため。

【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断

Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。 23歳の公爵家当主ジークヴァルト。 年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。 ただの女友達だと彼は言う。 だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。 彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。 また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。 エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。 覆す事は出来ない。 溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。 そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。 二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。 これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。 エルネスティーネは限界だった。 一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。 初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。 だから愛する男の前で死を選ぶ。 永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。 矛盾した想いを抱え彼女は今――――。 長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。 センシティブな所へ触れるかもしれません。 これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。

転生したら赤ん坊だった 奴隷だったお母さんと何とか幸せになっていきます

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
転生したら奴隷の赤ん坊だった お母さんと離れ離れになりそうだったけど、何とか強くなって帰ってくることができました。 全力でお母さんと幸せを手に入れます ーーー カムイイムカです 今製作中の話ではないのですが前に作った話を投稿いたします 少しいいことがありましたので投稿したくなってしまいました^^ 最後まで行かないシリーズですのでご了承ください 23話でおしまいになります

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな

カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界 魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた 「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね? それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」 小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く 塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう 一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが…… ◇◇◇ 親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります (『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です) ◇◇◇ ようやく一区切りへの目処がついてきました 拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです

処理中です...